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お嬢様は拳でドラゴンを倒したい  作者: 月城キナ


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12/12

012:鍛錬

 街に帰るまでに、一匹のツノウサギを狩ることに成功。街に帰ったのはまだ朝と呼べる時間帯だったので、ジンとは互いに寝泊まりしている宿の場所を教えあって、そこで別れた。


 いったん宿に帰って、それから冒険者ギルドへ向かうのだが、途中の屋台で軽食を摂った。この後に訓練があって夕方までやる予定だ。


 冒険者ギルドには訓練場があって一日中開放されている。そこにはすでにジンが来ていた。


「ジン」

「やぁ。さっきぶり。じゃあ模擬試合からしない?」

「えぇ。ぜひ」


 二人がトレーニングメニューを決めていた横でシエラがティナの服の裾を掴んだ。


「シエラはぁ?」

「うん。シエラは少しのあいだ見ていてね。観るのも稽古だからね」

「わかったぁ」


 ティナが拳を構え、ジンが木剣を構えて模擬試合を開始した。最初はお互い様子見。それから少しずつスピードを上げていった。技と技の応酬。久しぶりの感覚でティナは楽しくて、ついつい力が入る。そこにジンが隙を見つけて打ち込んできたところでティナの負けで模擬試合は終了した。


「残念。負けちゃった」

「あはは。力が入っちゃったみたいだね」

「楽しくてつい……」

「そうだね。俺も久しぶりの対人戦で楽しかったよ」

「くぅ。悔しい!」

「また、やろう」

「うん!」


 さて、いつまでも私達ばかり鍛錬はしてられない。シエラも退屈だろうと彼女を振り返った。


「シエラぁ。訓練しよっかぁ」

「うん!」


 こうしてシエラも交えて筋肉を鍛え始めた。ちなみに精霊のケダマは丸まって寝ていただけだ。当然と言えば当然だが……見た目が猫なので実にらしいなと思った。


 訓練を終えたティナ達は酒場へと移動。ちなみに食事がメインの健全な酒場だ。そこで夕食を摂りながら今後の事を話した。


「ジンはこれからどうするの?」

「俺は護衛の仕事をしようと思ってるよ」

「おぉ! 護衛。ミスったときの罰則がきついのに大丈夫?」

「あぁ。命をかけて依頼人を守る仕事だ。やりがいがあるな。でもティナだってやってるだろ?」

「私?」

「シエラを護衛してながら冒険してる。同じことだよ」

「あぁ、なるほど。確かに、そうかも。でも気をつけてね?」

「うん。ありがとう」


 隣ではシエラがモキュモキュと煮物を食べている。


「美味しい?」


 シエラがコクリと頷いた。


「でもニンジンも食べなきゃ駄目だよ?」


 するとシエラの眉間にシワが寄った。嫌いなのだろう。わかりやすいな。


「今すぐ食べられるようになれとは言わないけど、少しずつでいいから食べてね?」


 コクリと頷くシエラだったが、ティナの皿にニンジンを移動してきた。


「一切れは食べなさい」


 そう言って小さな一切れだけ返す。するとシエラが口を尖らせた。その様子を見ていたジンが笑う。


 ティナは何かこういう時間って良いなと思った。


 食事を終えてジンと別れた後、ティナはシエラを連れて宿へと帰ってきた。一階の酒場ではいつものように男どもが飲んだくれている。


 よし。今日、この後の時間は魔導書を読む時間にあてようと決意する。目指すは身体強化魔法だ!


 ちなみにシエラは眠そうなのでティナは彼女を抱き上げる。


「ティナぁ……」

「はいはい。もう今日は寝ようね?」

「うん」


 ティナは2階へと上がった。ベッドにシエラを寝かせた後は暗くなり始めた部屋のランプに明かりを灯し本を読み始め、時に実践してみる。身体強化魔法が使えればオークだって倒せるかもしれないからだ。


