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六属性を持つ最強転生者は、感情という魔法を知らない  作者: 猫眼鏡博士
第二章

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第70話 騎士団救援・前半

 森の南端に近づくにつれて、音が変わった。

 魔物の声だ。複数の種類が混在している。単体の鳴き声ではなく、群れが動いている時の音だ。遠くから聞こえていたものが、近づくにつれて具体的な方向と距離を持った。

「多いですね」とライナスが言った。


「想定していたより密度が高いが、分布に偏りがある」


 ゼノは感知しながら歩いた。魔力の分布、気配の方向と密度、動きの速度。データが集まっていった。

 森の端に出た。


 騎士団が輪を作って、背中合わせの陣形を取っていた。三十人程度が密集していた。周囲を魔物が取り囲んでいた。数が多い。ゼノが感知できる範囲で、五十体を超えていた。

 騎士団の陣形は崩れていなかった。ただ疲弊していた。動きも鈍かった。数人が地面に膝をついていた。怪我人がいた。


「間に合ったな」

「ギリギリだ。長くは保たない」


 全体を確認した。

 包囲の厚みに偏りがあった。南西側が密度が高く、北東側が薄かった。おそらく騎士団が南から入ったため、追ってきた魔物が南側に集中している。北東からなら、突破できる可能性があった。


「包囲の薄い北東から突破口を作る」


「具体的には?」とエリナが聞いてきた。


「俺が前に出て北東の包囲を崩す。その間に全員は迂回して騎士団に接触してくれ。合流できたら脱出ルートを確保して北東に集めてほしい」

「俺たちが騎士団のところまで行くのか」

「俺が前を崩している間に動く。騎士団には回復と支援が必要だ。エリナの回復魔法が必要になる。セレンは騎士団の周囲の魔物の動きを制限してくれ。ライナスが騎士団への誘導を担当してくれ。」

「わかった。でも——一人で前に出るなよ」

「俺が最も前衛に適している」

「そういう問題じゃない!」


 レオンの声に力があった。怒っているわけではなかった。ただ、強かった。


「一人で前に出るのが危険だって言ってるんじゃなくて、お前一人に任せたくないって話だよ。一緒に動ける方法があるだろ」

「全員で北東を崩しながら騎士団に向かうことも可能だ。その場合は北東以外の包囲から攻撃を受ける時間が増える。騎士団が持つかどうかの問題がある。俺が前で時間を稼いでいる間に動いた方が、騎士団への到達が早い。それが最適解だ」

「……最適解はわかる。でも——」


 ゼノは少し止まった。


「……なら、俺が前に出る間、後ろを頼む」


 言い方が変わっていた。

 一人で全部やるではなく、前を俺が担当する、という言い方になっていた。役割を分けた。

 レオンが一瞬止まった。


「……わかった。任せろ」


 声のトーンが変わった。ゼノが一人でやると言っている時とは違う返し方をした。任せる、という言葉が来た。


「騎士団への合流は頼む。エリナ、負傷者の回復を優先してくれ。セレン、騎士団の周囲の魔物を制限してくれ。ライナスは動ける騎士に脱出方向を伝えてくれ」


「はい」と三人が答えた。


「レオンは俺の後方を確認しながら、俺が押し返した後の魔物を抑えてくれ。前を塞いで、俺が作った通路を維持してほしい」

「わかった」

「行くぞ」


 北東側の包囲に向かった。

 最初に目に入った中型の魔物に、土属性で足元を固定した。動きが止まった。次に風属性で速度を上げ、固定した魔物を通り過ぎながら火属性で打撃を入れた。一体が後退した。

 別の個体が横から来た。水属性で動きを制限し、完全には止まらなかったが、速度が落ちた。闇属性で精神への圧力をかけた。個体が方向を変えた。

 六属性を切り替えながら、前を進んだ。

 こちらが圧倒的だが、数が多かった。


 一体を排除すると、二体が来た。二体を処理する間に、別の方向から来た個体が加わった。際限がない。

 前進はできていた。ただ、全体の包囲を崩すには至っていなかった。突破口を作ることはできていた。維持することが問題だ。


「レオン」

「見てる。お前が押し戻した後から来る奴、俺が抑えてる」

「通路が維持されているか」

「細いけどある。エリナたちが通れる幅はある」

「そのまま頼む」


 エリナたちが動いていた。ゼノが作った通路を通って、騎士団に向かっていた。視界の端で確認できた。

 騎士団の中にエリナの光が見えた。回復魔法を使い始めていた。


「騎士団と合流できました」

「わかった。脱出ルートを確保してくれ。騎士団に北東方向に動くよう伝えてくれ」

「伝えます。ライナスさんが既に話し始めています」


 前を押し続けた。

 魔物の数が変わらなかった。押しても押しても来る。だが密度が少し変わってきていた。騎士団が北東に動き始めたことで、南側の包囲が少し薄くなり始めていた。魔物の注意が分散していた。

 土属性の壁を作り、一時的に前方の進路を固めた。その間に風属性で自分の速度を上げて、右側面に回った。右から火属性を連続で放ち、数体が後退した。


「右側に空間ができた。エリナ、騎士団を右方向から動かしてくれ」

「わかりました」


 騎士団が動き始めた。

 疲弊していたが、回復魔法で何人かが立ち上がった。エリナが最も消耗していた騎士から順番に回復魔法をかけていた。セレンが騎士団の周囲の魔物の動きを制限していた。

 ゼノは前を押し続けていたが、流石に消耗が始まっていた。覚醒なしで六属性を切り替え続けるのは、それだけで負荷がかかった。

 ただし、まだ動けた。


「ゼノ、お前大丈夫か?」


 レオンが言った。後方を維持しながら、ゼノの状態を確認していた。


「問題ない。まだ動ける」

「消耗してるように見えるが」

「把握している。騎士団の脱出を優先してくれ。俺は最後に動く」

「最後って——お前が最後に出るつもりか」

「当然だ」


 レオンが何か言おうとした。


「後で話す。今は動いてくれ」

「……わかった。でも、無茶するな」

「無茶と限界は別の話だ。今はまだ限界ではない」


 騎士団が動いていた。ライナスが誘導して、北東方向への移動が始まっていた。

 ゼノは前を押し続けた。

 一体が突進してきた。土属性で止めた。横から来た個体を風属性で弾いた。前方の個体を火属性で牽制した。

 数が多かったが、それでも騎士団が動いていた。それで十分だった。

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!

次の更新をお楽しみに!


ではまた。

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