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バトル漫画のモブに転生しましたが、何故か序盤ボスに溺愛されています!?  作者: 彩紋銅


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21 ルリカと魂術師(敵意有り)

 ◇


 ルコウさんとフヨウが鍔迫り合いをする一方、アオハさんは魂術で作った球を、魂力をまとわせた脚で蹴り飛ばし、エゴマのトランクから出てきた何かに叩き込んだ。


 フヨウの武器は大剣だ。細身の女性なのに、軽々と扱っている。

 朱夏院家の遠縁らしいので、肉体や武器を強化できる魂術が使えるのだろう。その戦いぶりは、凄まじい迫力だ。


 一方、エゴマのトランクから()()()()のは、三面六臂(さんめんろっぴ)の女性型の人形だった。三対ある腕のうち、一対は鎌のようになっており、下半身は蠍の姿をしている。


 〝物〟を使う戦い方からして、白秋院系の魂術師のようだ。


 アオハさんの攻撃は、その人形に受け止められ、弾かれた。


 明らかに、あのトランクには収まらない大きさだが、空間系の魂術でも使っているのだろうか?


「ひえええ、境内での戦闘はご遠慮くださ〜い!」


 社務所の方から、神主さんが叫ぶ。


「……聞いたか? フヨウ」


「……聞いたわね、ルコウ。

 でも、この神社が壊れたところで、私たちに何か不都合があるかしら? 少なくとも、私は困らないわ!」


 そう言ってフヨウは、ルコウさんを弾き飛ばす。


「相変わらずのゲスか……」


 ルコウさんは足で地面を削り、土煙を上げながら止まる。


「貴方も同じ意見でよろしいですか?」


「……そうだな」


 アオハさんの問いに、エゴマが答える。


「だが、被害が出る前に済ませれば良いわけだ。それなら神社に迷惑はかからない」


「──っ!?」


 異様な気配を感じ、そちらに目をやると、私たちの背後に、エゴマのそばにいるものと同じ、三面六臂で下半身が蠍の女性型人形が二体立っていた。


「大人しく、朱塗りの祠を渡せ。期待の新人二人を、ここで死なせたくはないだろう?」


「……」


「おっと、ぼんやりする暇はないぞ? まずは、お前から倒すからな」


 アオハさんとエゴマが戦い始める。


 うむむ、何とも卑怯な方々だ。

 目的のためには手段を選ばない感じだ。


 さて、どうする?


 ルコウさんはフヨウと戦っている。神社に被害が出ないよう戦っているので、やりづらそうだが、フヨウを引きつけてくれている。


 しかし、アオハさん一人でエゴマと人形一体を抑えながら、残る二体にまで対処するのは厳しいだろう。


 人形使いの魂術師は原作漫画『東都神異録』にも出てきた。

 今対峙しているエゴマとは別人だが、原作では、人型の人形を何十体も操る敵を、操り手本人を倒すことで無力化していた。


 それならとエゴマの方を見るが、肉弾戦でアオハさんと渡り合っている。人形はついでに使っているような戦い方をしていた。

 普通に本人が強そう。


 そして、目の前の二体の異形の人形は自動で動いているのか?

 こちらの一挙手一投足を、じっと観察している。


 なんか、原作に出てきた人形師より強くない?

 モブである私じゃなくて、原作主人公にそういう敵をぶつけてほしい。


 とりあえず、人形と使役者をつなぐ魂力の接続を切れば、動きは止まるだろうけど……。


 防御壁でこちらへの攻撃は防げる。まずは、〝風刃〟のお札で攻撃してみよう。


 その動きに反応して、人形の一体が鎌になった腕を振りかぶり、攻撃してきた。


 しかし、鎌は防御壁に阻まれ、私たちまでは届かなかった。


 だが、なんとなく違和感があるな?


 エゴマと共闘している人形とは、どこかが違う気がする。

 具体的に何が違うのかは、分からないけど。


 そもそも、アオハさんとあれだけ激しく戦いながら、こちらの二体まで同時に操れるのだろうか。

 ある程度は自動で動くように作られているのか?


「ルリカ」


「うわ!? ニゲラ君?」


 ニゲラが私のそばへ来て、耳元で囁いた。


「もう一人いる」


「──え?」


 ああ、なるほど。


「ニゲラ君、居場所は分かる?」


「ああ」


「なら、捕まえてきて。でも、絶対に殺さないでね!」


「了解」


 ニゲラの姿が消える。


 え? 転移した? 瞬間移動?


 彼、そんなこともできるのか? さすが、原作序盤のボス。


 ニゲラが消えたことに気付いたのか、二体の人形の動きが慌ただしくなる。


「ひええぇ〜」


 朱塗りの祠を守っているので、下手に身動きは取れない。


 だけど!


