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0.3秒の王国 ―アルゴリズムの王と宰相―  作者: Furi0804
第1章 未成年クリエイター事故
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王と宰相(3)

会議室を出た啓文は、手元のタブレットをスワイプしながら歩いていた。




賀総が「いいな」と評した少女——「小鹿」のプロフィール。


彼女がアップロードしているのは、放課後の校舎や、錆びついた工場跡地で踊るような動画が多い。


どこか危うい浮遊感と、必死に「見られたい」と訴えるような視線が特徴だった。




「……ここまでは、生きている。ここからは、演じている」




啓文は、賀総の言葉を反芻する。




「周部長」




背後から声をかけられ、啓文は足を止めた。


信頼安全部門の若手社員、リンだった。




「今の定例、どうでしたか。未成年保護の件……」




「議論は堂々巡り。持ち帰りになった」




お手上げだ、というジェスチャーをすると、リンの顔が曇った。




「でも、手遅れになります。小鹿のコメント欄、見てますか? 彼女の学校や自宅を特定しようとする書き込みが増えています。


それに、昨夜のライブ配信では、視聴者のリクエストに応えて、かなり高い場所から飛び降りるような仕草を……」




啓文は歩きながら、リンの言葉を遮った。




「わかっている。しかし、現行の基準では止められない」




「仕組みがないからといって、見過ごしていいんですか?


それは、プラットフォームの良心にかかわるのでは」




リンの真っ直ぐな視線が啓文に刺さる。




良心。


若い言葉だ、と啓文は思った。


かつて経済紙の記者だった頃、自分も誰かに似たような言葉を投げつけていた気がする。




啓文は表情を変えずエレベーターのボタンを押した。




「とにかく、この件については賀総を説得するしかない」




エレベーターの鏡に映るのは、隙のないスーツを着た自分と、明らかに失望を隠せない若い女性の顔だった。





それから、三日が経った。


広報部のデスクに戻った啓文のスマートフォンが、激しく振動した。




発信元は、外部のモニタリングチーム。


電話を取ると、低い抑えた声が流れた。




『周部長、緊急です。星河のトレンド1位に「小鹿」が。……事故です』






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