↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【鑑定しか使えない】と追放された俺、鑑定結果を書き換えられるので拾ったボロ剣を伝説の聖剣にしました  作者: カクナノゾム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/96

第67話 賊のねぐらを突き止めて、手下を全員、鍋ひとつで寝返らせた

 昨日、書き換えた地図が、北の山にいる賊三十人を映した。


 頭は、そこから離れて一人で座っている。


 俺のスキル『鑑定』は、ものの価値を書き換えられる。書き換えた通りに、現物が変わる。


 朝のうちに、山へ入った。


  § § §


 連れは、コハクとダレンとルミナ。あとは、道案内のネロだ。


 セシリアは村に残った。残りたそうな顔で、扇を鳴らして残った。


「わたくしが行くと、話が国と国の問題になりますわ」


「それは面倒ですね」


「面倒なのよ。……気をつけなさい」


 言い終わりに、扇の先で俺の胸をとん、と突いた。柑橘の香りだけが、しばらく残る。


  § § §


 北の山は、崩れた鉱山だった。


 坑口の前に、雨よけの小屋がいくつも建っている。


 建っている、というより、板を立てかけただけだ。


 風が抜けるたび、板がばたばた鳴っていた。


  § § §


 最初に見つかったのは、こっちだった。


 見張りが二人、槍を構えて出てくる。


 構えたはいいが、槍の穂先が上下に揺れていた。


「と、止まれ! ここは」


「縄張りだろ。聞いたよ」


「分かってんなら帰れ!」


  § § §


 ネロが前に出た。


「俺だ。ネロだよ」


「……お前、逃げたんじゃなかったのか」


「逃げてねえ。麦の粉を挽いてた」


「粉」


 見張りの喉が、はっきり鳴った。


  § § §


 小屋の間から、人が出てきた。


 一人、二人と増えて、あっという間に二十人を超える。


 どいつも同じ顔をしていた。頬がこけて、目だけがぎょろりと大きい。


 コハクが俺の後ろで、垂れ耳を伏せた。


「ご主人様。ここ、においが薄いです。ぜんぶ薄いです」


  § § §


 小屋の真ん中に、鉄の鍋が伏せてあった。


 持ち上げると、底が抜けかけていて、湯垢が黒くこびりついている。


 中に、干からびた麦粒が三つ残っていた。


 三十人で、これを分けていたらしい。


 枠が浮かぶ。


  § § §


  [底の抜けかけた鉄鍋]

  価値 銅貨1枚

  底面に亀裂・煮炊きに耐えない


「じゃあ、書き換えるか」


 触れるのは価値の数字だけだ。名前は向こうが決める。


  [底の抜けかけた鉄鍋]

  価値 銅貨1枚

     ↓

  価値 銅貨900000枚


 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。数字が勝手に繰り上がる。


  価値 金貨90枚


  § § §


 枠が消えて、また浮かんだ。


  [尽きぬ鍋]

  価値 金貨90枚

  効果 底に残った物が、鍋いっぱいまで増える・一日一度


 亀裂がふさがって、黒い鉄が厚くなった。


 麦粒が三つ、底で震えている。


 震えて、ぶわりと膨れ上がった。


  § § §


 鍋の縁まで、麦が盛り上がった。


 湯を足して、ルミナが火にかける。


 銀の髪をうしろで結んで、袖をまくって、細い腕で杓子を回していた。


 湯気が立って、山じゅうに麦の匂いが広がっていく。


「塩は、持ってきました」


「持ってきてたんですか」


「山に行くと聞いたので。……何もない場所だと思って」


  § § §


 三十人が、鍋を囲んだ。


 器がないので、板の切れ端で受けている奴もいた。


 誰も喋らない。喋る暇がないらしい。


 二杯目を配ったあたりで、年かさの男が座り込んで、頭を抱えた。


「三月ぶりだ。まともに、腹に入ったのは」


  § § §


「頭は、食ってないのか」


「頭は食う。俺らの前では食わねえけどな」


「隠れて食うのか」


「奥の坑で食ってる。人に見られると、負けた気がするんだと」


 ダレンが、隈の濃い目で鼻を鳴らした。


「変わっておらんな。宿でも、一人で肉を食っていた」


  § § §


 年かさの男が、俺の顔をまじまじと見た。


「あんた、村で粉を挽かせてるって領主か」


「そうだよ」


「俺らを、どうする」


「畑が余ってる。鍬なら、いくらでもある」


「盗んだんだぞ」


「働いたら返せるだろ。麦は増えるものだから」


  § § §


 誰かが、板の切れ端を放り出して立ち上がった。


 その男が坑口のほうへ向かって、大声を出した。


「頭ぁ! 俺ら、下りるぞ!」


 坑口は、真っ暗なままだった。


 返事はない。


  § § §


 三十人が、順番に得物を地面に置いていった。


 置いた得物は、そのまま置いていくことにした。持って下りると、村が驚く。


 最後にネロが、坑口を一度だけ振り返った。


「あの人、出てこねえよ」


「出てこないな」


「腹が減ってねえんだ、あの人は」


  § § §


 山を下りる列は、思ったより長かった。


 ルミナが、遅れた奴の背に手を当てて歩いている。


 賊が三十人と、増える鍋が一つ。


 村の畑に、鍬を持つ手がまた増えた。


 誰も殴らずに、ねぐらを空にできた。悪くないよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。