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0.3秒の王国 ―アルゴリズムの王と宰相―  作者: Furi0804
第1章 未成年クリエイター事故
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7/20

王と宰相(7)

事故から1週間後、星河ではない小鹿のアカウントに、短い文章が投稿された。




一命はとりとめました。


ただし重傷のため、治療にはしばらく時間がかかります。


本人および家族への取材は固くお断りいたします。


プライバシーを尊重していただきますようお願い申し上げます。




文章全体は比較的落ち着いていた。


しかし、最後の一文だけが、明らかに温度が違った。




―――彼女が自ら配信を選んだことは理解しています。


しかし、未成年の子どもが視聴者の反応に応え続ける構造を、


プラットフォームはどこまで把握していたのでしょうか。




啓文は、その一文をしばらく見つめていた。


小鹿本人の文章ではないと、すぐに分かった。


おそらく父親か母親、あるいは弁護士が書いたのだろう。


静かな怒りと、抑えきれない問いが、丁寧な言葉の裏に透けていた。





デスクの反対側には、ナスダック上場に向けたアドバイザーとのスケジュール表が置かれている。




その中に、英語で小さく書かれた項目があった。




Founder Personality Assessment


創業者特性評価。




米国の機関投資家とアンダーライターは、独創的な天才を愛する。


しかし同時に、その天才が暴走したときのリスクを極端に恐れる。




賀雲舟の創造性は、これまで星河の最大の価値だった。


そして今、同じ創造性が、明確なリスク要因として認識され始めている。


星河という巨大なプラットフォームのガバナンスが、


結局のところ、周啓文という翻訳者の腕一本で支えられている——


そう見られた瞬間、これはもう美談ではなく、致命的な脆弱性になる。




啓文は椅子の背もたれに体を預け、天井を眺めた。




「……国を燃やす、か」




リスク会議で誰かが笑いながら言った言葉を思い出す。


あのときは、ただの冗談だった。




今、その同じ言葉が、啓文のデスクの上でずっしりと重い。




王の言葉を、外に出せる形に整える。


それだけで、この王国は守れるのだと、


自分はいつから本気で思い込んでいたのだろう。


啓文はゆっくりと息を吐き、小鹿のアカウントに投稿された文章をもう一度読み返した。




プラットフォームは、どこまで把握していたのか。




その問いが、静かに、しかし確実に、彼の胸の奥に突き刺さっていた。

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