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水野司の世界の声  作者: すずはるな
水野司と世界の声
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第68話 開戦開始

 少し時間がさかのぼり、開戦直前。


 ロビンは赤軍、青軍の両軍を左右に分けて展開させていた。


 少し離れた高台では、六千人の騎士たちが円を描くように陣を敷いていた。

 中央には、大きな物見やぐらが一つだけ組まれていた。


 やぐらと呼ぶには簡素な造りだったが、戦場を見渡すには十分だった。


 やぐらの上にはロビンと数名の騎士たちが立ち、開戦の時を待っていた。


 乾いた風が吹き抜け、眼下では十万もの異人たちが静かに蠢いている。


 敵は一万。


 数だけ見れば勝負にならぬ戦力差だった。


 だが、ロビンは決して油断していなかった。


 前回の戦いでは、たった千の敵に対してこちらは一万もの被害を出している。


 しかも向こうは軽傷程度。


 結果だけ見れば完敗だった。


 だが、今回は違う。


 前回は突然の襲撃だった。


 しかし今回は、十分な時間をかけて兵を集め、訓練も施してきた。


 十万の異人たちは、武器の扱いも陣形の動きも叩き込まれている。


 一部には訓練期間が一週間ほどの者もいたが、ロビンは大した問題ではないと考えていた。


 数で押し潰せばいい。


 それだけの兵力差がある。


 赤軍の長槍隊はまだ練度に不安が残る。


 だが青軍は違う。


 何年も訓練を積み重ねてきた異人たちだ。

 精鋭と呼んでも差し支えない。


 左翼へ展開する青軍を見ながら、ロビンは静かに目を細めた。


「敵陣へ使者を送りました」


 背後の騎士の報告に、ロビンは短く頷く。


 やがて、大部隊から一騎の騎士が離れていく姿が見えた。


 しばらくして使者が戻る。


 それを合図にしたように、敵陣がゆっくりと動き始めた。


「所詮、知性を持たぬ獣の群れか。反乱軍は相変わらず兵数が心許ないようだな」


 ロビンが淡々と呟く。


 その言葉に、周囲の騎士たちは侮蔑混じりの笑みを浮かべた。


「まったくです、大隊長。連中は相も変わらず、突撃しか能がないのでしょう」


「我が大盾隊と長槍隊が、すでにその突進へ備えていることすら理解できておらぬのでしょう」


 別の騎士も小ばかにしたように口を挟む。


「所詮は異人と獣の寄せ集め。あの程度の知性では、我らに逆らう愚かさも理解できぬのでしょうな。大人しく従っておればよかったものを」


 周囲から同意の笑い声が漏れる。


 しかしロビンだけは笑わなかった。


 紫の片目を細めたまま、ただ黙って戦場を見下ろしている。


 眼前で始まろうとしている戦いを、いつも通りの突撃だと静かに見定めていた。

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