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バトル漫画のモブに転生しましたが、何故か序盤ボスに溺愛されています!?  作者: 彩紋銅


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30 ルリカと不意打ちデート

 ◇◆◇


 小丘市立夏畑中学校の事件の後、現場に出た私たちは、六日間の特別休暇を与えられた。


 ルコウさんは土用院ツヅミさんが作った魂力回復薬のおかげで、翌日にはピンピンしていたが、大事を取って一日入院した。

 でも、退院するとすぐ、事務所に併設された訓練所で筋トレをしていたらしい。


 ルコウさん凄い!


 私はというと、ルコウさんと同じく魂力回復薬をツヅミさんに処方されたけど、特に目立った怪我はなかった。

 戦闘時にニゲラに貰った魂力石を使ったおかげで、自分の魂力はあまり消耗せずに済み、魂力回復薬を飲んだことで全快した。

 まあ、怪我くらいなら自分で治せるけどね。これでも、青春院家の人間なので。


 ちなみに、魂力回復薬は甘酸っぱい桃味だった。魂桃が主原料だからね。


 というわけで、私も二日ほどは家でゆっくりと過ごし、疲れも取れた三日目、少し遠くにある大型ショッピングモールへ久しぶりに行くことにした。

 特に欲しいものがあったわけではない。単に暇だったからだ。


 そうして家を出ると、マンションの前にニゲラがいた。


「何故いるのですか?」


「……寂しかったので。俺だけ休みで、ウツギも家にいないし……」


 そういえば、ニゲラは支部長のウツギさんと一緒に暮らしているんだった。


「えーと、私はこれからエテルネルショッピングモールに行くんだけど……一緒に行く?」


「行く! デートだな!!」


「え? そうなるのかな!?」


 一応、()()()は夫婦だしな……。


 ちなみに、エテルネルショッピングモールは一人暮らしを始めたばかりの頃に訪れ、ルコウさんと初めて出会った、あのショッピングモールだ。

 私の住んでいるマンションから、電車とバスで一時間くらいかかる場所にある。


 というわけで、ニゲラと一緒に買い物に行くことになった。


 ◇


 そうして、エテルネルショッピングモールに着いたけど、私は特に買うものはない。


「ルリカは何か買うのか?」


「う〜ん、暇だから来た感じなので、目的はないんだよね〜」


「じゃあ、俺の買い物に付き合って欲しい! その後も二人で色々見よう! こういう場所に来るのは初めてだから、楽しみだ!」


 そういえば、玄冬院本家でもあまり扱いは良くなかったらしいし、

 養子に出されてからはほぼ監禁状態だったな。


「なら、楽しもう!」


「うん!」


 ニゲラは夏物の服や下着などを買いたいらしいので、そういったものが揃っているカジュアルファッションのお店に向かった。


「ニゲラ君は、何色が好き?」


「ん〜、なんだろう? 特別に好きな色はなかったけど……ああ、でも。紫みを帯びた鮮やかで深い青色は好きかな?」


「そうなんだ〜」


 やけに具体的だな。


「あと、檸檬色とかも好きかな?」


「へ〜」


「……」


 ん? なんか、ニゲラが微妙な表情(かお)になったな?


「どうしたの? ニゲラ君」


「い、いや。なんでもない。でも自分で着るなら、黒とか白とか灰色が多いかもね。選ぶのが面倒だから」


「そうなんだ。紫色は?」


 制服のジャンパーはニゲラの瞳の色に似た、紫色だ。


「ん〜、嫌いじゃないが、少し苦手だな」


「そうなんだ!?」


 意外だ。


「うん。玄冬院家は、魂力が多い人が多いから、余分な魂力を水晶に込めてストックしたり、販売したりすることがあるんだけど……」


「そうだね」


 魂力を込めた水晶は『魂力石』と呼ばれる。

 ニゲラは養子先の凍土家で、それを作る奴隷みたいな生活をしていたんだよね。


「魂力を込めると、透明な水晶に色がつくんだ。玄冬院本家の者だと大抵、深い青系か艶やかな黒色になるのに、俺だけ紫だった。

 だから、紫色は少し苦手なんだ」


「……でも、私はニゲラ君が作った魂力石、綺麗で好きだけどな〜。紫水晶みたいで」


「え?」


 ニゲラは驚いたように目を見開いた後、少し顔を赤くした。恥ずかしいのかな?


