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駄菓子屋100円紛失プチ事件

 アスファルトから湯気立つ本日。私と穹ちゃんは図書館へ行った帰りに駄菓子屋さんを発見し、道草を食っておりました。

「杏子ちゃん、これ美味しそう。大きいから一緒に分けよう」

 穹ちゃんは自分の身体とあまり変りのない大きさのふ菓子を抱えて瞳を輝かせておりました。

「大きいわね。そんな大きさのふ菓子初めて見たよ」

「私も。ワクワクするよね」

 ふ菓子をもふもふしている穹ちゃんは、とても涼しげでした。そんな穹ちゃんの周りには気付くと、小学生の子供たちが群がっておりました。細かく言いますと、男の子四人に、女の子が三人です。

「それ一人で食べるの?」

「お腹壊すよ?」

「お姉ちゃん何年生?」

 穹ちゃんへと質問が投げ掛けられます。

「わ、私は大学生よ。19歳!」

 そう答えます穹ちゃんの姿は、小学生低学年の子が意地を張り、高学年だと言い張っている様子に良く似ておりました。

「え〜嘘だよ。お姉ちゃんちっちゃいもん」

「な!ちっちゃいって言うな!」

「穹ちゃん、抑えて」

 穹ちゃんの外見といたしましては、148cmの細身で、ブカブカのロリータファッションの完璧な幼女でございます。

「こらこら。お姉ちゃんを揶揄うもんじゃないよ」

 騒いでおりますと、店の奥から小柄なおばあ様が出て参りました。

「すみません、騒がしくしてしまい」

「構わないよ。若い子は騒がしいくらいが丁度いいのよ」

 おばあ様は太陽のように微笑まれました。

「おばあちゃん、これ頂戴」

 小学6年生かと思われる少年が喉を擦りながらやって来ますと、そこそこの愛想でそうおっしゃり、カウンターへとさくら大根と練飴を置きになりました。

「はいはい、合わせて45円ね」

 少年はポケットを(まさぐ)りますと、100円を取り出しました。

「はい。50円からでお願い」

「はい、お釣りの5円。またいらっしゃいね」

 少年はポケットに小銭を詰め、軽く手を振り外へと駆け出して行きました。

「彼はよく来られるのですか」

「ええ、毎日。毎回同じ物を買っていくのよ。よっぽど好きなのね」

 おばあ様はそう言いますと、小銭箱を広げ、先程の小銭を入れまして、帳簿と共に確認作業へと入られました。

「あら、100円玉が無い」

 おばあ様はそう言いますと、帳簿と小銭箱を何度も交互に見合わせます。

「やっぱり足りないわ」

「盗まれたの?」

 あどけない声で少年が申しました。

「う~ん、おばあちゃんが間違えちゃったのかも。まあいいわ、100くらい」

 そう言いますとおばあ様は、少年の頭を優しく一撫でしました。ですが表情はとても悲しげです。この様な表情を見ておりますと、心が痛んで参りまして、私は何か手がかりがないか辺りを見回します。すると、カウンターの隅に小銭の山を見つけました。

「おばあ様この小銭の山は」

 おばあ様は一枚ずつ数えますと『ピッタリ100円分よ』と申されました。

 私は一つの考えへと至りました。

「何方か、先程の少年に聞いて来てはくださいませんか。100円を両替したか」

「どういう事?」

 おばあ様は心底不思議がっておりました。

「彼、来たときに喉を触っておりましたので、喉が渇いていたのではないかと。それで、自販機で買おうと思い至りましたが、お菓子を買ったので自販機で買えるお金がなかった。それでそこに置いてあった100円と両替した、のではないかと。如何せん、私は彼が出るまでそこの棚を見ておりましたので、憶測の域を出ないのですが」

 暫くしますと少年が6年生少年を連れ戻って参りました。

(けん)ちゃんがお金替えたって」

「ごめん、言えばよかったね」

 おばあ様は頬を膨らませ『まったくよ!焦ったんだからね』と可愛らしく申されました。

「泥棒とかじゃなくてよかったね」

 帰り道、穹ちゃんの天使のような声が耳を癒します。

「本当ね。ただの言葉不足で良かったわ」

「でも、よっぽど喉が渇いてたんだね。報告し忘れるって」

「ね〜」

「私も喉が渇いてきちゃった。杏子ちゃん、奢って」

 穹ちゃんにそう言われますと私も弱いです。

「しょうがないな〜。そこの自販機で良い?」

「うん。ありがとう」

 そう言いますと穹ちゃんは抱きついてきました。

 この日飲んだジュースは過去一甘く感じました。

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