恋敵 十六
お雪に怪我をさせた貴子をどうしたものか、となったが、淳の母が自分にも責任があるからといって、このまま許してやろうということになった。ただ、また何かがあればその時には警察に通報する、と淳が言った。
こんなことをしでかしてもまだ、貴子はのこのこと長谷川家にやって来たのだ。
淳の母は半ば呆れていたが、
「貴子さん、この度は私がいけなかったわ。あなたをけしかけるようなことを言ってしまって、ごめんなさいね。でももう淳はお雪さんと結婚することになったから、もうこの話はなかったことにしてちょうだい。」
そう言って頭を下げた。
それでも貴子は納得いかないようである。
「お母様、淳先生の嫁があんな女中でいいんですか?女中にこの長谷川家の嫁なんて務まりませんよ。」
と毒づいている。
「貴子さん、あなた私が倒れた時に淳を呼ばなくていいって、庭師に言ったそうね。それはどういうことかしら?」
そう言われると、貴子はしどろもどろだ。
「それは、大したことないと思ったから、」
「それに黒田家でお雪さんを突き飛ばしましたね。お雪さんは頭を打って意識を失ったんですよ。お雪さんが大事にしたくないって言うからあれですけど、本来ならば暴行罪で警察に捕まる話ですよ。」
そう言って淳の母は貴子を脅した。
「私は悪くありませんよ。お母様が私を嫁にって言うから…。」
貴子は食い下がるが、淳の母は容赦しない。
「もうあなたを淳の嫁になんて決して言いません。淳の嫁はお雪さんと決まったんですから。もう二度とこの家に来ないでちょうだい。」
そう言って貴子を家から追い出した。
この様子を見て淳が笑っている。




