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六属性を持つ最強転生者は、感情という魔法を知らない  作者: 猫眼鏡博士
最終章

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第95話 最終決戦・開幕

遂に魔王との戦闘開始ですね。

 長い沈黙の後、ついに魔王が動いた。

 玉座から離れて、広間の中央に向かって歩いた。急いでいなかった。ただし、方向が変わっていた。対話の位置ではなく、戦闘の位置に向かっていた。


「話は終わりか」

「終わりではない。言葉では届かないこともある。お前が証明するというなら、見せてみろ」

「来るか」

「俺も確認したい。感情を持つ六属性の魔法が、何を出来るのかを」

「エリナ、レオン、ライナス、セレン」

「はい」


 全員が返事した。


「魔王は俺が相手をする。眷属が来る可能性がある。周囲を頼む」

「わかった」

「ゼノさん一人で大丈夫ですか」

「わからない。ただし、この対峙は俺が担う必要がある」

「無理だったら言ってください。すぐ来ます」

「……ああ」


 魔王が魔力を解放し、広間の空気が変わった。

 六色の光が魔王の周囲に現れた。火、水、風、土、聖、闇。六属性すべてが、同時に展開されていた。

 同じ構成だ。属性の種類は同じだが、質が違った。

 ゼノの六属性には何かが宿っていた。覚醒を経るたびに変わってきた感情の質が、魔法に乗っていた。

 魔王の六属性は、空虚だった。

 技術は完璧だ。出力も高く、精度も高かった。感情を排除した魔法の極致がそこにあった。何も余計なものが混じっていない、純粋な魔力の展開だった。


 魔王が動いた。速かった。

 風属性で回避し、土属性で防御を展開した。魔王の水属性が来た。制限しようとしてきたが、何とか回避して距離を取った。


「反応が速いな」

「お前も速い」

「感情が乗っていない分、判断が速い。感情を持つ魔法使いは、感情が来た時に判断が一瞬遅れる。その遅れが命取りになるぞ」

「わかっている」

「わかっていて、感情を使うのか」

「ああ」


 魔王が六属性を組み合わせた。

 複合魔法。複数の属性が同時に展開される攻撃だ。規模が大きかった。

 ゼノが同じく六属性すべてで対応した。一つずつ対応する必要があった。土で壁を作る。風で一部を逸らす。水で別の一部を受け流す。火で打ち返せる部分を打ち返す。

 全部対応しきれなかった。衝撃が伝わり、後退した。


「すべては防げなかったな。感情が乗った魔法は、効率が下がる。判断に余計なものが混じる」

「そうかもしれない。ただ、それだけではない」


 後方で戦闘が始まっていた。

 レオンの声がした。ライナスが動く音がした。

 眷属が来ていた。魔王の解放に合わせて、眷属が城内から動き始めていた。


「エリナ」

「大丈夫です! みんなが対応しています」

「消耗を管理してくれ」

「わかっています」


 ゼノは魔王に向かった。

 防御だけでは押し返せなかった。攻撃を入れる必要があった。

 風属性で速度を上げ、土属性で地形を使いながら距離を詰めた。水属性で動きを制限しようとしてきた。

 六属性対六属性だ。同じ構成で、違う質の魔法がぶつかった。

 拮抗しているが、じわじわと押されてきている。

 魔王の出力が高かった。感情がない分、無駄がなかった。全力が純粋に出力に変換されていた。


「——やはりお前の魔法には何かが宿っている」


 魔王が言った。

 戦闘の中で言った。感情のない声だが、確認している声だった。


「感情か」

「ああ」

「それが弱点だ。感情は魔法の出力を不安定にする。今も、一部が通ったのはそのためだ。感情が来た瞬間に、出力が揺れる」

「不安定であることは、知っている」

「知っていて——」

「それでも——使う」

「なぜだ。効率が悪い。純粋な出力では俺に劣る。なぜ感情を使う」

「感情がなければ来なかった力がある」

「どういう意味だ」

「信頼の覚醒。愛情の覚醒。それぞれが来た時に、感情と連動して力が引き出された。感情がなければ来なかった力だ。感情があるから来た力だ」

「ほう、噂には聞いたことがある。お前は覚醒を経験してきたのか」

「複数回。感情が来るたびに、力が変わった」

「俺は覚醒を経験していない。感情を捨てたから」

「だから、お前と俺の力の質が違う」


 魔王の攻撃が変わった。

 より精密になり、ゼノの動き方を読んでいた。防御の癖を確認していた。

 次の攻撃が、防御の薄い場所に来た。

 対応が遅れ、衝撃が来た。今度はさっきより大きかった。


「感情が来た瞬間、判断が遅れた」

「そうだ」

「それが弱点だと言ったはずだ」

「弱点として機能した。ただし——」

「ただし?」

「弱点であることと、それを持ち続けることは矛盾しない」


 ゼノは言った。体勢を立て直しながら。


「非合理だ」

「合理性だけで判断していた時期が俺にもあった。それだけでは来なかった力が、今は来ている」

「感情が来ることで、力が上がることがあると言っているのか」

「ある。不安定になる場面と、力が上がる場面が両方ある。お前は前者だけを見ている」

「ならば、後者を見せてみろ」

「今、見せている」


 ゼノは六属性を再展開した。

 今日までに覚醒してきた感情を確認した。

 喜び。怒り。信頼。愛情。

 それぞれが来た時に力が変わった。今もそれぞれが蓄積されていた。

 守りたい、という感覚が来た。

 後ろにエリナがいた。レオンが戦っていた。ライナスが動いていた。セレンが支援していた。


 魔王に向かった。今度は押し返した。


「……出力が上がったな」

「来た時に上がる」

「何が来た」

「守りたい、という感覚だ。後ろに全員がいる。守りたいという感情が来た時に、力が上がった」

「守りたい……」


 その言葉を聞いた時、魔王の顔に一瞬何かが通り過ぎた。

 今日三度目だった。


「俺もかつて、守りたいと思っていた」


 魔王が言った。

 戦闘の中で言った。今日の中で初めて、自分について話した。


「知っている。記録に書いてあった」

「それが失われた」

「失われた後で、感情を捨てた」

「そうだ。守りたいものがなくなったから、守りたいという感情も不要になる」

「不要になったから捨てたのか、捨てたから感じられなくなったのか」

「……」

「どちらが先か」


 魔王が攻撃してきた。

 先ほどより力が強かった。何かが動いた、という反応が攻撃に出ていた気がした。

 ゼノが対応した。全力で対応した。

 また拮抗状態になった。


 玉座の間の空気が震え、六属性の魔法が絶え間なくぶつかり合った。

 後方でレオンの声がした。ライナスの声がした。全員が戦っていた。

 ゼノは前を向いた。


 不安定な魔法が、今はそれでいいと感じた。

 それでも使うと言った。その言葉は、今も変わらない。

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!

次の更新をお楽しみに!


ではまた。

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