エピローグ
それから、新田様は刑事様と共に警察車両へと乗り、行ってしまわれました。
「何で米沢さんを候補から外したの」
翔子が尋ねてまいりました。
「新田様の両手の指先に跡があったの。剃刀を力強く握った跡が。新田様、わざわざ持ち手を変えたのは、愛の証明ってところかな」
「拗れた愛情だね」
「そうだね。でも、分からなくはないよね」
翔子はクスクスと笑い、もう一つ尋ねてまいりました。
「田尻はあれがメチル酒だって知ってたのかな」
「知ってたと思うよ。でも軽んじてたってところだと思う。巴様も勿論分かってた上で飲んだと思う。田尻様はお客様だからね。中毒症状が出ないことを祈って飲んだんだと思う。だから、新田様の動機である恋云々はなかったと思うのよね。田尻様の所業にたいする巴様の嫌がり様は、本物のようだったから」
「詰まり無駄だったと」
「無駄ではないと思うよ。本人の中ではちゃんと意義のある行為だったのだから。でもまぁ、殺人に意義なんてないけどね」
「でも今日はプライベートだったんだよね。それもまた、客だから?」
「さあね。断り切れなかったのか、多少の好意があったのかは分からない。人の事なんて、分からないよ。全部私の憶測。それがちょこちょこ合ってるだけ」
翔子はムッと頬を膨らませました。
「無責任だね」
「そうだね」
ハハハッと笑い、見つめ合います。
「アイス食べに行こうか」
「そうね。あっ、穹ちゃんも誘わないと」
「もう呼んであるよ。さ、行こ。ちゃんと奢ってよ」
「勿論」
この日食べたアイスは、外の気温との差もあり、とても冷たく感じました。




