幕間
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きっとこれは、最後の時間になるでしょう。
俺とあなたの、きっと最後の夜になる。
あなたはもうじき、俺の手を離れてしまう。
ううん、あなたは初めから――。
分かっていた。俺を初めて拾ってくれた時から、あなたがどこか違う場所を見ていたことなんて。
分かっていたのに、俺は錯覚していたんです。俺を見てくれていると。事実、あなたは時折、本当に俺のことを見てくれていたんだと思います。
たまたまの出会いだったとしても、俺に名を与えてくれたことが嬉しかった。ゴミ溜めのような世界しか知らなった俺を、連れ出してくれた。
今のあなたは、深い悔恨の中にいる。
俺になぞ及びもつかない、二千年というあまりにも長い時の濁流に逆らって、悔恨の海の中でもがいている。
そしてあなたは俺がいなくても、生きていけるのでしょう。
あなたの道の先に、俺の居場所はないのだから。俺はあなたの道の端に、たまたま現れた何かだったのでしょう。すれ違う人ですらない、ちょっと、気まぐれで興味をひいた、そんな程度のものだったのでしょう。
けれど、けれども、それでいいのです。
あなたはきっとこの道の先で、一つの結末に至るのでしょう。あなたの望むと望まざるとに関わらず。一つの答えを得るのです。
あぁ、あなたの体温が憎らしい。
血の通っていないような、それでいて雛のように温かい、あなたの体温が。俺を抱きしめてくれるあなたが。
白いシャツから除くあなたの首筋の美しさが。
俺を置いていくことに、一抹のさみしさを感じるあなたが。
「今までありがとう」
掠れた声で、どこか慈愛のこもった瞳で、優しく両の手を俺の背に回すあなた。
「アレン、君は、俺の―――――――」
そんなこと、分かっていました。
けれど、あぁ、けれど。
「グレイ様、あなたは――――――」
きっとこれは、最後の記憶。
俺とあの人の、最後の時間。
遠い未来で、俺が思い出す、あの人との、最後の夜の出来事。




