徒然ない旅 鶴岡編③
今回の鶴岡の旅の目的は、母所望の加茂水族館に行ってクラゲを見ることである。
湯の浜温泉に泊まった親子2人は、朝日が昇ると同時に目を覚ました。
時刻は4時半にすらなっていない。
ホテルの大浴場は夜間、閉まっており開くのは5時以降。
まだ時間がある。
ついでに言えば、湯の浜温泉から加茂水族館に行くバスは10時ごろ。
私は、この空いた時間を少し有効に使おうと思った。
三宝寺に行こう! …と思ったけど、やめておく
三宝寺に、の瞬間に昨夜の母の鬼形相が復活した。
行ったらアカンやつである。
今日は旅のメインディッシュに行く日だし、そんな日に何もわざわざボロボロの電車や古い寺を見に行くこともなかろう。
と、自分に言い聞かせる。
昨日は鶴岡市内で少しずつアレコレと飲み食いしたせいで夕飯があまり入らず、夜ご飯にと思って買っていたおにぎりが残っていた。
消費期限を5時間ほど過ぎていたが、誤差の範囲だろう。
親子そろって、湯の浜温泉の和室の一室でおにぎりの袋をバリッと開ける。
私が最初にあけたのは、郡山駅名物『海苔のり弁』風おにぎりだった。
食べた瞬間、しっとりとした海苔と中に具のように入った昆布が、のり弁らしさを前面に押し出してきた。
うまい!
うまい、けどコレ3つで弁当1個分と思うと、地味に割高な気がする。
これならフツーにオカズ付きの、ノーマルな海苔のりべんを買った方がお得な気がした。
美味しかったが、今後買うことはなさそうなおにぎりだった。
次にソースカツ丼風おにぎりというものに手を延ばす。
何のことはない、ソースカツをサンドイッチのように海苔ご飯で挟んだ、オニギラズみたいなおにぎりだった。
うまい!!!
これはフツーに美味かった。
値段も他のおにぎりと大差なく、ボリューミー。
これは良いものを買った。
私の今後の旅のお供に、ソースカツ丼風おにぎりの文言が加わった。
ほかに、ホテルの近くにあるファミマで買ったサラダやチャーハンなども食べ、中々に腹も膨れた。
時間は6時前。
部屋の鍵は一つなので、先に母を朝風呂に行かせて私は起きたばかりの布団に再び寝転がり、スマホゲームで時間をつぶした。
30分ほどして、母は体中を真っ赤にして戻ってきた。
どうやら湯が相当熱かったらしい。
私はスマホゲームが途中だったので、もう少しやってからと布団の上でゴロゴロしながら時間をつぶS。
そうしている内に時刻は7時を回った。
ゲームの育成も午前の分が大体終わったので、私も温泉へと向かう。
ちょうどほかの温泉客は朝食の時間らしく、温泉には私の他に誰もいなかった。
軽くシャワーで汗を流した後、チャポンと足から湯船に入る。
あっっっっつっっ!???
まるで湯船が、飯坂温泉のように熱かった。
これ43度以上あるのではなかろうか?
母が体を真っ赤にするわけである。
昨日はあんなに入りやすかったのに、これはどうした事か。
しかし私は温泉に入りたい。
そうだ、くじけてはダメだ。
一度決めたことは最後までやり通せと、だれか偉い人がいつだったかに言っていた気がするじゃないか!
今度は慎重に、つま先からそーっと湯船につかる。
あーっとジジくさい声を上げ、全身が湯船につかる。
入ってみると、それほど熱さは感じなかった。
日本海からそよぐ爽やかな朝風が、湯の熱さと相まって心地いい。
とはいえ湯が熱くて、長居はできそうになかったが。
私が湯から上がって客室へ戻ると、母はもう身支度を整えつつあった。
バスまでまだまだ時間があるが、せっかくなので湯の浜温泉やその海岸線を歩いて回りたいという。
天気は雲一つない快晴で、気温もちょうどよい。
昨日私は歩いたが、夕方と朝ではまた趣が異なるので、その申し出には大賛成だった。
湯の浜温泉までは、昨日も歩いた廃線跡を辿った。
昨夜はちっとも気づかなかったが、熊注意の看板の下には、ずんぐりした猫が何匹もたむろしていた。
お前たち、クマに襲われないのか?
