二
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これは、遙か昔の、かなしいお話。
あるところに、二人の男神がおりました。
その双子の神は、たいそう仲が良く、一人は太陽を、一人は月を司り、開闢そのものでありました。
名を、アールフィルト、ローディラルトと申し、天と地を分け、昼と夜をうみ、命を育んでいきました。
そしてかの双子神に続くようになりませる神の名は、狩猟を司りし女神リリィ、植物を司りし女神フィンディア。
このようにして次々と神々が現れ、世界は循環していきました。
ある時、偉大なる双子神は問いました。
夫とするならばどちらが良いか、と。
かなしいかな、双子神はフィンディアを愛してしまったのです。
フィンディアは、どちらのことも大切だったので、答えを出せずにいました。
しかし、この話を聞いたリリィは怒り狂いました。彼女はアールフィルトに懸想していたのです。
嫉妬に狂ったリリィは、満月の晩、フィンディアを呪い殺してしまいました。
フィンディアの魂と体は灰となり、世界の各地に散らばりました。
悲しみに暮れた双子神は、フィンディアの欠片を探しに行くことにします。
けれど、さぁどうでしょう、旅に出た二人は驚きました。
なにしろフィンディアは植物の神ですから、世界中のありとあらゆるものに魂が宿ってしまいました。草木はもちろん、それを食べた生き物たちに、その魂は移っていくのです。
千々に別れたその魂を集めるには、いくら世界を創った双子神といっても容易ではありません。
世界を創る以上に、難しい旅になりました。
そして二人は、旅の果てに、自分たちと同じ双子の、人間の少女に出会いました。
神への供物としてささげられる、聖なる乙女でした。
彼女たちの名を、ロベルティーナ、ローゼンと言いました。
なんと彼女たちは、フィンディアの魂を、他のどの生き物よりも多く持っていました。
双子神は大いに困りました。
アールフィルトはローゼンを、ローディラルトはロベルティーナのことを、それは深く深く愛してしまったのです。
フィンディアの魂をもらうには、彼女たちの命を貰わねばなりません。
双子神は悩みます。
そして悩んだ末、二人は違う結論に至りました。
アールフィルトはローゼンと共にあり、フィンディアとともにあろうとしました。
ローディラルトはロベルティーナを己のものにし、フィンディアとともにあろうとしました。
フィンディアと同じように世界に散らばることを選んだ兄と、フィンディアを独占しようとした弟は、この時はじめて袂を分かちました。
二人は七日七晩、争いました。
世界は闇に包まれ、命は絶え果て、多くのものが滅びの道を進もうとしていました。
戦いは永遠に終わらぬものと思われたとき、ロベルティーナとローゼンが二人を止めます。
この変わり果てた世界は、あなた達の愛したフィンディアが望んだものなのか。
その言葉に、双子神は胸を打たれました。
そうしてアールフィルトは半身をローゼンの中に残し、その半分を世界各地に散らばるようにしました。
一方ローディラルトは、ロベルティーナとともに世界の果てで、世界を守りながら、フィンディアの魂の安寧を願いました。
双子神は、そのようにして神々の世界から身を御隠しになりました。
これは一体いつの頃の出来事なのか、あまりに昔で、正確な時は誰も知るはずもありません。
しかし、物語はこれで終わらなかったのです。
今から二千年ほど前。
神と魔物の争いで、世界は傷ついておりました。魔物は姿を消し、人は神により支配されておりました。
見るも無残な世界の有様に、神々は嘆きます。
どうにかして世界をあるべき姿に戻せぬものか。
空高く青く澄み清く緑豊かなありし日の姿へと。
神々は話し合い、一つの答えにたどり着きました。
世界を創造し給うた神ならば、それもまた可なり、と。
そう、神々は原初の神たるローディラルトの力を借りることを決めたのです。
しかし、世界の果てで身を隠しなさっているかの神を呼び起こすことは容易ではありません。
並大抵の神では、世界の果てにさえ辿りつけないのです。
当時神々は人の世を統べるべき座を巡り、争いを続けておりました。
七柱がそれぞれ人の世界を統治し、領地を奪い合っておりました。
神の世に留まる神々は、魔力を持つ人間を集め、その七柱の神の力を奪い、世界の果てで原初の神に見えさせることを決めました。
フィンディアの愛し子である"人"ならば、世界の果てに辿りつけるだろうと考えたのです。もし辿りつけなくても、次の人間を選び出せば良い。
神はそうして、人間の中から八人を選びました。
フィンディアの魂を集め、ローディラルトに打ち克つための力の入れ物として――聖玉なるものを御造りあそばしました。
さらに不思議なことに、その入れ物は、ロベルティーナが末裔、リディアに授けられたのです。
そして奪った神の力の入れ物として、宝玉が生み出され、七人の人間に分け与えられました。
こうして、八人の人間の――のちに適合者と呼ばれる八人の、世界を巡る旅が始まったのです。
七柱の神は倒れ、聖玉は満たされ、彼らは世界の果てへと向かい、ついに――。
これよりのちのことは、最早語るべくもなく。