 私は〝万象札〟を数枚取り出すと、()()()術式を焼き付けて放った。


 放った札は人形たちを素通りし、近くの木々に張り付く。

 すると、木の根がタコの足のように蠢き始め、人形たちへ巻きついた。


 これで、ひとまず動きは封じた。

 〝金縛り〟のお札だと、人形相手に効果があるか分からなかったので、この方法にした。


 木を操るお札の名は〝操樹〟とでも名付けようか。

 〝万象札〟は、このように術者が思い描いた効果を自由に再現してくれる。

 その分、術式の知識は必要だけどね。


 木の根を通して、人形へ流れ込んでいる魂力をたどる。


 その時──。


「うぎゃっ!?」


 そんな叫び声と共に、ニゲラが戻ってきた。

 その隣には、ゴスロリ姿の女の子(?)が倒れていた。

 ニゲラが連れてきたらしい。


 何故、女の子と言い切れないのかといえば、明らかに声が……。


「コイツが、この二体の人形を操作していた魂術師だ」


「う、うん……」


「ちなみに男だ」


「え!?」


「ちょっと、なんでバラすんだよ!!」


 やっぱり! 女装系男子?


「ツノ!」


 エゴマの関心がこちらに向いた。

 彼が使役している人形が、こちらへ向かってくる。


「──っ」


 私は、迫る人形との間に新たな防御壁を展開する。

 しかし、祠を守る防御壁と、人形二体を拘束する術にも魂力を割いているため、少しばかり許容量を超えてしまった。


 いや、いつもなら、術ごとの魂力の配分を調整して、もう少しうまくやりくりできるんだけど、こうも立て続けに予想外のことが起きると、魂力の配分を計算している余裕なんてないな……。


「やめろ!」


 アオハさんが、エゴマを止めようとするが、殴り飛ばされる。


「ルリカ! ──っ!?」


 ニゲラが駆け寄ろうとするが、その体にはいつの間にか魂力でできた糸が絡みついていた。


「おっと動くなよ? 少しでも動けばズタズタになるぜ?」


 ゴスロリの少年が残忍な笑みを浮かべている。彼の仕業か。


「……」


「え? え? ちょっとっ!?」


 ニゲラはゴスロリ少年の言葉も聞かずに、こちらに向かってくる。

 そのせいで、糸が食い込んだ箇所から血が滲む。


「わあ!? ニゲラ君、止まって!! 私のことはいいから、自分のことを大切にして!!」


 じゃないと、序盤ボスに近づいてしまうかも!?


 自分の体を顧みないニゲラに、ゴスロリ君が慄く。


「しかし……」


「おい! あんたの体、ズタズタにできるって言ってんだろ!? 動くんじゃねーって!!」


 自分でやっといて、ゴスロリ君が慌てている。

 悪い奴ではなさそうだ。


「それなら離せ」


「できるか!!」


 ニゲラは、絡み付いた糸をものともせず、ゴスロリ君の注意を引きつけている。

 アオハさんはエゴマと戦い、ルコウさんはフヨウと戦っている。ルコウさんは神社への被害を気にしているため、本来の力を出し切れてはいない。


 私は朱塗りの祠を防御壁で守りながら、木の根でゴスロリ君の操る人形二体を拘束している。さらに、エゴマの人形を防ぐため、もう一枚の防御壁も展開中だ。


 正直、膠着状態だ。


 何か、この状況を崩すきっかけがあれば……。


 その時、後方から、光が迸った。


 これは……もしかして、朱塗りの祠から神異が生まれた!?


 一同の視線が、朱塗りの祠へと注がれる。


 光る朱塗りの祠から、何かが飛び出してきた。


 それは空中を旋回したかと思うと、私の防御壁へ攻撃を続けていたエゴマの人形の胸部を貫いた。


「な──っ!?」


 あっけに取られたエゴマを、アオハさんが蹴り倒す。


「では、こちらも」


「え──?」


「これ以上、様子を見る必要もないな」


 ニゲラがゴスロリ君の腕をつかむ。次の瞬間、ゴスロリ君の体から力が抜け、その場に崩れ落ちた。


「な、何を──」


「玄冬院系は魂力が多く、他者に分け与えることもできる。そして、()()()()()()()


「まさか……オレの魂力を……?」


 ゴスロリ君から人形への魂力供給が途絶え、二体の人形も動かなくなる。

 念のため、木の根で拘束し続けておこう。


「これは──」


『ぴよっ!』


 そして──なんか黒くてでっかいヒヨコがそこにいた。







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