ここから、何度か死にます
【これタイトル『救済黙示録』だっけ? 合ってる?ww 知らん、あとで他の奴らに聞いとこ
とりま主人公とかいう奴ちょいウザいな
ったく、なんちゃら最強とかそういうキーワード付いてる主人公ってなんでどいつもこいつも性格あんなんなんだよ
てか今回ここで何年くらい腐るんだろ
そもそも神格ものだし今回のライブ進行終わったら二度と再生されないのに(-_-)
こんなの誰が読むんだよww文字数合わせて管理者記録まで書けとかマジ意味わからんチッ
こんなん人手の無駄遣いだろ、ほんと上の連中頭固すぎ
まあでも~~久々に現代ファンタジーに来たら故郷思い出していいな~~~
しばらくここで楽して休暇気分でも――】
――ブツッ!
「……」
「柏葉さん? 何してるんですか? 何をそんなに……?」
「……」
さすがに悪態をつかずにはいられない。
……こいつ、頭おかしいのか?
(……まさか、まさかこれ……)
そうじゃないと思いたかった。
だが、ひどく嫌な仮説が一つ、じわじわと頭に浮かんできた。
(これ、前任管理者って……)
真面目さなんて1グラムも感じられないこの口調。
あの短い文章だけでもわかる、軽薄な性格。
そして、「現代ファンタジーに来ると故郷を思い出す」という一文。
すべての手がかりが、明らかにある一人の人物を指していた。
俺は黙って片手で目元を覆った。
「えっ!? 柏葉さん、大丈夫ですか? 頭痛、本当にひどいみたいですね……! 顔色すごく悪いですけど、何かあったわけじゃないですよね!?」
「……はい。大丈夫です。ちょっと昔の先輩を思い出しまして」
「え? 先輩ですか? こんなときに急に……?」
今度は嘘じゃなく、本当に頭がずきずきしてきた。
そうだ。認めよう。
今のこの状況では、この管理者記録は文字通り何の役にも立たない。くそ……。
「いえ、何でもありません。……少し休みましたし、そろそろ出発しましょう。まだ先は長いですから」
「え? あ、はい!」
こうなった以上、歩き続ける以外に道はなかった。
短い休憩を終えた結城を連れて、再び歩き出した。
そうして、さらに30分ほど歩いただろうか。
「うぅ、柏葉さん、ちょ、ちょっとだけ休んでいってもいいですか……? もうきつくて……」
(そろそろ体力も限界か)
さっきから疲れた様子を見せていた結城が、ついに体力が尽きたらしく足を止めた。
「すみません。はぁ、僕、足引っ張ってばっかりですね……」
「いえ。少し休んでいきましょう。ちょうど休もうと思っていたところですし」
「あ、ありがとうございます……」
どうせ一緒に動くしかないんだから、ここでパートナーにへばられたら俺にとってもいいことはない。
しばらく座り込んで息をついていた彼が、俺を見上げた。
「ところで柏葉さんって、もともと暑さに強いんですか? なんだかあまり疲れてなさそうだったので」
「……暑さ?」
そういうわけじゃなく、もともと管理者にはどんな状況でもシナリオを進められるよう、各種の天候耐性が自動で付く。
(……なんて説明までする必要はないだろうし)
「はい。暑さには強いほうです」
「うわ、羨ましいです。僕もそんなに暑がりなほうじゃないんですけど、今ここはめちゃくちゃ暑くて……」
平然としている俺と違って、一人で座り込んでいるのが気まずいのか、彼の顔にばつの悪そうな笑みが浮かんだ。
いや。この場合はあっちが普通なんだが。単に俺がおかしいだけで。
「そういえば柏葉さん、試験会場でスタンピードが起きたときも、すごくうまく対処してましたよね。こういうのって、生存能力が高いっていうのかな? ここで働くなら一番必要な才能じゃないですか」
「……うーん、まあ」
