↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【鑑定しか使えない】と追放された俺、鑑定結果を書き換えられるので拾ったボロ剣を伝説の聖剣にしました  作者: カクナノゾム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/97

第69話 俺を追放した男が、刃のない剣で襲いかかってきた

 昨日、賊の坑道を書き換えて、村から街道への近道を通した。


 賊だった三十人は、今は村で粉を挽いている。


 俺のスキル『鑑定』は、ものの価値を書き換えられる。書き換えた通りに、現物が変わる。


 その近道を抜けた先で、街道が止まっていた。


  § § §


 荷馬車が四台、数珠つなぎで停まっている。


 先頭の馬の前に、男が一人立っていた。


 背が高い。肩幅が、荷馬車の轅より広い。


 顔に布を巻いて、腰に鞘のない剣を、裸のまま帯に差している。


  § § §


「積み荷を置いていけ」


 声が、街道の斜面に反響した。


 太い声だ。普通に喋っているのに、怒鳴っているように響く。


 商人が荷台の陰で震えていた。


  § § §


 俺は近道の穴から出て、男の後ろに立った。


「一人か」


 男の肩が跳ねた。


 振り向く。布の巻き方が雑で、額から上が出ている。


 赤茶の髪が、後ろへ撫でつけてあった。撫でつけたまま、脂で固まっている。


  § § §


「……レイン」


「久しぶり」


 布がずれて、左の頬から顎まで、古い切り傷が出た。


 鎧は着ていない。革の胴衣が破れて、肩の縫い目が開いている。


 あの赤い鎧は、どこかで売ったんだろう。


  § § §


「なぜ、貴様がここにいる」


「この辺、俺の領地だからだよ」


「領地」


「荒地だけどな」


 ガイが、帯の剣に手をかけた。


 抜くも何も、最初から鞘がない。


  § § §


 その剣には、刃がなかった。


 真ん中から先が、丸ごとない。折れ口が、白く光るまで磨いてある。


 柄の赤い石は、三つとも欠けていた。


「それ、まだ持ってたのか」


「俺の剣だ」


「金貨四枚の量産品だよ」


「黙れ!」


  § § §


 ガイが、折れた剣を振り上げた。


 振り上げ方は、四年見た通りだった。大振りで、体が先に動く。


 俺は横に一歩ずれて、道端に落ちていた物を拾った。


 割れた馬蹄だ。荷馬車の馬が、さっき落としていったやつ。


 枠が浮かぶ。


  § § §


  [割れた馬蹄]

  価値 銅貨0枚

  中央から二分・打ち直し不能


「じゃあ、書き換えるか」


 触れるのは価値の数字だけだ。名前は向こうが決める。


  [割れた馬蹄]

  価値 銅貨0枚

     ↓

  価値 銅貨2000000枚


 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。数字が勝手に繰り上がる。


  価値 金貨200枚


  § § §


 枠が消えて、また浮かんだ。


  [踏み止めの蹄鉄]

  価値 金貨200枚

  効果 これを地に置いた者に向かって進む者は、そこから先へ足を出せない


 割れ目が閉じて、鉄が黒く艶を持った。


 俺はそれを、自分の足元に置いた。


  § § §


 ガイの足が、地面に張りついた。


 振り上げた剣はそのままで、体だけが前へ行かない。


 もう一歩、踏み出そうとする。膝が上がらない。


「なんだ、これは!」


「足止めだってさ」


「小細工を!」


「小細工だな。あんたのぶんの一歩を、俺が買ったってことだよ」


  § § §


 ガイが、剣を投げてきた。


 刃のない鉄が、俺の足元まで飛んで、からんと転がった。


 拾わない。


 コハクが穴から飛び出してきて、俺の前に立ちはだかる。垂れ耳が立って、尻尾が真っ直ぐ後ろに伸びていた。


 埃っぽい街道で、そこだけ日向の匂いがした。


「ご主人様に、なにするんですか!」


「下がってろ、犬っころが!」


「コハクです!」


  § § §


「鑑定なんぞ、何の役に立つ!」


 四年間、毎日聞いた台詞だった。


 街道で聞くと、思ったより小さく聞こえる。


 商人が荷台の陰から出てきて、俺のほうに頭を下げた。


「お領主様、こいつが三度目の」


「知ってます。もう終わりましたよ」


  § § §


 荷馬車が四台、ガイの脇を通っていった。


 通り過ぎるあいだ、ガイは一歩も動けないまま立っている。


 馬車の商人は、誰もガイを見なかった。見る価値がないという顔ですらない。ただ、見なかった。


 それが一番効いていたと思う。


  § § §


 最後の荷馬車が坂を下りたところで、俺は蹄鉄を拾い上げた。


 ガイが、支えを失ったみたいに膝をついた。


 立ち上がろうとして、途中でやめる。


 腹が、盛大に鳴っていた。


  § § §


「飯、食ってないだろ」


「……貴様に、施しを受けるくらいなら」


「受けなくていいよ。今日は帰る」


「待て」


「明日、村に来い。門は開けとくから」


  § § §


 俺は近道の穴に戻った。


 街道は、その日から一度も止まらなくなった。


 賊が三十人減って、頭が一人、道端に座っている。


 街道の脇に落ちてた馬蹄一枚で、荷が四台通った。悪くないよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。