王の言葉(4)
会見から数日後。
星河本社の危機管理フロアでは、モニターの前に人が集まり、
地上波ニュースの速報を見つめていた。
<<未成年クリエイター問題、プラットフォーム側に説明要求へ
代理人弁護士を通じ、事故当時の運用体制について協議準備>>
啓文は黙って放送を見ていた。
アナウンサーが淡々とニュースを読み上げる。
小鹿の両親が代理人弁護士を立てたこと、星河に対して事故当時の配信監視体制、未成年アカウントへの収益化基準、危険行為の検知・停止プロセスについて説明を求める方針であること。
そして、家族側代理人のコメントが続く。
【星河側の記者会見では、未成年クリエイター保護に関する新たな規則が示されました。
しかし同時に、賀総裁からは創作の自由や表現の可能性に関する発言が繰り返され、クリエイター本人が置かれていた危険な状況に対する真摯な受け止めが十分であったとは感じられませんでした。
私たちが確認したいのは、表現そのものの是非ではありません。一人の未成年の子どもが、視聴者の期待に応え続ける中で危険な行動へ向かっていく構造を、プラットフォームがどこまで把握し、どこで止められたのかという点です】
そのとき、啓文の端末が震えた。
送信元は、ナスダック上場準備を支援する米国のアンダーライター事務所だった。
本文は短く、容赦なかった。
>>周様
>>先日の記者会見、およびご家族側が法的手続きの準備に入ったとの報道を受け、賀氏の公的発言が、信頼安全体制改革に対する会社のコミットメントを損なう可能性について、当方の懸念はさらに高まっています。
>>創業者を含む経営陣の対外発信が、ガバナンス・法務・投資家リスクの観点と整合するよう管理される、実効的なプロセスが星河に存在するのか、確認が必要です。
>>次回協議までに、経営陣の公的発信に関する承認プロセス、エスカレーション権限、および事後検証手続きについて、書面でご説明ください。
啓文は、しばらく画面を見つめていた。
創業者の公的発信。
承認プロセス。
エスカレーション権限。
これまで星河では、明文化されてこなかった言葉だった。
すべてが、同時に動き出していた。
家族。
法務。
信頼安全。
投資家。
市場。
そして、その中心には、賀総の言葉があった。




