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リディア―世界の中で―  作者: 知佳
第二十一章
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150/159

幕間

****



 きっとこれは、最後の時間になるでしょう。

 俺とあなたの、きっと最後の夜になる。

 あなたはもうじき、俺の手を離れてしまう。

 ううん、あなたは初めから――。

 分かっていた。俺を初めて拾ってくれた時から、あなたがどこか違う場所を見ていたことなんて。

 分かっていたのに、俺は錯覚していたんです。俺を見てくれていると。事実、あなたは時折、本当に俺のことを見てくれていたんだと思います。

 たまたまの出会いだったとしても、俺に名を与えてくれたことが嬉しかった。ゴミ溜めのような世界しか知らなった俺を、連れ出してくれた。

 今のあなたは、深い悔恨の中にいる。

 俺になぞ及びもつかない、二千年というあまりにも長い時の濁流に逆らって、悔恨の海の中でもがいている。

 そしてあなたは俺がいなくても、生きていけるのでしょう。

 あなたの道の先に、俺の居場所はないのだから。俺はあなたの道の端に、たまたま現れた何かだったのでしょう。すれ違う人ですらない、ちょっと、気まぐれで興味をひいた、そんな程度のものだったのでしょう。

 けれど、けれども、それでいいのです。

 あなたはきっとこの道の先で、一つの結末に至るのでしょう。あなたの望むと望まざるとに関わらず。一つの答えを得るのです。

 あぁ、あなたの体温が憎らしい。

 血の通っていないような、それでいて雛のように温かい、あなたの体温が。俺を抱きしめてくれるあなたが。

 白いシャツから除くあなたの首筋の美しさが。

 俺を置いていくことに、一抹のさみしさを感じるあなたが。

「今までありがとう」

 掠れた声で、どこか慈愛のこもった瞳で、優しく両の手を俺の背に回すあなた。

「アレン、君は、俺の―――――――」

 そんなこと、分かっていました。

 けれど、あぁ、けれど。

「グレイ様、あなたは――――――」

 きっとこれは、最後の記憶。

 俺とあの人の、最後の時間。

 遠い未来で、俺が思い出す、あの人との、最後の夜の出来事。




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