内定おめでとう
面接から数日後リズはコウモリのヴィルに内定を連絡した。
ヴィルは妻と子どもをつれてリズの工房にやって来た。
椅子の上にかたまる毛玉たち。
リズはしみじみとヴィルにして良かったと思う。
「これから契約するよ。契約書を確認したら円陣に入って。」
衣食住に福利厚生、魔力配分、そして対価の労働時間。
「このくらいでよろしいのですか?もっと働いても構いませんが。」
「血を定期的にとるから。あとは魔力を渡したときどんな変化が出るかわからないから、正確には仮の契約なんだ。不都合がでたら契約解除や変更が必要。」
納得したのかヴィル一家は円陣におさまる。
「コウモリのヴィルお前の羽は私の羽、お前の牙は私の牙、お前の血族は私の血族。」
血をヴィルに与える。
「私の、リズ・メニエル・アーバンの血をもって、コウモリのヴィル、私に属せよ、族せよ。」
円陣を赤い線がが包み、発光し消えた。
「ヴィルどうかな。」
初めての契約、使い魔の変化が楽しみで怖い。
「人化できそう?」
「リズ様やってみます。」
ヴィルが羽を広げて固まった。
床の上のヴィルを見ていたら急に人の足に変化する。
成功したと顔をあげると、リズは悲鳴をあげた。
「なっなんなのあんた!」
ヴィルはガッチリとしたなんともかっこいいオヤジになっていた。
ひとはそれをちょいワルオヤジという。
全裸の。
「リズ様、」
ヴィルは言い切る前に真っ赤な顔のリズに殴られた。
人化かわいくない、もふりづらい。
使い魔にこんな落とし穴があったなんて、リズはもう一度ヴィルを殴ろうとして人化したヴィルの奥さんにとめられた。
柔らかい雰囲気の小柄な奥さんだった。
癒しはここにあり。
変化はコウモリが手のひらサイズから両手サイズになったくらい。
もふりやすい。
こうしてリズとヴィルは正式に使い魔契約を交わした。
コウモリ印のリズの工房は配達もできる薬屋さんとして繁盛したそうだ。
おしまい
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