表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メビウスの廻廊  作者: 南方
。.。:+* ゜ 第三章 ゜ *+:。.。
50/54

童話:~メビウスの女神~


 小さな子供の手には童話が握られていた。


「おばあさま、これよんで」  

「あら、『メビウスの女神』じゃないの、懐かしいわね。私も子供の頃によく読んだのよ」


 老婆はそれを受け取ると、丁寧にページをめくった。


 ――ある所に、それは雄々しい神が住む緑豊かな楽園(エデン)がありました。

 そのエデンに住む神の名はメビウス。

 メビウスは、たくさんの女神に愛されていましたが、どの女神のことも好きではありませんでした。

 ある日、メビウスが人間界に仕事へ向かうと、農作物を育てている人間の女がいました。

 美しい銀色の髪をなびかせたその女の名はディーナ、メビウスは一目見て女を気に入りました。

 年に一度だけ大地を綺麗に緑豊かに整えに行く仕事をしながら、メビウスはディーナへ愛を囁きます。


「お前は本当に美しい」


 けれど、ディーナにその声は届いていませんでした。

 そんなある日、メビウスは一人の女神に言いました。


「私を愛しているならディーナを連れて来い」


 女神は聞きました。

 

「人間の女をどうするのですか」


 メビウスは女神の問いに答えます。


「永遠に私の物にする」


 女を自分の大切な場所に閉じ込めてしまうのだと、今まで一度も見たこともない愛しそうな目をしてメビウスはそう言いました。

 それを聞いた女神は嫉妬に狂いました。

 人間とは思えぬ美しきディーナを見つけた女神は、銀色に輝く糸のような髪を引き抜き、細く美しい手足を斬り刻み、豊満に実る胸を潰し、全てを蛇の沼へと捨てたのです。


 女神はメビウスに嘘をつきました。

 

「あの女はメビウス様を嫌って死んだ」 


 それを聞いたメビウスは怒り、自慢のエデンを焼き払い、目の前にいる女神を殺しました。

 メビウスは諦めきれず、創造の神であるプテアの元へ行きました。

 悲しみに満ちた声で、メビウスはディーナを生き返らせるためにどうすればいいのかと聞きます。

 それを聞いたプテアの神は言いました。


「愛しているなら待ち続けることだ」


 メビウスはディーナが生き返ることを待ちます。数百の夜と、数千年の朝を過ごし、延々と待ち続けました。

 そんなある日、女神の一人がメビウスの子を生みました。

 その子は美しい銀色の髪を持つ男の子でした。

 メビウスは一目見て気に入り、名を「ディール」と名付けました。

 その子が育つと、驚くことにメビウスがかつて愛したディーナと同じ身姿に成長したのです。

 そう、長い月日を得てメビウスは、ようやく〝ディーナ〟を手に入れたのです。

 メビウスは息子を自分のエデンの奥深くに閉じ込めました。

 鎖で足を縛り、毎夜ディールを愛し、決して離すことはありませんでした。

 メビウスはようやく愛しい者を手に入れた満足感に酔いしれますが、むせび泣く息子のディールは言います。


「父上、こんな生活は嫌です」

「お前も、私を嫌うのか!」


 拒絶されたメビウスは、自分の手で息子を殺してしまいました。


 そして言います。


「また待てばいい……」


 そう、また待てばディーナに似た子が生まれ、今度こそ自分を愛してくれると思ったのです。

 またメビウスは長い年月を待ちました。

 けれど、ディーナは生き返って来ませんでした。

 毎夜、思い出すのは息子であるディールと過ごした幸せだった日々、どうしてもディールのことが忘れられないメビウスは、時の神であるタウールの元へ行きました。


「我が息子が生きていた時間へ戻して欲しい」

「対価を払うことになるがいいのか?」


 どんな対価を払うのかも聞かず、メビウスは言います。


「時を戻してくれるなら何でも持って行くがいい」

「分かった」


 時の神の力で息子ディールと過ごした時まで巻き戻ったメビウスは、息子のディールを抱き寄せます。

 けれど、その息子はメビウスが抱きしめた瞬間、身を捩り舌を嚙み切って自害してしまいました。

 どういうことなのかと、時の神に問います。


「愛欲を対価にもらった。お前は決してその子に触れてはいけない」


 メビウスは息子を愛することが出来ないという対価を払ってしまったのです。

 絶望に打ちひしがれたメビウスは、それでもまた時間を巻き戻して欲しいとお願いしました。

 今度は燃えるような愛を心の奥底へ沈め、決して誰にもこの愛を悟られないようにしました。

 こうしてメビウスはエデンの奥深くに身を隠し、遠くからディールを見つめるだけの日々を過ごしたのでした。


 ――おしまい。


「ねえ、おばあさま。神様はディーナとディール、どっちが好きだったのかな?」


 子供の質問に、「さあ、どっちだろうか、神様は欲張りで我儘だからねぇ……、どっちも好きだったのかもね」と老婆はそっと本を閉じたのでした――――。



メビウスの女神~END.



この童話は兄であるパトリックがレヴィンを諦めない限り、永遠とループするよっていう示唆だったりします。

レヴィンとパトリックは童話の親子の生まれ変わりのようなものです。

メビウスの神は息子を見守ると決めたように、パトリックもレヴィンを諦めない限り、レヴィンは死んでしまう。

まあ、とどのつまり結局はメビウスの呪いのお話しだったわけです。

自分は息子を愛せないのに、お前達が愛し合うのは駄目だろ! 見たいな呪いです。(どんな呪いなの……)

結局、パトリックがレヴィンへの愛を封印したことでループは終わりを迎えました。

めでたし、めでたし。

童話に関しては本当はプロローグとして最初に投稿するか迷っていたので、投稿をしないつもりだったのですが、せっかく書いたので最後に投稿させて頂きました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