「実は僕、何でも勢いで押し切るタイプなんですよ。打たれ強さ以外は、これといった特技がないので、この先ちゃんと仕事をやっていけるか、ちょっと心配で……」
彼なりに深刻な悩みだったらしく、結城は少し浮かない表情を見せた。
意外だ。むしろ、かなり紙装甲っぽく見えるんだが。
「でも結城さんも、あの三次試験を無事に生き残ったからこそ、今ここにいるわけですし。そこまで心配する必要はないでしょう」
「そ、そうですかね? なんだか僕だけ足を引っ張ってる気がして……。ありがとうございます」
ともかく、この話を長引かせても特にいいことはなさそうだ。
適当に話題を変えようとした、そのときだった。
「……?」
考えるより先に、顔がそちらを向いていた。
目の前に広がるのは、四方で煮えたぎる溶岩と炎。
……そして視線が止まったのは、遥か向こうに広がる溶岩のただ中だ。
「結城さん。準備してください」
「え? えっ? 何を……?」
彼が戸惑った声で聞き返す間、俺は溶岩から目を離さないまま、ゆっくり二歩後ずさった。
そうだ。何十分も何事もなく、妙に静かだとは思っていた。
――ぐつぐつ……。
溶岩が煮えたぎる音が聞こえる。
そしてその音に混じる、異質な何かの気配。
――ブワッ――!
「……あ!? 溶岩から人が……!!」
真っ赤な溶岩の中から、ベチャッ、ベチャッと音を立てて何かが飛び出してきた。
姿を現したのは、人間。
いや、人間の形をした何か。
(……最初から地獄みたいだとは思っていたが、まさかこんなにわかりやすい答えだったとは)
ここがどこなのか、大体わかった。
「地獄道、その中でも八熱地獄です。結城さん。採用試験を通過されたんですから、大体どんなところかはご存じだと思います」
「じゃあここは……。……あ!」
「はい。仏教系の神話でしょうね」
仏教における地獄道。
その一つ、八熱地獄。
(以前、少しこっちの神格たちと仕事をしたことが、こんなところで役に立つな)
その名のとおり、ここは全部で八つの地獄に細分化されている。
だからここが正確にどこなのか確信するには、もういくつか手がかりが必要だった。
「じゃあ今あそこから出てきてるのって……地獄に落ちて罰を受けてる罪人たち……!」
「いいえ。獄卒です」
「えっ!?」
「生前に罪を犯して落ちた人間が、その罰を受ける場所ですから、当然、刑罰を科す獄卒がいるはずです。手に持っているものをよく見てください」
「あ、棍棒……! それに刀!」
ようやく結城も、超常体の姿をきちんと認識したようだった。
「うわあっ! すみません! 実は僕、筆記試験の成績ほんとギリギリで……!」
――ベチャッ! ベチャッ!
「……!」
そして、溶岩の間からさらにいくつもの火柱が噴き上がった。
(あっちが本物の罪人たちか)
獄卒たちと違い、今度は手に何も持っていない。
ただ。
『――!!』
相手を見つけるなり、凄まじい勢いで互いに襲いかかり始める。
武器一つない丸腰のまま、互いを殺さんばかりの死闘。
歯で噛みちぎり、鋭い爪で相手を引っかき、その体を貫きながら。
「ここが地獄道なら、ここにある神器は……」
「はい。真っ先に思い浮かぶのは、やはり閻魔大王でしょうね」
地獄道を治める最高権威。
死者の刑罰を決める神格、閻魔大王。
「その前に結城さん。もう一つ」
「はい!」
「痛みには強いほうですか?」
「……はい?」
獄卒たちが持っているのは、鉄の棍棒と刀。
そして目の前には、死闘を始めた死者たち。
こちらを見た死者たちは体を奇怪にねじ曲げ、そのまま刃のような爪を剥き出しにして近づき始める。
これらをもとに、一つの結論が導き出される。
「私たちはこれから、何度か死んでみます」
永遠の戦いと苦痛、死が繰り返される地獄。
等活地獄だ。




