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お嬢様は拳でドラゴンを倒したい  作者: 月城キナ


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11/12

011:それぞれの動機

 オークの死体のある場所から少し移動して再び野営をする。オークの死体は穴に埋めた。穴を作ったのは案の定シエラだ。眠そうにしている彼女に頼むのは可哀想だったが、あんなデカい死体を放置もできないからしょうがない。


 パチパチと薪が燃えているのを間に挟んで、ティナは真向かいに座るジンへ話しかける。兎にも角にも彼がどんな人間かを知る必要があると感じたからだ。信用できるのかどうかを。


「さすがにこの時間帯になると、だいぶ涼しくなるね」

「あぁ。昼間はまだまだ暑いけどな」

「ジンさんは何故、冒険者を?」

「さん付けはいらない。呼び捨てでいいよ。冒険者になった理由は一旗揚げるためだ。ティナさんは?」

「わかった。私のことも呼び捨てでいいよ。冒険者になった理由はドラゴンをぶん殴るためだね」

「え? ドラゴンをぶん殴る?」

「そう」

「何か恨みでもあるの?」

「まさか。見たことすらないよ?」


 するとジンの眼が驚きで見開かれた。


「じゃあ何で?」

「生物として最強だから」


 ジンは心底理解できないという表情をしている。


 ティナはジンに尋ねる。


「ジンの一旗揚げるっていうのは男の子だとよくある理由だね。成り上がるぞぉって?」


 単純にそう思ったが理由を聞くと以外にもしっかりと納得の理由があった。


「あぁ。そうだな。うちは……俺の先祖のルーツがシャポネっていう場所にあるって言ったろ?」

「うん」

「そこで豪族って言う支配者層をやっていたらしいんだ。でも権力争いで負けて西にある豊かなこの土地へ逃げてきたんだそうだ」

「なるほど。それでこの地で再び支配者層にぃって?」

「まぁそうだ。でも家のことがなくても、やっぱり男なら一度は夢を見るよな。自分の腕で成り上がるっていう夢を」


 そう言って彼の足元には剣……刀かな? 反りのある鞘に入った剣を撫でる。


「ふふ。なるほどね」

「ティナは? 成り上がってやるぞぉってのはないの?」

「私はドラゴンを殴って倒せればそれでいいかな?」

「そ、そうなんだ……」

「最強って憧れない?」

「そりゃあ、憧れるけど……なれるの?」

「わかんない。だからやってみたいの。で、ジンは? 何か成り上がるために道筋みたいなのはあるの?」

「それなぁ……どこかで手柄を立てればいいんだろうけど……なかなかなぁ」

「そうだね。今は平和な時代だもんね」


 成り上がりたい人たちにとっては不遇な時代なのだ。


「家を興したい……かぁ。おっきな夢だね」

「そうか? 男なら大抵は持つような夢だろ」

「そうかもね。うぅん、ならさ。いっそ私と一緒にドラゴン退治してみない?」

「ドラゴンスレイヤーかぁ」

「そう。倒してそれを献上すれば功績としては充分でしょ?」

「あっはっは。なるほど。たしかにそうだ。ティナの夢に付いていくのも悪くはなさそうだ」


 深夜遅くまでお喋りをして過ごしたティナだったが、夜が明けるちょっと前に交代で仮眠を取った。ティナが先でジンが後だ。で、ジンが寝ている間にティナは朝食の準備。そのためには水が出せるシエラに起きてもらわないといけない。


「シエラ。起きて。朝だよ」

「うぅ~。ティナ姉たん……」


 まだ少し寝ぼけているようだ。


「悪いんだけど水を出してもらえるかな。あとトイレ用に穴も掘って欲しいんだけど」

「トイレ……シエラも、おしっこするぅ」

「はいはい。じゃあまずシエラからね」

「あい」


 シエラに草葉の陰で魔法の穴を掘ってもらい、ティナとケダマとで見張りに立つ。トイレって何気に危険なんだよね。シエラ、ティナの順で用を足して穴を軽く埋める。


 後でジンも使うかもなので。


 その後はやはりシエラに水を出してもらい朝食を作る。食事と言っても昨日食べた携帯食料なんだけど。


 水を温めているとジンが起きてきたので、トイレ用の穴の場所を教えて、朝食を摂ってもらった。


「今日はどうするんだ?」

「うん。さすがに最初から二泊は想定してないから今日はもう帰るよ」

「そうか」

「でも途中でツノウサギが出たら狩るけどね」

「了解した」

「そこまで付き合わなくても大丈夫だよ?」


 自分の狩りに戻っていいよって意味でジンにそう告げるが彼は「気にしなくていいよ」と言った。最後まで付き合ってくれるらしい。


「そうだ。なら昨日のオークの魔石。あれはジンにあげる。護衛料ってことで」

「別にいいよ」

「良くないよ。私が気にするの」

「……いいのに」

「よくないよ。はい」


 そう言って少し強引に魔石を渡す。


「それでティナの気が済むなら貰うけど」

「うん」


 これで少しは借りが返せたかな。それでもまだ彼の持ち出しのほうが多いかもなとティナは思った。


「そうだジン?」

「ん、何?」

「何か私にして欲しいことがあったら言ってね。出来る限りは協力するから」


 するとジンが苦笑い。


「気にしすぎだよ。俺がやりたくて協力しているだけだから」

「そうかもだけど……」

「どうしても気になるっていうなら、そうだな。後で鍛錬に付き合ってよ」

「鍛錬?」

「そう。ティナも結構やるんでしょ?」

「それは……まぁ」


 筋肉も武術も一日にしてならずだ。


「一人だとどうしても怠けがちでさ」

「あぁ。それは分かるかも。誰かとやる方が捗るよね」

「そうそう。だからどうかなって」

「わかった。それなら一緒にやろう」

「了解」


 すると、「シエラもやるぅ」と言ってティナの膝の上にダイブしてきた。


「シエラも筋肉、やる?」

「筋肉する!」


 意味わかってるのかなぁ。


「大変だよ?」

「大丈夫だよぉ」

「よし。じゃあシエラはまずは体の基礎づくりからだね!」

「うん!」


 こうしてティナ達は街に帰った後の計画を立てたのだった。

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