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第6話 うらぶれた元騎士と落ちこぼれ魔王娘 再戦2

「いざ尋常に……勝負だ!」

「うむ、異議はなし!」


 元騎士と魔王の娘の決闘は、再び死闘を極める結果となった。

 大剣と鉤爪交わして火花飛び散る剣戟は、両者は譲らず一進一退の攻防戦。


「魔王の娘よ、膂力(パワー)と両拳の鋭さが上回っているな!」

「いやオマエこそ、剣筋が断然と鋭くなっているぞ!」


 両方とも斟酌汲まない廉潔の士なので、お互いがお互いに褒め称えた。

 双方の勝負は一向につかず。時には休憩を取り、水を飲み、服を着替える。

 前回の轍は、決して踏まぬ。だが失敗を恐れず。徹頭徹尾に貫く所存だ。


「我が友・アイオロスよ、我に力を与えたまえ!」


 死力を尽くすべくアルベルトは、親友の名を借りてそう叫んだ。


「いくぞ、我が友よ……風魔法『エア・スラッシュ』!!」


 突如にして大剣に纏った荒々しい疾風とともに、凶刃の如く鋭い剣筋から放たれた。

 風の賢者より伝授された風魔法と自らの剣術よって、拙いながらも我流で編み出した合体技を繰り出したのだ。


「ぬぅぅ……っ! なんて威力だ……だがッ!!」


 魔王の娘・アイナは、両腕をクロスして防御し踏み堪えると、疾風を抉じ開けるように引き裂いた。

 しかしアルベルトは、虚を突いたアイナの懐まで飛び込んで、大剣と鉤爪を擦り合わせ火花を散らす。


「貴様、やるな!」

「オマエこそ、かなりの手練れ!」


 双方、狂気を宿った瞳と交わすと、片方の口角を上げてニヤリと笑う。

 両雄並び立たず。人類と魔族との存亡を賭けた史上でも稀な大激戦であった。

 やがて陽が落ちて、月が昇るも、尚も脇目も振らず、一心不乱に鬩(せめ)ぎ合う。

 だがしかし――人間にも限界があり。時が経つにつれて、徐々に天秤が傾き始めた。


「……がはっ」


 月が沈み、夜明けを迎えると、ついに決着はついたようだ。

 息急き切っても、両足で大地に立ったは、魔王の娘。

 地へ膝をついて、両手から落剣したは、アルベルトであった。


「俺の……負けだ」


 激闘に激闘を重ねた末、アルベルトは遂に力尽く。

 もはやこれまでかと、首を差し上げる様に観念した。


「さあ、俺を殺すがいい」


 疲労困憊のアルベルトは、目を瞑って大の字となった。

 しかし困り顔の魔王の娘は、腰を落として胡坐をかいた。


「……? どうした?」

「いや、前もそうなのだが……動けん」


 こう言った魔王の娘・アイナは、芯の底から力なく疲れ切っていた。

 空腹に耐えかねて、身体が言うことを聞かない。殺そうにも殺せなかったのだ。


「またもや腹が減ったのか」

「丸一日かけたので、とてもひもじいのだ」

「そうか……それは不憫だな」


 腹が減っては戦(いくさ)が出来ぬ。

 同様に豪快に腹の虫が鳴き続いていた少女の前では、尚のこと。

 なればとアルベルトは、無理を承知で己の腰を上げた。


「仕方ない。料理をしよう。まずはそれからだ」


 アルベルトは、温厚篤実であると同時に、義理堅い男だった。


「料理とは、食材を使うヤツだな?」

「そうだ。美味くするヤツだ」

「ふぅむ……今回もそれでいいのか?」


 魔王の娘は、申し訳なさそうに上目遣いをした。

 素朴であり、純粋であり、素直であった。


「仕方なかろう」


 甘受したアルベルトは、情深く器が大きい男であった。


「では、オマエを殺すまで待つことにしよう」


 二人とも自らの意思で、片付け始末と野外調理の準備を開始する。


「まずはオレが竈を作り直すか」


 アルベルトは、堅実であった。


「では、我は岩清水を汲んでこよう」


 アイナは、律儀であった。


「今回の料理とは、あり合わせなものでよいか」

「それでいい」


そういうことになった。

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