三
翌日、シエラ達は同じ宿に泊まる旅人や商人にナールへ向かう街道の話を聞いていた。
やはり昨日クラウドが言ったように、山脈を迂回して街道を通るのが最善らしい。商人たちの馬で最短ルートを通ると、早ければここから三日でナールに入れるとのことだった。シエラ達は同じ宿に泊まる商人らの紹介で、今日中にこの町を出る商人の一行のもとに向かった。
「おぉ、いいぜ。今日これから出発するし、ナールまで乗せるだけならお安い御用さ」
筋肉隆々で浅黒いバイソンと同い年の商人が、にっと笑った。
「ほんとか!! 助かるぜ!」
「ありがとうございます」
バイソンとその商人が固く握手していると、馬車や荷車の奥から一人の男が出て来た。年は四十代後半といったところか。頭にバンダナを巻いてタンクトップから出ている二つの腕は同じく筋肉隆々だ。どうやらこの商団の組長らしい。
「そういうことなら、あっちの奥にある馬車に乗ってくれ。乗り心地は保証できねぇけどな」
「いいえ、本当にありがとうございます。助かりました」
「いいってことよ」
シエラ達は案内されるままに馬車に案内された。馬車は商人たちが使っているものとは少し異なり、ドアの取っ手や窓の縁に細やかな装飾がなされていた。
「じゃあ、動き出すときにまた声をかけるから、中に入って待っててくれ」
そう言われて、シエラ達は大人しく馬車の中に乗り込んだ。
「それにしても、気を遣ってもらったかしら。こんな綺麗な馬車なんて」
「そうだよね、この馬車他のに比べて随分綺麗だったし、この椅子もふかふかだし……」
なにはともあれ、これでナールに無事に入国できるなら問題はない。シエラ達がそう思っていると、少しずつ外のあわただしさが増していく。最後の積み荷確認などが行われているのだろう。
しばらく馬車の中で待っていると、ドアをノックされた。一番ドア側に座っていたバイソンが扉を開ける。
馬車の扉を開くと、フードで顔を隠した男が立っていた。
「いやいや、お待たせしてすみませんね」
違和感に気付くのとほぼ同時に、男が馬車に足をかけて乗り込んできた。その瞬間、体がどっと重くなり、馬車の扉が閉められた。
「どうもみなさん、お久しぶりです」
フードを取り去った下から出て来たのは、グラベボ=ビーンだった。しかしその驚きを口にする間もなく、シエラ達は魔法陣の光に呑み込まれた。




