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0.3秒の王国 ―アルゴリズムの王と宰相―  作者: Furi0804
最終章 0.3秒の王国
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王のアルゴリズム(5)

星河ブランド戦略室。


ビビアンはソファの背もたれに体を預け、大きなモニターをじっと見つめていた。




画面には彼女のブランドの最新広告配信結果が表示されている。


スタッフは遠慮がちに右側の画像を指した。




「こちらのほうが、クリック率が0.8ポイント高いです。視聴維持率も、上回っています」




ビビアンが最後まで迷って外したほうの画像だった。


色が強く、肌の見せ方も少しだけ大胆だった。




「……そう」




ビビアンの声は小さく、乾いていた。


彼女は無言で画面を見つめ続けた。




「データ上では、ユーザーはこちらを好んでいるようです。ブランドの空気感からは、少し外れていますが……」


「……いいわ。そっちで進めて」




スタッフが小さく頷き、比較画面を閉じた。


彼女はそれ以上何も言わなかった。





*******************




同じ夜、東亜財経の編集部は白い蛍光灯の下で淀んだ空気が流れていた。


沈予真は書き上げた原稿を上司に見せた。




『星河、未成年クリエイター事故で和解/推薦設計の実効性が次の焦点に』




上司は顔をしかめ、椅子を大きく軋ませた。




「見出しが弱い。和解金を前面に出せ。金額はいくらだ?」


「金額は公表されていません」




上司は鼻で笑う。




「じゃあ賀総裁の辞任観測で引っ張れ。もっと尖らせろ」


「辞任観測は取れていません」


「観測、でいいんだよ」




予真は少しだけ黙ってから言った。




「それは、この事件の本質ではないと思います」




上司は苛立ったようにため息をつき、コーヒーカップを乱暴に置いた。




「真正面から書いたって誰も読まないんだよ。PV取れない記事なんて、ただの自己満足だ」




予真は唇をきつく結んだ。





結局、配信された記事の見出しは、デスクが書き換えたものになっていた。




『アルゴリズムは少女を追い詰めたのか


高額和解で幕引き、総裁辞任観測も』




公開から数時間でPVは予想を大幅に上回り、コメント欄は非難と野次と好奇心で埋め尽くされた。


上司が予真のデスクの横で足を止めた。




「ほら、伸びただろ」




予真は自分の名前が付いた記事を、ただ黙って見つめていた。


本文のほとんどは自分が書いたものだった。


しかし見出しは、彼女のものではなかった。


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