 そんな思いを込めてティナは勉強と修行を頑張る。


 それからの毎日はツノウサギ狩りをして過ごした。そして狩っては毛皮を剥ぐということを繰り返し、魔石は冒険者ギルドに売って生活費の足しにした。


 そして日常では日課の鍛錬の他に、シエラとともに魔力増強と操作の訓練も行った。


 これは瞑想と魔力操作をして消費を繰り返すのだ。これが地味にキツい訓練でティナは一人だったらとっくに投げ出していたかもしれないと思った。


 やることは単純だ。魔力で精緻な模様を描くだけ。これは古来より伝わる訓練法だそうで、レベルに応じて描くべき模様が本に記されているのでそれを覚えこんで頑張った。


 とっても神経を使う訓練だ。でも基本は大事の精神で頑張って続けた。


 12日目にはジンが護衛の仕事から帰ってきたので、一緒に鍛錬をしたりして汗を流した。筋肉を鍛えあえる仲間が居るのは良いものだ。


 季節は少しずつ移ろい、夏の暑さがだいぶ和らいできた。そろそろ秋になろうかという頃。


 宿屋の2階の部屋で魔力を全身に巡らせて身体を強化する。しかしあっという間に魔力が底をついて全身疲労でバタリと倒れた。


「これは……」


 戦闘がどうとかというレベルですらない。


「何がダメなん?」


 ケダマに聞いみた。


「人の魔力の使い方は知らん。そっちは爺さんの領分だった」


 にべもない。魔法ならシエラかなと視線を向けると、にぱっと笑った。


「ティナ姉。見て見て!」


 そう言って、ぴょんとジャンプをした。最初は軽くだったので小さなジャンプだったが、2回目は更に高く。3回目に至っては天井付近まで跳んだ。


「ぶっ!」


 思わずティナが吹き出した。どうみても5才児のジャンプ力じゃない。というか着地の際に転けて額をゴチンとぶつけた。ジャンプが高すぎて着地に失敗したのだ。


「わぁあああ!」


 泣き出すシエラを宥めながらも、何が起きたのか混乱しているとケダマが見たままの感想を言ってくれた。


「足だけを強化したみたいだな?」

「足だけ……」


 魔力が回復するのを持って、もう一度試してみる。ちなみにシエラはジャンプすることには懲りたらしい。2度目は見せてくれなかった。


 その後。瞑想して魔力の回復を待つ。総量が少ないからか30分も待たずに回復した。


「下半身だけ魔力で強化」


 意識するだけで何とか、下半身を魔力で強化ができた。全身をくまなくやるよりは時間が伸びた……。単純に倍以上に。しかしだ。


「下半身だけ強化してもなぁ」


 踏み込みは強化されるし良いことではあるが、これでは上半身が壊れてしまう。シエラに視線を向ける。


「エルフ並に魔力があればなぁ……」


 まぁでも無いものをねだってもしょうがない。あるもので頑張らないといけないのだ。ティナは手の平をグーパーグーパーとしてみる。シエラが隣に来て真似っ子を始める。しばらく二人でグーパーグーパーとしていると、ドアがノックされた。ドアを開ければそこにはジン。


「昼飯は?」

「まだ。って、そっか。もうお昼なんだ」

「あぁ」


 三人と一匹で階下へ向かう。席について昼食を頼みしばらく黙々と食べる。ある程度食べ終わったところでジンが尋ねてきた。


「部屋が少し騒がしかったようだが、何をやっていたんだ?」

「あら。隣の部屋にまで聞こえてた?」

「あぁ。ちょっとだけな」

「そっか。実はね、魔力による身体強化魔法を試してたんだ」


 正直に話す。するとジン。


「闘気じゃなくて? 魔法の方?」


 聞き慣れない単語が出てきた。


「え。闘気って何?」

「え?」

「え?」


 驚かれたことに驚く。二人で驚いている横でシエラも真似っ子してる。まったくもう。この子ってば!


 ほっぺたをぷにぷに突く。するとニヘラと笑う。


 話が逸れた。


「んで。闘気って何?」


 もう一度尋ねる。するとジン。


「あぁ。こっちではあまり知られていないのかな? 別の呼び方なのかな? 爺さんが言ってたんだ。そういう戦闘力を高める方法があるって。その闘気。拳は岩をも砕き、肉体は獣の牙すら通さない。風の如く駆け抜け、大地をも割る、だってさ」

「魔法と違うの?」

「明確に違うって言ってた。これは人の技だと。シャポネにもエルフやドワーフ。獣人がいたらしいけど彼らは使えなかったって」

「どうやったら使えるの!」

「うぅん。臍と性器の間に丹田と呼ばれる場所があって、そこで力を練るんだ」

「丹田は知ってる。でも力を練るって、その力はどうやって知覚できるの?」

「そこは鍛錬の際に意識するしかないね」

「ジンはできるの?」

「できる。ただ、まだまだ練り方と乗せ方が未熟でね。あまり変化がないんだ」

「乗せ方って何?」

「うん。練った闘気を身体に行き渡らせる技だね。基本にして奥義だそうだよ」

「その技術。教えてもらえるかな!」

「いいよ」

「いいの!」

「うん。二人で試行錯誤し合えたほうが早く強くなれそうじゃない?」

「やった!」

「じゃあ今日の鍛錬は闘気の使い方でいいかな?」

「押忍! お願いします!」


 するとシエラも真似っ子。


「おしゅ! おねがいしましゅ!」


 するとジン。


「あはは。シエラは魔法の訓練だね。エルフは闘気が使えないからね」


 こうして私たちの鍛錬が始まる。

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