そんな心配をよそに、猫様はふてぶてしく看板の陰に横たわり、丸々とした体を休めていた。
朝の時間という事もあってか、昨日同様に人通りはまばらで、砂浜へ出ても、昨日みたいな釣り人すら見かけなかった。
まさに砂浜を親子で2人じめ!!
おしむらくは、快晴にもかかわらず遠くの景色がガスっており、遠くに見えるはずの鳥海山がボンヤリとしか見えていなかった。
ちょうど庄内空港を飛び立ったジェット機がバンクして、私たち親子の真上を飛び越えていく。
バスまであと1時間半。
折角なので、このままバスが来るまで歩いてみることになった。
海がきれいだなー
金沢って集落かー
兼六園に行ってみたくなってきたなー
ようこそ、かもすい かー
えっ、かもすい!?
何という事か、ホテルから2時間ほどブラブラしていたら、バスに乗る間もなく目的地である加茂水族館に着いてしまっていた。
せっかくなので、近くにそびえていた灯台に上って、乗るはずだったバスを見送る。
土曜日という事もあってか、駐車場には車が続々入ってきて、お客が入っていくのが見えた。
私たちも参戦せねば!
加茂水族館に入ると、私たちの真後ろに神主や法被を着た人たちが一緒に入ってきた。
何事だろうと思っていると、ロビーで突如として獅子舞が始まり、そこにいる人たちすべての頭をかじり始める。
どうやら、近くの春日神社という場所で近く祭りがあるらしく、その興行にやってきたらしかった。
わたしも厄払いとして、甘んじて頭をかじられる。
これで、昨日引いた吉のおみくじが大吉になったような気分になった。
加茂水族館はクラゲが有名だが、実は併設されたレストランでは、クラゲを食べることができるのだ。
これについて事前に下調べしており、11時のオープンと同時に親子で別のものを注文し、仲良くシェアして堪能した。
頼んだのはクラゲラーメン、クラゲ御膳(20食限定)、クラゲ刺身。
いろいろな味付けのクラゲ料理を楽しむことができた。
ちなみにあとで分かることだが、クラゲ料理は腹にたまらず、わりとすぐにお腹がすく事になるのだが、この後は乗り物に乗るぐらいなので、特に問題はなかった。
肝心の水族館は、私にとっては1年ぶり。
先日リニューアルをしたと聞いて、少しワクワクしていたが、どこがどう変わったのか、ついぞ分からなかった。
母もクラゲ以外はパパっと見るに止めていた。
そして、念願のクラゲとご対面であった。
そこからは、動画を撮ったり写真を撮ったり、解説をじっくり読んだりと、前半コーナーの快速ぶりが嘘のように鈍足になった。
バスまで2時間半。
クラゲを十二分に堪能した母は、最後のコーナーのアシカには目もくれず、手前のショップにあるガチャガチャでクラゲスノードームを回していた。
どうやら以前に広島の宮島で買ったものと同じで、カプセルの中にキットが入っていて、自分で作るタイプのようだ。
これは家に帰ってから作ろう。
ミュージアムショップでは、レーザーカットされたクリスタルガラスのクラゲを買った。
これは、去年買うのをやめてから、ちょっと後悔していたものだったのでとてもうれしかった。
うちにある秘密兵器と合わせれば、実によく光ってくれるだろう。
ムフフッ
母も私も大満足で、この旅を終えた。
帰り道はそろって寝ており、ほとんど何も覚えていない。
特にドンデン返しがあったとか、落とし穴とかオチがつくこともなく、家に帰りついたのだった。
余談だが、スノードームは底が透明になっており、下から光で照らすとこれまたきれいに光ってくれた。
そう、〇リアで買ったLEDライトスタンドで照らせば!
クラゲのクリスタルガラス共々、時間経過で七色に美しく色が変わっていく様は、まさに幻想的というほかなかった。
実にいい旅だった。
こうして親子2人の旅は、幕を下ろした。
しかし、私の旅は3日目に続くのであった。




