005:登録料
男たちの視線がエレスティーナへと向いている。だが声を掛けたりする人物は居なくて、多くが遠巻きに見ているだけだ。受付カウンターには数名の女性が座っているのが見えるから、それだけで荒野に花が添えられているようだ。
これだけの花が並んでいるのだ。今さらティナが一人増えたところで気にもしないだろうとエレスティーナは開き直って、手前の女性に声をかけた。
「登録をしたいんですけど」
すると後ろで、わっと男たちの歓声があがった。指笛なんてのも聞こえる。「女だ」とか「可愛いぞ」とか聞こえる。新人になるエレスティーナの値踏みをしていたらしい。見られる分にはどうでもいいが、声を掛けてきたら殴ってやろうとエレスティーナは決めて無視をする。
そこに受付嬢が「うるさいですよ!」と一喝。するとたちまちギルド内が静かになった。受付嬢はただの花ではないようだ。
そんな彼女がエレスティーナに視線を戻してにっこりと微笑んで言った。
「登録料が必要です」
「トウロクリョウ?」
受付嬢が笑顔で答える。
「はい。大銅貨3枚ですね」
エレスティーナはポケットから小銭を取り出す。少し大きめの銅貨が1枚と小さめの銅貨が3枚あるだけだ。それを受付嬢に見せる。
「足りてない……ですよねぇ?」
受付嬢がニッコリ笑う。
「そうですね。足りてらっしゃらないようですね」
あうう。どうしよう。
エレスティーナは受付嬢に問う。
「足りない場合はどうしたらいいでしょう?」
「稼いでください」
「仕事……」
「冒険者ギルドで仕事を受けるには登録が必要です」
「無慈悲!」
がっくりと肩を落とすエレスティーナ。後ろでは野郎どもの笑い声が聞こえる。
「どうしようもないじゃない!」
すると受付嬢が、わざとらしく今、思い出したと言わんばかりに棒読み口調で独り言を喋り始めた。
「そう言えば近場の酒場で調理補助と給仕の仕事を募集してたなぁ。身分は問わないとも言ってたなぁ」
「おっ、マジで! それです。ありがとう! さっそく行ってみます!」
エレスティーナは踵を返して、その場を去る。すると後ろの方で受付嬢から「頑張ってくださいねぇ」と応援をされたのだった。
そこは木造の3階建ての、ありふれた宿だった。そこに突撃する。
「ティナです。雇って下さい!」
エレスティーナは、さっそく雇ってもらう。身分証もない。紹介者も居ない。成人したての小娘を雇う酒場兼任の宿屋。どんなブラックな職場かとヒヤヒヤしたが意外に真っ当だった。
「給料は三食の賄いと宿付きで日当は小銅貨1枚。売りをするなら場所代を払いな!」
「売りはしません!」
というわけでエレスティーナは名を改めてティナと名乗り、食堂で調理補助と給仕の仕事を頑張ることとなった。




