↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/38

恋敵 九

淳が仕事を終えて家に帰ってくると、また夕食の席に貴子が座っていた。

「淳先生、お仕事お疲れ様。」

仕事で疲れているところ、家に他人がいると気が休まらない。そのうえ家族気どりの様子に正直淳は腹立たしい。

貴子に声を掛けられ、軽く頷くだけで何も話さない。

「だいぶお疲れの様ですね。早くお嫁さんでももらった方がいいんじゃないですか。」

貴子が的外れな発言をすると、それに母がのっかる。

「そうよね。早く身を固めて安心させてもらいたいわ。」

本来ならここで“その結婚を邪魔しているのは母さんだろう”と母に言い返したいところだが、貴子がいるので淳は言葉を飲み込む。

「私でよかったら、いくらでも淳先生をいたわってあげられるのに。」

そう言って貴子が笑みを浮かべる。

淳は食事もそこそこに自分の部屋へと戻った。母さんにも困ったものだ。でもこんなこともそう長くは続かないだろうと、淳は高をくくっていた。



ある日、黒田家に貴子の姿があった。

奥様が玄関先に出ると、淳の母から手土産と言付けを申し付かっているという。

奥様が奥の部屋に貴子を通した。


「初めまして。私松村貴子と申します。」

そう言って、貴子はしずしずと頭を下げた。

「私が黒田家の主人です。長谷川先生の奥様からの言付けとのことですが、」

主人が話を向けると、

「こちら、長谷川の奥様よりお届け物でございます。季節柄滋養の付くものをとのことで申し付かって参りました。」

どうぞ、と贈り物を出した。

「それはかたじけない。」

主人はありがたくそれをちょうだいした。


少しの間の後、貴子が話し出した。

「実は本日私がこちらに伺ったのには訳がありまして。」

そこで着物の衿にちょっと手をやり、

「実は、この度私、長谷川家の次男長谷川淳さんと婚約することになりました。」



そう言うと、貴子は主人の顔を見てにやりと笑った。

それを聞いて、主人も隣にいた奥様もたいそう驚いた。しかし、本人がそう言っている以上、何も聞けない。

「そうでしたか。」

ご主人は淳とお雪がまだ続いていると思っていたので、そう返すのがやっとだった。

「これからも淳先生はこちらに往診することになるでしょうから、何かの折にはまたお伺いすることがあるかもしれません。どうぞ今後とも宜しくお願いします。」

と言って、貴子は帰って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。