表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【鑑定しか使えない】と追放された俺、鑑定結果を書き換えられるので拾ったボロ剣を伝説の聖剣にしました  作者: カクナノゾム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/55

第33話 暁の剣、Fランクの依頼で失敗した

 昨日、崖崩れの現場で、ルミナの杖が十数人を救った。


 俺は瓦礫を綿毛みたいに軽くしただけだ。目立ったのはルミナだった。


 俺のスキル『鑑定』は、ものの価値を書き換えられる。書き換えた通りに、現物が変わる。


 翌朝、ギルドの掲示板前が、少し騒がしかった。


  § § §


「暁の剣、また失敗したってよ」


「今度は何」


「街道の護衛依頼。魔物の襲撃で怪我人出て、治療が間に合わなかったらしい」


 冒険者たちが、他人事のように話している。


 コハクの耳が、ぴくりと動いた。


「ご主人様、あの人たちのことです」


「聞こえてる」


  § § §


「Fランクの雑用しか受けられないって聞いてたのに、それも失敗か」


「聖女が抜けたんだろ、あそこ。回復役いないんじゃ、そりゃ厳しい」


 ルミナが、ぴくりと肩を揺らした。銀の毛先を指で挟んで、そのまま止まる。


「わたしの、せい……」


「違う」


 俺は、はっきり言った。


「杖を壊したのはガイだ。お前のせいじゃないよ」


 ルミナが、小さく頷いた。だが、目は伏せたままだった。


  § § §


 その日、ギルドから俺たちにも依頼が来た。


「近くの牧場で、家畜が原因不明の病気に。獣医も匙を投げたそうです」


 リサが、書きながら依頼書を差し出す。事務的な声のまま、そばかすの顔だけが少し笑っていた。


「Fランクじゃないんですか、それ」


「Fランクですけど、あなたなら」


「行きます」


 ルミナが、依頼書を覗き込んだ。


「家畜の治療なら、わたしも役に立てそうです」


「頼りにしてる」


 銀の髪の隙間で、ルミナの耳が少しだけ赤くなった。両手が、胸の前で合わさっている。


 牧場に着くと、羊たちが力なく地面に伏せていた。


  § § §


 日に焼けた牧場主が、青い顔で説明する。帽子を脱いだり被ったりを、話しながら繰り返していた。


「一週間前から、急に。餌も食べなくて」


 羊の一頭を、鑑定してみた。


 枠が浮かぶ。


  [病んだ羊]

  状態 原因不明の疫病・進行中


「原因不明、か」


 ルミナが、杖を構えた。


「わたしがやります」


  § § §


 無詠唱の光が、羊の群れに降り注ぐ。


 一頭、また一頭と、羊たちが立ち上がっていく。


「な、治った……!」


 牧場主が、腰を抜かしそうになった。


 俺は、羊小屋の隅に落ちていた古い水桶を拾った。


 枠が浮かぶ。


  [ひび割れた水桶]

  価値 銅貨0枚

  水が漏れる


「じゃあ、書き換えるか」


 名前には触れない。なぞるのは価値の数字だけだ。


  [ひび割れた水桶]

  価値 銅貨0枚

     ↓

  価値 銅貨20000枚


 銅貨100枚で銀貨1枚。数字が勝手に繰り上がる。


  価値 銀貨200枚


 枠が消えて、また浮かんだ。


  [清浄の水桶]

  価値 銀貨200枚

  効果 注いだ水を常に清浄に保つ・病を予防する

  永久に壊れない


「おっ、病気予防つきだ。今日はいい引きだったな」


 桶が、淡い青に輝いた。


  § § §


「これに水を汲んでおけば、もう病気にはならないはずです」


「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます」


 牧場主が、何度も頭を下げた。


 羊たちが、元気に草を食み始めている。


 コハクが柵から身を乗り出した。耳が上を向いて、尻尾が横木を叩いている。


「わふっ、みんな立ってます!」


「桶のおかげと、ルミナのおかげだ」


「二人のおかげ、です」


 ルミナが、羊の頭を撫でながら小さく笑った。


  § § §


 王都に戻る途中、噂話がまた耳に入った。


「暁の剣、依頼主に賠償請求されたらしいぞ」


「そのうち、ギルドから資格剥奪じゃないか」


 俺は、聞こえないふりをした。


 ルミナが、一瞬だけ足を止めた。


 だが、すぐにまた歩き出した。振り返りはしなかった。


  § § §


 帰り道、コハクがルミナの手を握った。


「ルミナさん、また助けました!」


「今度は、わたし一人じゃないです。ご主人様が桶を」


「二人でやったってことだ」


 ルミナが、初めて自分から笑った。伏せがちだった目が、このときだけ上を向いている。


 夕暮れの道を、三人並んで歩いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