恋敵 十七
淳の兄嫁お光が、無事に女の子を出産した。
お雪は淳と一緒にお見舞いに来ている。
「初めまして。お雪と申します。」
お雪は兄の良一やお光を前に緊張している。
「お雪ちゃん、淳君から噂は聞いているわよ。噂通りのべっぴんさんね。」
お光がからかうように言う。
「姉さん、」
淳が顔を真っ赤にしている。
「お雪さん、うちの母がいろいろとひどいことを言ったようで悪かったね。根は悪い人じゃないから、許してやって。」
そう言って良一がぺこりと頭を下げた。
「そんなことないです。お母さんが言っていたことは正しいですから。」
「お雪ちゃんは何も悪くないんだから、堂々としていればいいんだよ。」
淳がお雪の肩に手を置いた。
「赤ちゃん、抱っこしてみる?」
お光に言われ、恐る恐るお雪は生まれて間もない赤ん坊を抱いた。小さくてふにゃふにゃで今にも壊れそうだ。
「痛かったわよ。産むの。」
そう言ってお光はお雪を脅かした。
「次はお雪ちゃんの番だからね。」
そう言われて、淳とお雪は真っ赤になった。
帰り道、淳とお雪はいつもの土手沿いを歩いていた。
「優しいお兄さんとお姉さんですね。」
お雪が思い出して言う。
「そうだな。姉さんはもちろん、兄貴も優しいから、喧嘩したことないな。」
淳が思い出したように言った。
「兄弟って良いですね。」
お雪には親も兄弟もいない。
「もういるだろ。俺の兄貴と姉さんは、お雪の兄貴と姉さんでもあるんだ。」
淳にそう言われ、胸が熱くなる。
「お雪ちゃんは今までいっぱい苦労したけど、これからは俺の嫁さんで、長谷川家の一員なんだ。兄と姉がいて、あんなだけど父と母もいるんだよ。」
そう言って淳はお雪を抱きしめた。
ずっと独りぼっちで懸命に生きてきたお雪。淳の言葉にもう自分は一人ではないんだと思うと嬉しくて涙がこぼれた。




