表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
0.3秒の王国 ―アルゴリズムの王と宰相―  作者: Furi0804
最終章 0.3秒の王国
PR
27/28

王のアルゴリズム(7)

翌朝、賀雲舟は総裁室にいた。




総裁室のスタッフに呼ばれ扉を開けた啓文は、一瞬だけ足を止めた。




いない可能性を、考えなかったわけではない。


だが、賀総はいつもの椅子に座り、いつものようにスクリーンを見つめていた。




「戻られたんですね」




「仕事が残ってる」




賀総はあっさり答えた。


啓文はわずかに微笑み、




「はい。山ほど」




賀総が視線を上げ、啓文の顔を見た。




「あの案、もう一度出せ」




「推薦ロジックの件ですね」




「説明はいい。信頼安全とプロダクトを呼べ」





*******************




「未成年アカウントで、視聴数、投げ銭、コメント速度が同時に閾値を超えた場合、推薦露出を一時的に抑制します」




信頼安全チーフが説明した。




「リン、当日のログを」




「はい」




チーフの横に座っていた若手社員、リンがPCを操作する。




「この条件を当てはめると、小鹿さんの配信は事故の二十三分前に確認対象に入ります」




賀総はしばらく画面を見ていた。




「危ないものを下げるのは分かった」




その場の視線が賀総に集まる。




「でも、問題は、何を拾ってるかじゃなくて」




賀総は、表示されたログを指先で軽く叩いた。




「それしか拾えなくなってることじゃないか」




プロダクト責任者は軽く目を見開いた。




「評価指標を変える、ということですか」




賀総は指を顎に当てて少し考え込んだ。




「今まで星河は『盛り上がり』を拾っていた。


視聴数、投げ銭、コメント速度、滞在時間。


それが伸びるのは分かる。人の心をつかんでいるから」




賀総はログを指で追いながら、言った。




「もっと“いい流れ”を上に出せないのか」




「いい流れ、ですか」




「……静かに残るもの、長く見られるもの、煽らなくても人を留めるもの」




その言い方を聞いて、プロダクト責任者が姿勢を少し正した。




「評価指標を、エンゲージメントの『量』から『質』へシフトさせる……。


しかし総裁、それをどうやって数値化しますか?」




プロダクト責任者が問う。




「『静かに残るもの』や『いい流れ』は極めて主観的です。


それを指標に落とすのは、容易ではありません」




賀総は画面に並んだログを指した。




「流し見されているのか、それともユーザーがその画面の前で立ち止まっているのか。


投げ銭の多さじゃなく、コメントの重複率や、その後の検索行動の相関とか……」




信頼安全のチーフが補足するように言った。




「つまり、中毒性によるブーストではなく、持続的な関心を優先表示のトリガーにするということですね」




リンはチーフの隣で黙って会話を聞いているが、どこか高揚した面持ちだ。




「……方針は分かりました」




プロダクト責任者は、少しだけ息を吸った。




「ただ、テストに時間がかかります。


また、ユーザーが受け入れるまで、成長曲線は一時的に落ちる可能性があります」




「分かってる」




賀総は短く答えた。




「それでも見たい」




賀総はそう言い切ると、ようやく椅子に深く座り直した。


隣の啓文を見上げる。




「外には、説明できるよな?」




啓文は少しだけ間を置いた。




「説明します」




賀総は軽く笑みを浮かべた。


啓文は息をついた。




「……そのために、おりますので」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