↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【鑑定しか使えない】と追放された俺、鑑定結果を書き換えられるので拾ったボロ剣を伝説の聖剣にしました  作者: カクナノゾム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/100

第72話 門を叩き割りに来た魔王軍の先遣隊長を、折れた閂ひとつで自分の一撃で吹き飛ばした

 昨日、畑を食いに来た羽虫の大群を、壊れた風見鶏で北へ吹き飛ばした。


 峠の向こうには、黒地に白い角三本の旗が立っている。魔王軍の先遣だ。


 俺のスキル『鑑定』は、ものの価値を書き換えられる。書き換えた通りに、現物が変わる。


 その旗が、朝のうちに坂を下りてきた。


  § § §


 連れているのは二十ほど。鎧を着た魔物が、隊列も組まずに歩いてくる。


 先頭の一体だけが、頭ひとつ大きい。


 猪の頭に、鼻を貫く鉄の輪。肩まで毛が生えていて、鎧が肩からずり落ちそうになっている。


 担いでいるのは、樽ほどある鉄槌だ。


  § § §


 門の前で止まると、そいつは鼻輪を鳴らして笑った。


「人間の村か。名を聞いてやる」


「アシュ村だよ」


「覚えん。俺は先遣隊長ゴズだ。門を開けろ。開けねば叩き割る」


「開けたら、どうなるんだ」


「叩き割る」


  § § §


 ネロが柵の内側で鍬を握り直した。手は震えていない。


「レインさん。あれ、門ごと持ってくやつだ」


「だろうな」


「逃げるか?」


「逃げると、後ろの畑を踏まれる。今年の麦が入ってる」


  § § §


 デンが槍を突いて前に出た。錆びた鎧を縄で結んだまま、膝がわずかに笑っている。


「守備隊三十一名、門の内で待ちます」


「出るなよ。門の内でいい」


「出ませんとも。五年、出ずに守ってきた男です」


  § § §


 俺は門の下に落ちているものを拾った。


 昨日の風で外れた、木の閂だ。真ん中から折れて、二本になっている。


 六年ぶんの雨で、色が抜けて白い。


 枠が浮かぶ。


  [折れた閂]

  価値 銅貨0枚

  中央から破断・門を留める用をなさない


「じゃあ、書き換えるか」


 触れるのは価値の数字だけだ。名前は向こうが決める。


  § § §


  [折れた閂]

  価値 銅貨0枚

     ↓

  価値 銅貨8000000枚


 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。数字が勝手に繰り上がる。


  価値 金貨800枚


 枠が消えて、また浮かんだ。


  [返しの閂]

  価値 金貨800枚

  効果 この門を叩いた力を、そのまま叩いた者へ返す


  § § §


 白い木が、黒くて重い一本に変わった。


 持ち上げると、見た目より軽い。


 門の受けに差し込むと、かちりと音がして、それ以上動かなくなった。


 コハクが門板を指の背で軽く叩いて、垂れ耳を片方持ち上げた。琥珀の目をまん丸にして、指先を振っている。


「ご主人様。指が、押し返されました」


「軽く叩けよ。強く叩くと自分に来る」


  § § §


 ゴズが鉄槌を両手で構えた。


 肩の毛が逆立って、鎧の板が持ち上がる。


「開けぬなら、割る!」


「言っとくけど、やめたほうがいいよ」


「人間の忠告など聞くか!」


「そうだよね。聞かないよね」


  § § §


 鉄槌が振り下ろされた。


 門は、鳴りもしなかった。


 代わりに、ゴズのほうが後ろへ飛んだ。


 自分の一撃ぶん、まるごと返された。二十ほどの隊列を薙ぎ倒して、坂の途中まで転がっていく。


  § § §


 鉄槌は、柄が根元から砕けていた。


 頭だけが門の前に残って、土に半分めり込んでいる。


 ゴズが起き上がって、鼻輪を押さえた。


「……何をした」


「門を直しただけだよ」


「直しただと!」


「閂が折れてたからね。直したら、そっちが壊れた」


  § § §


 ダレンが杖を突いて、門の内から声だけ投げた。


「もう一度やるか。二度目は坂の下まで飛ぶぞ」


 ゴズは、やらなかった。


 手下を引きずり起こして、峠のほうへ下がっていく。


 途中で一度だけ振り返った。


「四天王が来る。この門ごと消える」


「その人らも、門は叩かないほうがいいよ」


  § § §


 残された鉄槌の頭を、ネロたちが六人がかりで転がしてきた。


 鉄としては上物だ。鋤にも、鍋にもなる。


 ハーグが皺の深い顔を上げて、それを撫でた。


「これで、鍬が何本できますか」


「四十本くらいじゃないか」


「では、四十人ぶん増えますな」


  § § §


 夕方、セシリアが門の受けを覗き込んでいた。


 顎を引かない立ち方のまま、扇の先で閂をつついている。


「これ、味方が叩いてもいけませんの」


「いけません。だから、みんなに言って回ってください」


「わたくしが?」


「声が一番通るので」


 言いながら、扇を開いて口元を隠した。耳の先だけが赤い。


「べ、別にあなたのためじゃないわよ」


  § § §


 その晩、門の内側に張り紙が出た。セシリアの字で「叩くな」と大きく書いてある。


 三十一人の守備隊と、三十人の元賊が、順番に読んでいた。


 折れて捨ててあった木の棒一本で、村の門が一度も凹まずに済んだ。悪くないよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。