「そういえば、夏畑中学の任務の時にもらった魂力石、とても役に立ったよ。ありがとう。

 何かお礼をしたいけど……」


 込められていた魂力を使い切った水晶は、崩れて消えてしまった。


「そうか。俺の作った魂力石が役に立って良かった。礼はいらない」


 そう言って、ニゲラは屈託のない笑顔を浮かべる。


「そ、そう。分かった」


 イケメンの笑顔に消滅しそうになるのを何とか堪える。

 こういった時に、変な要求をしないのは、ニゲラの良いところだな……。


 そうして、ニゲラ君の買い物を終えた後、少し遅めの昼食を取った。

 この日は休日だったので、店内外でさまざまなイベントが行われており、それも二人で楽しんだ。


 天然石のアクセサリーを扱う店が期間限定で出ていたので、覗いてみる。

 へ〜、金属パーツもオリジナルなんだ。


「ルリカ、そのブレスレット気に入ったのか?」


「え? まあ、そうだね。でも、欲しい石のやつは売り切れだね」


 私が見ていたのは、石を花のようにあしらったブレスレットだ。

 小ぶりで、目立たないのに目を引くデザインがいい。


 私の名前の由来の一つでもある、ラピスラズリを使ったものがあったら、欲しかったかも。


「ふむ、すみません。この水晶のやつをくれ」


「え?」


「ありがとうござい〜す」


「すぐつけるので、袋はいらない。値札は取ってくれ」


「かしこまりました〜」


 そうしてニゲラはお金を払い、商品を受け取ると、私を人気のない場所へ連れていった。


「ルリカ、左手を出して」


「う、うん」


 ニゲラは、先ほど購入したブレスレットを私の左手首につけてくれた。


「あ、ありがとう」


「買い物に付き合ってくれたお礼。それと……」


 ニゲラはブレスレットの水晶に魂力を込め、その色を深い紫色に変えた。


「え?」 


 ニゲラ君、水晶が壊れないギリギリまで、すんごい量の魂力を込めたね!?


「欲しかった石とは違うかもしれないけど、その、ルリカが綺麗だって言ってくれたから……」


「あ、ありがとう……」


 そう言って照れるニゲラは、結構可愛いかも。


 その後、何となくお互い気恥ずかしくなり、少し休憩することにした。

 フードコートでアイスとジュースを頼み、一息ついていると、こちらへじっと向けられている視線に気付いた。


「なんか、見られているな……」


 ニゲラも気付いたらしい。


 視線を感じた方を見ると、知っている人物たちと目が合った。


「あっ!」


「あいつらは!」


 そこにいたのは、以前、人間と契約できる神異を保護しに行った際、私たちと戦った二人だった。

 その神異は現在、アオハさんと契約している。


 確か、卯波フヨウと雨月エゴマだっけ?


「あら、お二人さんお久しぶり。デートかしら?」


「先日は、世話になったなぁ?」


 目が合うと、二人はこちらへやって来た。

 そして、私たちが座っていた四人掛けの席の向かい側に腰を下ろした。


「何かご用ですか?」


「そう警戒すんな。オレたちに戦う意思はない」


「今争っても、金にならないしねぇ」


「じゃあ一体、なんの用だ?」


「……弟は」


「え?」


「ツノゴマは今、どうしてる?」


「……」


「……え?」


 ツノゴマって、ゴスロリ姿の男の娘君だよね?


