表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バトル漫画のモブに転生しましたが、何故か序盤ボスに溺愛されています!?  作者: 彩紋銅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/28

25 ルリカと神異の下僕

 ◇◆◇


 イワツメ先輩とバショウ先輩が、特別棟の一階の広間に一気に押し入った。


『なんだぁ〜、お前らぁ……』


『邪魔すんなよぉ〜』


 こちらに気づいた蛙っぽい二人が、襲いかかってきた。


「おっと!」


 イワツメ先輩は、銃で一人の両脚を撃ち抜き──。


「〝石槍〟!」


 バショウ先輩は、お札で石の槍を幾つも作り出し、もう一人の動きを封じた。


『グギャッ』


『ゴォッ』


「ルリカちゃん!」


「今のうちに、生存者を!」


「はい!」


 私は、二人が時間を稼いでいる間に、生存者たちが閉じ込められている檻に近づいた。


 うわ、この檻、肉を削ぎ落とした生の骨を使っている?

 骨同士がところどころ溶け合い、檻の形に組み上げられている。

 ここの神異がやったのか?


 それに、生臭さが少々キツい。


 背後からは、先輩方がドンパチやっているのが聞こえる。


「こんにちは! 対策局の退異師、長閑ルリカと申します! 皆さんを助けにきました!!」


 とりあえず、生存者たちを安心させるため、自分の所属と、ここへ来た目的を伝える。


 私は、骨でできた檻の中へ入ろうとした。

 出入り口はあるが、当然ながら鍵がかかっている。


 だったら、鍵を壊すまで。


 私は檻の出入り口に近づき、〝万象札〟を〝切断〟に設定。鍵の部分を丸ごと切り落とし、檻の中へ入る。


「た、対策局……」


「助かった……」 


「ひとまず、脱出しましょう。これで全員ですか?」


「は、はい。ここに集められたのは、そうです!」


 若い男性教師らしき人物が答える。

 よく見れば、生徒だけではなく、教師も数名いる。

 しかし、怯えているようで表情が暗い。


「怪我人はいますか?」


「はい、彼女が……」


 若い男性教師のそばには、女子生徒が横たわっていた。

 どうやら左肩に怪我を負っているらしく、暗い色をしている制服が、ぐっしょりと湿っている。触れると赤い色が手についた。


「これは……彼女には治癒のお札を貼りますね」


 酷い怪我だ。ひとまず、〝治癒札〟で血を止めて応急処置。〝天賦〟の方の治癒魂術も使った方がいいな。


 それには、まず、体の状態を確認しなければならない。


「〝魂診〟!」


 私は女子生徒の手を取り、魂力を流す。

 それにより、女子生徒の怪我の状態を把握するのだ。


 ──左肩の傷が最も深いが、ほかに致命的な損傷はない。

 脳や脊髄、内臓などの重要器官は無事だ。


 これなら、この場で治しても問題ないな。

 私は、〝魂診〟で流した魂力を〝治癒〟に変換。傷ついた箇所を、()()()()()()()()()()


