表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【鑑定しか使えない】と追放された俺、鑑定結果を書き換えられるので拾ったボロ剣を伝説の聖剣にしました  作者: カクナノゾム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/50

第31話 聖女が、暁の剣を抜けてきた

 昨日、俺とコハクは迷宮の最下層を突破した。


 石ころを終焉の一石に書き換えて、迷宮の核を消し飛ばした。ギルドから「迷宮最強」の称号ももらった。


 俺のスキル『鑑定』は、ものの価値を書き換えられる。書き換えた通りに、現物が変わる。


 ギルドに顔を出すと、受付のリサが書類から目を上げた。栗色の髪をまとめ直しながら、そばかすの浮いた顔を寄せてくる。いつも平坦な声が、このときだけ低くなった。


「レインさん、聞きました? 暁の剣のこと」


「また何かあったんですか」


「祭のあと、依頼がほとんど来なくなって。今はFランク相当の雑用しか受けてないみたいです」


 信用って、金貨より減るのが早いんだなぁ。


「残ったメンバーは?」


「めっきり減ったって話です。ルミナさんも、最近は姿を見ないって噂です」


 嫌な予感がした。


  § § §


 宿に戻ると、コハクが扉の前で誰かと立ち話をしていた。


「ご主人様、お客さんです」


 銀の髪を肩で切りそろえた女が、こっちを見て頭を下げた。細い肩が、法衣の下でさらに薄くなっている。


 毛先が、動くたびに揃って揺れる。純白の神官服が、余計に体を細く見せていた。


 淡い緑の目が一度だけ上がって、すぐ伏せられた。


「ルミナ?」


「突然、ごめんなさい……」


 いつもの謝り癖だ。だが、顔色がいつもより悪かった。ゆっくりした喋り方が、今日はもっと遅い。まばたきの合間に、視線が下へ落ちる。


  § § §


 部屋に通して、話を聞いた。


 コハクが、お茶を淹れて持ってきた。


「ルミナさん、どうぞです」


「ありがとう、ございます」


 ルミナが、湯気の立つカップを両手で包んだ。


 少しだけ、肩の力が抜けたように見えた。


「パーティ、抜けようと思って」


「暁の剣を?」


「うん」


 ルミナが、膝の上で手を握りしめた。指が細くて、握ったところが白くなる。


「祭のあと、ガイが荒れてて。依頼が来ないのも、装備が偽物だったのも、全部人のせいにするようになった」


「人のせいって」


「わたしの回復魔法が遅いから被害が増えたとか、そういうこと。事実じゃないのに」


 声が震えていた。


  § § §


「もう、無理だと思った。今日、装備の点検してたら、これ」


 ルミナが、鞄から杖を取り出した。


 白木の杖、先端の宝珠が割れている。


「わたしの杖。ガイが、稽古の的にした」


「的て」


「苛立ちのはけ口。当たり所が悪くて、割れた」


 枠が浮かぶ。


  [聖女の杖(宝珠破損)]

  価値 銅貨0枚

  効果 回復魔法の威力を上げる(現在、機能停止)


「ひどいな、それは」


「もう、直らないと思う」


  § § §


「じゃあ、書き換えるか」


 久しぶりに、他人の目の前で言った台詞だった。


 触れるのは価値の数字だけだ。名前も効果も、俺には選べない。


  [聖女の杖(宝珠破損)]

  価値 銅貨0枚

     ↓

  価値 銅貨6000000枚


 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。数字が勝手に繰り上がる。


  価値 金貨600枚


 枠が消えて、また浮かんだ。


  [再生の聖杖]

  価値 金貨600枚

  効果 回復魔法の威力を十倍にし、詠唱を無詠唱化する

  破損しない


「よかった。いいのが出たよ」


 杖が、真珠色に輝いた。


 割れていた宝珠が、内側から光を宿して塞がる。


 ルミナが、杖を両手で抱きしめた。


「こんな、こんなに綺麗に……」


「壊されない杖なら、もう的にされても平気だ」


「もう、その必要もないから……」


 淡い緑の目に、涙が滲んだ。瞬きのたびに、それが睫毛で震える。


 すれ違ったとき、石鹸とラベンダーの匂いがした。


  § § §


「わたし、あなたのパーティに、入れてもらえますか」


「うちにパーティって呼べるほどの体裁、あるか?」


「コハクさんと、三人で十分です」


 コハクの耳が、跳ね上がった。尻尾が椅子の脚を叩いている。


「わふっ! ルミナさん、一緒に来るんですか!」


「よろしくお願いします……」


 両手を胸の前で合わせて、頬がほんのり色づいていた。


「歓迎です! あ、でもご主人様の口癖、最初はびっくりするので慣れてください」


「口癖?」


「じゃあ、書き換えるか、です」


 ルミナが、杖を見つめて、小さく笑った。


「もう、聞きました。とても、綺麗な言葉だと思います」


 コハクが、ルミナの荷物を覗き込んだ。


「ルミナさんの部屋、隣にしましょう! ご主人様、いいですよね」


「俺に聞くことか、それ」


「宿のことなので」


 ルミナが、くすりと笑った。


「賑やかな宿は、久しぶりです」


 笑いながら、銀の毛先を指で摘まんでいる。


 窓の外で、王都の鐘が鳴った。


 壊された杖が金貨六百枚になって、ついでに仲間が一人増えた。悪くないよね。


  § § §


 ちょっといいな、と思われましたら評価して頂けると嬉しいです!


 お話の続きが少しでも気になる方は是非ブックマークを!


 レビュー、コメントも大歓迎です!

 どうかお気軽にコメントしてくださいね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