「なんだその沈黙は?」


「あれ? そういえば、あの後どうなったんでしょうか? ニゲラ君は知っていますか?」


「詳しくは知らない。だが、退異師の養成所? みたいな場所に送られたとか? そう聞いたような気がする……」


 退異師の養成所は、五行家やその分家の出身者以外を対象とした、専門学校みたいなものだ。

 一般家庭出身者の他に、素行の悪い退異師やスカウトされた魂術師などが通っているらしい。


「ということは、ツノゴマ君、退異師になるのかな?」


 お兄さんは対策局と敵対している魂術師だけど、弟が退異師になってもいいの?


「それならいい。安心した」


 あ、良いんだ。


「あいつは、オレとは違って白秋院家の血が濃い。良い人形師になるだろう……」


「え? でも、お兄さんの人形を操りつつ、自分も戦う戦闘スタイルは凄いと思いますけど……」


「え? そ、そう?」


「なに照れてんのよ?」


「別に照れてはいない!」


「まあ、ツノちゃんの処遇が分かって良かったわね。それじゃあ、行くわよ。この後も仕事あるんだから」


「はいよ」


「次に会ったら敵同士だからね」


「はい」


「……」


 そうして、フヨウとエゴマは去って行った。


「なんだか、濃い一日だったね」


「そうだな……」


 その後、ついでに夕食の買い物もして、夕方の帰宅ラッシュに巻き込まれる前に帰ったのだった。


 ◇


 夕食はニゲラと一緒に食べたのだが、ニゲラが帰る頃になって、雨が降ってきた。


「うわ、大雨になるって。ニゲラ君、帰れる?」


 そういえば、もう梅雨の時期だった。


「なんと!? しかし、傘もないしな……」


「貸そうか?」


「しかし、それではルリカが不便だろう?」


「いや、もう一本あるし……」


「しかし、濡れて帰っては風邪を引くかもしれない。そうなると対策局の面々に迷惑をかけるかもしれないな〜」


「え〜と、それなら、泊まっていく?」


 風邪をひいたら大変だもんな〜。


「良いのか!? 是非!!」


 ニゲラは食い気味に言った。


 あれ? これ、マズイな? 

 というか、ニゲラ、もしかしてこれが狙いだった?


「……ちゃんと、ウツギさんに連絡してね」


「もちろん!」


 その後、ニゲラはウツギさんにスマホで連絡し、ウツギさんは渋々ながらも了承してくれたようだ。


「ルリカ、ウツギが代わって欲しいって」


「あ、はい」


 ニゲラからスマホを受け取る。


「あ、ルリカです」


『ウツギだ。ルリカ、申し訳ないがニゲラを頼む』


「いえいえ」


『それと、君たちは婚姻契約をしたとはいえ、二人の関係はまだ友人以上恋人未満だ。性交渉などは控えるように! 

 一応、ニゲラにも注意はしたが、無理矢理迫られそうになったら、きちんと抵抗すること! いいな!?』


「せ──っ!? し、しませんよ!!」


 そうか、男女ならそういうことになる可能性もあるのか……。


 そうして、通話を切って、スマホをニゲラに返す。


「そ、それじゃあ、お互い適切な距離で過ごしましょう……」


「え〜?」


「不服そうにしないでください!」


 その後は別々にお風呂に入り、寝る準備をした。

 もちろん、寝る部屋も別だ。


 ニゲラの着替えは、ちょうど今日買ったものがあったので、それを早速着てもらった。


 あれ? ショッピングモールで服や下着を買ってたのって、もしかして結構計画的だった!?


「どの部屋で寝る? 空いている部屋は二つあるけど、布団がないんだよね。ソファがあるリビングの方が良いかな?」


 このマンション、ファミリー向けで3LDKだから、二部屋余っているんだよね。


「ルリカと同じ部屋で!」


「それはダメです」


「そんな!?」


 その後は何事もなく、私は自分の部屋で、ニゲラはリビングのソファで眠りについたのだった。







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