↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/38

恋敵 十五

気が付くと、黒田家の和室に寝かされ淳が心配そうな顔でお雪を見つめていた。

「ここは?」

「お雪ちゃん、よかった気がついいたんだね。気分はどう?」

そう言うと、淳はお雪の瞳孔や手や足の動きを確認した。

「軽い脳震とうだね。」

大事に至らなくてよかった。そう言ってお雪の手を握った。


あの後、貴子はさっさと逃げて行った。一大事を見かけた淳の母がお雪を助け起こし、黒田家に運び、淳を呼びにやったのである。




お雪の意識が戻り、主人、奥様と淳の母が部屋に入って来た。

「ご主人様、」

そう言って起き上がろうとするお雪を、淳が止めた。

「まだしばらくは安静が必要だよ。」


「そのままで。」

主人もそう言った。


横になるお雪の周りを皆が取り囲んだ。


始めに話し出したのは淳の母である。

「この度は、どこから誤っていいものやら。お雪さんにたくさん嫌な思いをさせてしまって、本当にごめんなさい。」

そう言って淳の母は手をついて頭を下げた。

「母さん。」

淳が驚いて母を見る。主人と奥さんは顔を見合わせている。

「貴子さんのことも、私がけしかけたりしなければこんなことにもならなかったのに、何て謝っていいかわからないわ。」

そう言って頭を下げっぱなしだ。


「奥様、どうか頭をお上げください。」

お雪が申し訳なさそうに言う。


「私が寝込んでいる間もずっと通ってくれたいたのに、何も知らずにあんなひどいことを言ってしまって。」

淳の母の後悔する気持ちがよく伝わってくる。

「食欲のない時に、いろいろ心配りしてくれたのはお雪さんだったのね。とても嬉しかったわ。」

そう言って淳の母はうっすら涙を浮かべている。


「母さん。」

そう言って淳が母の背中をさすった。やっとわかってくれたんだと淳も嬉しそうだ。



淳の母は主人に向きなおすと、

「先日の贈り物を受け取りもせず、いままでの数々の無礼大変失礼いたしました。」

と言ってまた頭を下げた。


主人は穏やかに言った。

「誤解が解けたということで、いいでしょうかね。」

淳の母は深く頷いた。


淳は黒田夫妻と母の方を向くと、姿勢を正した。


「ご主人、奥様、そして母さん。僕はこのお雪ちゃんと一生、一緒にいたい。お雪ちゃんと結婚させてください。」

そう言って、頭を下げた。


「淳先生、お雪を任せましたよ。今まで苦労した分幸せにしてやってください。」

そう言ってご主人と奥様、母も頷いた。

お雪はまるで夢を見ているようだった。

自分と淳との結婚が許される日がくるなんて。

始めてこの黒田家で淳を見た時のこと、伊勢谷での食事会、二人で言った初詣、いつもの土手でのおしゃべりが走馬灯のようによみがえった。

そしてお母さんの、“一生懸命やっていれば、必ず日の目を見るよ”という言葉を思い出した。お母さん、天国で見てる?私、淳先生と結婚出来ることになったよ。と心の中でつぶやいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。