 そしてなんとか、傷を塞ぐことはできた。呼吸も安定している。

 あとは、外で待機している救急隊員の方々に任せよう。


「これで、彼女は大丈夫でしょう」


「あ、ありがとうございます!」


「良かった……」


 女子生徒の友人らしい生徒たちと、女性教師が安堵する。

 しかし、彼らから感じる妙な緊張は消えていない。


 これは、何かに警戒している? でもその対象は私ではないし、檻の外にいる見張りの二人でもないようだ。


 彼らの視線の先は……。


「いきなり、赤黒い人形の化け物に襲われたんです。彼女は他の生徒を逃がそうとして……」


 先ほどの若い男性教師が、場違いなほど朗々と説明する。何か変だ。


「分かりました。他に動けないほどの重傷者は?」


「他に重傷者はいません。そういった人たちは、赤黒い人形に連れていかれてしまったので……」


 若い教師は、大袈裟に悲しそうな仕草をする。


「そうですか……」


「でも、安心しました! ボクが気に入っている彼女が、助かってくれて!! ああ、ボクのヒメちゃんんんんっ!!」


 顔を上げた若い男性教師の両目がぐるんと動き、蛙のように大きく膨れ上がった。


「──っ」


 彼らが警戒していたのは、この若い男性教師だったのか。


 ここに囚われている人数は、五、六十人ほど。全員を守る防御壁を展開するよりは──。


「──え?」


 私は防御壁の向きを反転させ、若い男性教師だけを内側に閉じ込めた。これなら、攻撃されても私たちに被害は及ばない。


「何の真似ですか? ボクと()()()()()を引き剥がすのですか?」


 そう言いつつも、男性教師の姿はどんどん蛙化していった。

 生徒たちから悲鳴が上がる。

 彼は、ここにいる神異の下僕(しもべ)になってしまったようだ。


 まずは、生存者を逃がしたい。

 しかし、これだけの人数をまとめて移動させるとなると、少し大変だ。

 怪我は治したとはいえ、意識が戻らない女子生徒も慎重に運ばなければならないし……。


 だが幸い、この特別棟は私たちが入ってきた正門の近くにある。


 全員を最短で敷地外へ逃がすには……。


「イワツメ先輩、バショウ先輩!」


「え?」


「何ですか!?」


 先輩方は、戦いながら答えてくれる。

 戦っている最中に申し訳ないけれど、生存者のためにも仕方がない!


「こちらにも、神異の下僕がいました! 今、動きを封じているので、その隙に、避難経路確保のために、この建物を()()()()()()()()、良いですか!?」


「はぁ!? 下僕いるの!? ──え? 壊す?」


「というか、どうして、そうなるんです!?」


「生存者を最短ルートで、外へ避難させます!」


「えーと……」


「生存者を助けられるのなら、やってみてください!」


「でも、壊しすぎるなよ!」


「はい!」


 そして、特別棟の壁をくり抜いた際に、生存者たちが怪我をしないよう、彼らを覆う()()()()を張った。


 一方向からの攻撃しか防げない防御壁と違い、結界は、あらゆる方向からの攻撃を防ぐことができる。しかしその分、魂力の消費は多い。


 敷地の外に最も近い、特別棟の外壁に狙いを定めて、魂力を込めたお札を投げる。お札が壁に貼り付くと、そこから馬蹄形の防御結界が展開された。

 私はその防御結界を、壁を押し切るように敷地の外まで()()()()()()

 特別棟の外壁が馬蹄形にくり抜かれ、さらに学校の敷地内と敷地外を隔てる塀にも、同じ形の穴が開いた。


 そして、〝万象札〟で〝浮遊〟のお札を作り発動。くり抜いた壁と塀を浮かせ、通路脇の邪魔にならない場所へ移動させた。


 防御結界はそのまま展開しているため、移動中に神異に襲われる心配もない。


「さあ、皆さん! ここから外へ逃げてください!」


「で、出られる……」


「良かったぁー!」


「みんな、慌てないで! 落ち着いて進んでください!」


 他の教師たちが先導し、生徒たちを外へと導いた。

 重傷だった女子生徒も、体格のいい男子生徒に背負われ、女性教師に支えられながら、無事に外へ運び出された。


 ほとんどの生存者が避難したあとも、二人の女子生徒だけが、その場に残っているが……。


『おい、何が起きた!? この魂力、ルリカだな!?』


「うわ! あ、支部長さん!」


 そうだ、インカムつけてたんだ。


『何かやるなら、こちらにも報告しろ!』


「申し訳ないです! でも、特別棟にいた生存者のことはお願いします!」


 私は、こちらの状況を支部長さんに説明した。


『……なるほど。防御結界で、敷地の外まで続く避難通路を作ったのだな。

 壁と塀に開いた穴には、神異が逃げられないよう、こちらで神異避けの結界を張っておく。人間は通れるから安心しろ。ルリカは目の前の敵を倒せ』


「ありがとうございます! 了解です」


 私は、()防御壁に閉じ込められている男性教師に向き直る。


『あ、あーー。ボクのヒメちゃんが……』


 それを最後に、若い男性教師はまともに話すこともできなくなり、上半身が蛙の異形へと変異した。


「こ、この先生が、()()()()()を赤黒い人形に差し出そうとしたんです!!」


「ですが、今は十分に食材はあるからと、断られて……」


 ヒメサユリというのは、先ほど治療した女子生徒の名前らしい。二人は、ヒメサユリさんの友人なのだろう。


「なるほど。事情はわかりました。お二人もお逃げください」


 二人の女子生徒も避難し、檻の中には私と男性教師だけが残された。


『ヒメぢゃん……』


 男性教師は、意味のない言葉を、壊れたように繰り返している。


「えー、神異の下僕の倒し方は……」


 私は実家で学んだことを思い出す。

 人間が神異の下僕にされる場合、大抵は神異の端末が体内に入り込み、肉体や精神を操っているらしい。

 そして、変異時に負ったダメージは、人間に戻った時の肉体にはほとんど影響しない……。


 なら、腹パン一択だな!


