出会い 二
食事が終わると、お雪は井戸端で洗濯にとりかかった。
冬場の洗濯仕事は、手足の冷たさと言ったらそれは大変なものだ。
井戸につるべを落としては、洗い桶に水を貯めていく。五杯も汲めば桶に水がたまり、踏み洗いができるようになる。
洗い桶に灰汁を入れ、お雪は着物の裾をまくって桶に足を入れた。始めにしびれていた足の感覚は次第になくなり、その後はジンジンとしてくる。足の痛みに耐えながら、お雪はせっせと踏み洗いを続ける。
洗濯板で仕上げの洗いが始まるころ、お咲が井戸端にやってくる。
お雪がすすいだ洗濯物をお咲がぎゅっ、ぎゅっと絞っていく。
干した洗濯物は、白い雪と青空の中、風にそよそよとなびく。
手も足も頬もジンジン痛いけれど、気持ちのいい景色だ。
毎日の仕事は辛いこともあるが、お雪はやりがいをもって勤めていた。
十歳からこの黒田家に奉公に来て九年目。自分がその都度どう動けばよいかも、よくわかるようになった。優しく接してくれる奥様やお咲さんもいる。私は恵まれている方だ。
亡くなったお母さんが、“一生懸命やっていれば、必ず日の目を見る”って言っていたな。
ふとそんなことを思い出していた。
昨日も雪かきをしたのだが、昨夜の雪でまた門から玄関までの通り道に雪が積もってしまった。
お雪は4人の女中の中で一番年下。雪かきはお雪の仕事なのだ。
お昼ごはんの片付けが終わり、雪かきの時間となった。
玄関から門に向かって通路の雪を左右にかき分けていく。
「もう、昨日も同じことしたのに。」
思わず愚痴がこぼれる。門に背を向け、スコップで雪を左に投げた瞬間、左足がツルっと滑り尻もちを―つかなかった。
“あれっ、転んでいない。どうした?私。”ふと足元を見ると、自分の足の間に誰かの足が見える。
後ろから誰かが支えてくれたおかげで、転ばずにすんだのだ。
慌てて起き上がり、振り向くと、そこには男の人が立っていた。
「あっ、えっと、すみません。ごめんなさい。」
驚きと恥ずかしさで、こんな言葉しか出てこない。
「大丈夫でしたか?」
その人はクスっと笑い、玄関へと入っていった。
体勢を直し、再び雪との格闘が始まった。
さっきみたいに転ばないよう、足を踏ん張って腰を入れて。途中から体が温まり、そのうちには汗が吹き出してきた。黙々と雪をかきながら、ふと思った
家に入っていったけど、さっきの人は誰だろう?若い男の人だったな。何だか西洋風の服を着て。
そんなことを考えているうちに、左右に雪が積み上がり、玄関から門へのアプローチはきれいに整えられた。
門の前で、お雪が汗をぬぐっていると、さっきの男の人が玄関から出てきた。
こっちへ来る。なんて声をかければいいかな?お客様には違いないから、でもじゃ、なんて?
かける言葉が思いつかず、とりあえずお辞儀をすると、向こうも軽く会釈をして去って行った。




