↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
0.3秒の王国 ―アルゴリズムの王と宰相―  作者: Furi0804
最終章 0.3秒の王国
PR
33/36

王のアルゴリズム(13)

啓文は、静かにドアを閉めた。




窓から差し込む午後の光が、総裁室のデスクの上に淡く影を落としている。


賀総はスクリーンからゆっくりと顔を上げ、啓文の視線を受けた。




「話があります」




啓文の声は穏やかだった。


二人で応接テーブルをはさんで向かい合う。


賀総はソファの背もたれに体を預け、軽く顎を引いた。




「退職したいと思います」




賀総は一瞬、目を細めたが、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻った。


創業CEOとして、彼はこの瞬間をこれまで何度も味わってきた。




「いつ決めた」




「前から考えていました」




賀総は指でテーブルの端を軽く叩きながら、淡々と続けた。




「待遇か」




「違います」




「どこに行く」




「まだ決めていません」




短い沈黙の後、賀総は視線を真正面から啓文に向けた。




「俺のせいか」




啓文は一瞬、言葉に詰まった。




「そういう話ではありません」




賀総は小さく息を吐いた。




「今か」




優秀なエンジニアが、敏腕営業が、海外拠点を任せていた責任者が、


そして上場前後の激動の中で何人もの幹部が、去っていった。


感情で縛るのは無意味だと、理屈では理解している。




それでも、この日が予想より早く来たことには、わずかな苛立ちが残った。




「星河は、これからも続く」




「はい」




「引き継ぎは、しっかりやってくれ」




その声は、冷静さを保とうとしていたが、どこか乾いていた。


啓文は静かに頭を下げた。




話は、終わった。


終わったはずなのに、啓文はしばらく立ち上がれなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。