 先ほどの〝天賦〟による治癒で、魂力を消費しているので、ニゲラにもらった魂力石も早速、使わせてもらおう。


 私は〝万象札〟を取り出し、魂力石を握りながら、術式を魂力で焼き付ける。

 そしてそれを投げると同時に、男性教師を拘束していた防御壁を解除する。


『ヒメぢぁーーーーんっ!!』


 防御壁の拘束がなくなり、男性教師がこちらに襲いかかってくる。


「〝貼符撃〟!」


『ごぼっ!?』


 放たれた札が、男性教師の鳩尾に拳を叩き込んだような、鋭い衝撃を与える。


『おえっ、ゲボっ……』


 その衝撃で、男性教師はその場にうずくまり、何かを吐き出した。

 それは、かなり大きな赤黒い蛙だった。


 その蛙はしばらく蠢いていたが、やがて動かなくなった。

 男性教師の姿も元に戻り、意識を失っている。


「これが、人間を操るための神異の端末?」


 こんなものを体内に入れられるなんて、かなり嫌だな……。


 とにかく、こちらは何とかなった。


 ◇


 下僕を倒し、先輩たちを確認すると、二人とも丁度、相手を倒したところだった。


「先輩方、大丈夫ですか!?」


「こっちはヘーキ!」


「こちらもです」


「私が倒した教師と、見張りをしていたこの二人は、生きている人間ですよね?」


「そうだな」


「一応、治しておきますか?」


「ルリカさんは、先ほど札を使っていましたね。〝浄化〟の札は使えますか? 使えるなら、まずこの二人に貼ってあげてください。治癒もお願いします」


 バショウ先輩が尋ねてくる。


「あ、はい。持ってきてはいませんが、〝万象札〟を使えば……」


「万象札っ!?」


「少々、お待ちください」


 私は、浄化の術式を〝万象札〟に魂力で描いてゆく。

 それを二枚作成し、神異の下僕(しもべ)だった生徒二人に貼り付ける。

 あと、治癒のお札もね。互いの効果を阻害しないように、一応調節する。


『うぐ、おえっ……』


『げええぇ……』


 すると、二人とも激しくえづき、胃の中から何かを吐き出した。


「うへぇ……」


「これは……」


 二人が吐き出したのは、どちらも死んだ蛙だった。若い男性教師のものと同じくらい大きな個体が、一匹ずつ出てきた。

 やはりこれが、彼らを操っていた神異の端末なのだろう。


 やがて二人の様子が落ち着き、本来の意識を取り戻したらしい。

 姿も元の人間に戻っている。


「あ、あれ? おれ……」


「なんで、こんな……」


「君たちは、神異に操られていたんだ。何が起きたか覚えているか?」


「あ、おれたち、氷橋に襲われて……先生も、一緒に……」


「いきなり、蛙を口に……おえっ」


 二人とも、またえづき始めてしまった。

 このままだと危険なので、〝安眠〟のお札で眠らせて、支部長さんに、若い男性教師を含めた三人の保護をお願いした。


 気を失っている若い男性教師にも、浄化札と治癒札を貼っておいた。


 三人は、駆けつけた警察官と救急隊員に保護され、無事に搬送されていった。


「この後は、どうします?」


「とりあえず、他に生存者がいないか特別棟内を確認してから、ルコウたちと合流しよう」


「りょーかい」


「了解です」


 バショウ先輩の言葉に、イワツメ先輩と私は同意する。


 特別棟は二階建てで、一つの教室が広いので、部屋数は少ない。

 すべての部屋を確認したが、生存者も神異も、操られている人間もいなかった。


「こちらは大丈夫そうですね──」


 その時、轟音が響いた。


「な、なんだ!?」


「外からですね」


「行こう!」


「あ、おい、待て!」


 イワツメ先輩が真っ先に駆け出し、バショウ先輩と私はそれに続いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