徒然ない旅 鶴岡編④
突然だが、私は成人するまでゲームというものに、人生でほとんどふれた事がなかった。
比喩ではなく、本当にゲームのコントローラーというものに触れた事さえ、友達の家に行って付き合いで数度、そんな機会があったぐらいだ。
そんな私が三十路を前にして毎朝、艦〇れに興じているというのだから、世の中というものは分からない。
閑話休題。
今回、鶴岡へ行くにあたり初日、私は駅で切符の変更を行った。
行きはそのままだが、帰りの切符の行き先を、最寄駅から会津若松へと変更したのだ。
もともとは別々の切符で行くつもりだったのだが、『まとめた方が安上がりでは?』と思い至り、僅か数百円のために切符の区間を変更したのだった。
というわけで、タイトルは鶴岡編で切符も通しなのだが、今回向かうのは全く真逆の方向にある会津若松だ。
同行者もいない、なんなら会津にはしょっちゅう行くので、観光すらしない、まさにいつもの私の旅の模様をここに書き記す。
普段なら家から新幹線の駅まではバスで行くのだが、あいにくとこの日は、市中マラソンで交通規制が敷かれており、バスが朝9時過ぎまで運休となっていた。
郡山に朝10時までに着きたかった私は、久しぶりに最寄りの駅まで歩いて、そこから電車を乗り継いで目的地へ向かうことにした。
駅には、タマに使う時より多い人数の客が電車の到着を待っていた。
たぶん私と同じなのだろう、車内も日曜の朝にしては若干お客の数が多かった。
天気は雲一つない快晴で、吾妻連峰が美しく朝日に照らされていた。
しかし私は景色はほとんど目もくれず、手持ちのカメラの点検と準備に神経を集中させていた。
今回の旅の目的は、珍しい列車の撮影である。
他の用事などない、その列車を撮ったらトンボ帰りするという極めてシンプルな旅だ。
郡山で海苔のりべんを買うこともなければ、会津で下車してソースカツ丼を食べに行くこともしない。
旅の相棒は自販機で買った生茶と、カロリーバーである。
そう遠い場所でもないので、1時間もすれば最初の目的地である郡山へと到着した。
他の客がそれぞれの予定や目的別に降りていく中、私はホーム端へと移動して、列車が休んでいる留置線の向こうに止まっている列車へとカメラのレンズを向けた。
ひなび×SATONO会津探訪号
それが、今回の撮影対象である。
ガチガチの撮り鉄とかではないので、沿線で撮ったりはしない。
ちょっと駅で止まっているのを、何枚か撮るだけである。
『SATONO』は会津を中心に、いつも走っている観光列車だ。
しかし『ひなび』は違う。
この列車は普段は盛岡や青森を中心に走る観光列車で、今回はその2つの列車が連結して走るという珍しいツアー企画列車であった。
私以外にも、この珍しい列車にレンズを向けるギャラリーは多く、ホームは大盛況といってよかった。
しかも、今回はそれだけでは済まなかった。
この列車を撮っていると、ホーム向こうに丁度真っ白な車体に赤い線を引いた列車が入ってくるのが見えたのだ。
あれは!!
私は目的の列車の撮影もそっちのけで、そちらの列車の撮影へと向かった。
来たのは『East-iD』という列車で、分かりやすく言えばドクターイエローだった。
そう滅多に見られるものではなく、数か月おきにJR東日本管内のいろいろな路線の線路や架線の状態などを走りながら検査する。
10日おきぐらいに走る新幹線のドクターイエロー以上に、遭遇するのが難しいレア度の高い列車であった。
もうお腹いっぱいなので、このへんで帰ろうかとも思ったが、切符が勿体ないので予定通り会津へ向かうことにした。
目的の列車は時間通りに、満面の笑みを浮かべるツアー客たちを乗せて郡山駅を離れていった。
私はそのすぐ後に出る、快速の会津若松行きへと乗り込んだ。
なんとこの列車、郡山は後に出るが、終点の会津若松へはツアー列車より先に着くという優れた列車なのである!
しかし、会津若松での撮影スペースは限られており、おそらくこの列車にも、私と同じようなことを考えている『追っかけ』が居るであろうことは容易に想像できた。
まあ、私の場合は記録さえできれば良いので、あまりガツガツいかずに、肩の力を抜いてやろうと考えていた。
道中で追い抜きがあるはずなので少し楽しみにしていたのだが、昨日までの疲れが出たのが熟睡してしまい、いつの間にか会津若松へと到着していた。
肝心の列車だが、楽に撮ることができた。
というか、降りてきたツアー客を除けば、撮っているのは私ぐらいだった。
肩透かしを食らった気分だった。
列車は長く警笛を鳴らし、終点である喜多方へ向けて会津若松を出ていった。
こうして、私の今日の目的はあっけなく終了した。
時間は昼。
あと1時間もすれば、いつもならSLばんえつ物語がくる時間なのだが、今日は折悪く沿線火災で大幅な遅れが出ているらしく、2時間前に到着しているはずの普通列車がまだ県境にいるという状況らしい。
人生諦めが肝心なので、私はさっさと退散することにした。
旅の目的は完遂したが、今日の『やりたい事リスト』は、まだ残っていた。
私はカメラをバッグへ仕舞う傍ら、その奥にある存在に、柄にもなく胸の高鳴りを感じていた。
さあ帰ろう、今日の『やりたい事』をやるために!
冒頭にも書いたが、私はここ数年までゲームというものに慣れ親しんだことがなかった。
つまるところ、ゲームセンターにさえ私は今までほとんど入ったことがなかった。
せいぜいが、どういった場所なのかと何度か、冷やかしで入ったことがある位だ。
しかし今回は違う。
3年ほど前に、私の人生史上初にして唯一のブラウザゲームとして始めた艦〇れの、アーケード筐体なるものが私の家の近所にあることが判明したのだ。
すでに2度にわたる偵察を済ませており、今日この日を迎えるためにメル〇リで〇娘カード一式を揃えていた。
それを、今回は持ってきていた。
操作の仕方などについては、攻略動画を見ていた(というか、これを見てアーケード版の存在を知った)ので、あとはぶっつけ本番である。
ただし、旅行後なうえに給料日前で金がないので、使えるのは500円までだ。
ゲームセンターでAIM〇カードというものを購入する。
これで、個人のゲームデータをセーブしてくれるらしい。
さっそく300円が消えたので、残り200円。
ただアーケード版艦〇れは、初回のみ無料らしく少し得した気分になった。
ゲーム編成は、ブラウザ版でお気に入りの編成をそのまま採用した。
結果は…
ヒドいものだった。
ほとんど飛行機と魚雷の力で敵を打ち倒したようなものだった。
他の攻撃が一切当たっていないばかりか、被弾して損傷ばかり増すという、かなりどうしようもない結果で、私の初アーケードゲームは幕を下ろした。
ようは、惨敗である。
まあしかし、大きな学びはあった。
これは、ハマったらダメな奴だ、と。
今後は1か月に1回ぐらい、遊園地に行くような気持ちで1日使う金額も1000円位にとどめるようなやり方がいいかもしれない。
今回使用した6枚のカードと、いまだ未使用の40枚強のカードを手に、私は家路についた。




