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六属性を持つ最強転生者は、感情という魔法を知らない  作者: 猫眼鏡博士
第二章

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第51話 パーティの覚悟

 森を出て街に戻った。


 依頼の完了報告をギルドに届けるのが最初の目的だったが、それ以上に持ち帰った情報の方が重要だった。

 街の門をくぐった時、無意識に全員が少し息を吐いた。森の中では常に何かを感じていた。街の中に入ると、その密度が下がっっていた。


「なんか、ほっとしますね」

「当然だ。魔力の密度が下がっている」

「そういう意味じゃなくて、気持ちの問題で」

「それも含めてそうなのかもしれない」


 ライナスが少し驚いた顔をした。


「ゼノさん、気持ちの問題を認めましたね」

「否定する根拠がなかった」


 ギルドに向かい、受付に依頼の完了を報告した。

 調査範囲の確認、魔物の個体数と種類、間引きの結果。必要な情報を伝えた。受付の担当者が記録していた。


「もう一つ、報告したい事項があるのですが、ギルドマスターと直接話せますか?

 」

「どういった内容ですか?」

「依頼の範囲外で確認した事項です。口頭での報告よりも、責任ある立場の人間に伝えた方がいいと思うのですが」


 受付の担当者が少し考えてから「少しお待ちください」と言って奥に向かった。


 しばらくして、ギルドマスターが出てきた。

 五十代と思われる男性だった。体格がよく、腕に古い傷の跡がある。現役の冒険者だった時期があることが分かる外見だった。

 ゼノたちを見て「若いな」と言った。評価でも批判でもない声だった。


「話を聞こう。奥に来てくれ」


 奥の部屋に通され、ゼノが依頼で起こったことを話した。

 魔物の死骸の状態。傷の種類。魔力の残滓の質。闇属性の濃密な反応。方向性のある魔力の分布。

 ギルドマスターは静かに聞いていた。最初は無表情だったが、魔力の残滓の話に入った瞬間に表情が変わった。


「魔王の魔力反応だと?」

「断定はできません。ただ、可能性として高いです」

「それは由々しき事態だな」


 ギルドマスターが立ち上がって窓の外を見た。少しの間、そのままだった。


「一つ聞いてもいいですか」

「何だ」

「このような報告が俺たちが初めてではない、という可能性があります。王国側は把握しているのではありませんか?」


 ギルドマスターが振り返った。


「......鋭いな」

「反応から判断しました。俺の報告を聞いて、新しい情報として驚いたわけではありませんでした。確認が取れた、という種類の反応でした」


 ギルドマスターが少し間を置いた。それから椅子に戻って座った。


「話す。ただし、ここだけの話だ」

「了解しました」

「数年前から魔物の行動が変わっている。以前は散漫だった。地域ごとに個別に動いていた。それが、まるで統率されているように変わってきた。方向性があり、目的があるように見える」

「それはいつ頃からですか」

「はっきりした時期は分からないが、三年から四年前あたりから変化が始まったという報告が複数の地域から来ている」

「王国は把握しているのですか」

「把握している。魔王が動き始めている可能性がある、という判断を一部の王国上層部は持っている。ただ公表はしていない」

「なぜ公表しないんですか」

「パニックを避けるためだ。魔王という言葉が出た時の一般市民の反応を、王国が恐れている。情報を管理したまま、準備を進めようとしている」

「情報の非対称性が生まれています。一般市民が知らない状態で被害が出る可能性があります」

「そうだ。俺もその点については問題だと思っている。だから冒険者ギルドを通じて、腕のある者に動いてもらおうとしている。表向きの依頼の形を取りながら、実質的な対応を進めるために」

「それが今回の依頼の背景にあったと」

「この街の近くの森が、魔王の影響を受け始めている可能性があった。確認が必要だった。だが結果としてお前たちが結果を持ち帰ってくれた。だから腕のある冒険者に動いてもらいたい。ただし、危険が伴う。今後の調査と対応は、魔王の影響圏に近づく可能性があるからな」


 ゼノは全員の顔を見た。

 エリナが前を向いていた。ライナスが少し緊張した顔をしていたが、目が逸れていなかった。レオンが腕を組んで聞いていた。セレンが静かにギルドマスターを見ていた。


「君たちは......特に君は、どうだ?」


 ギルドマスターがゼノに向けて言った。六属性を知っているのかもしれない。あるいは、この報告をできたということから能力を判断したのかもしれなかった。


「パーティに確認します」


 ゼノは全員を見た。


「聞いた通りだ。魔王が動き始めている可能性がある。今後の調査は危険が増す。引き受けるかどうか、各自の判断を聞かせてくれ」

「行く」


 レオンが即答した。迷いがなかった。


「俺も行きます。怖いですけど、行きたいです」

「わたしも。みんなと一緒なら」

「私も当然です。ゼノさんが行くなら」


 四人が答え、ゼノは全員を見ていた。

 四人の顔に、それぞれの感情があった。レオンの覚悟。ライナスの怖さと意志。セレンの落ち着き。エリナの決意。それぞれが違う表情だったが向いている方向は同じだった。


「......分かった。引き受けます」


 ゼノはギルドマスターに向かって言った。

 ギルドマスターが「よし」と言った。短い言葉だったが、重さがあった。


「詳細な情報を共有する。今後の連絡窓口もここにしよう。何かあればすぐに来てくれ」

「了解しました」


 ギルドを出ると、外の光が傾いて、夕方になっていた。


「決まったな」

「決まった」

「怖くないのか? お前は」

「怖いかどうかはまだ分からない。ただ、引き受ける理由がある」

「理由って何だ」


 ゼノは少し考えた。


「情報の非対称性を埋めることと、魔王の影響を確認すること」

「それだけか?」

「......今のところは」


 レオンが「今のところ、ね。」と言って笑った。


「俺はみんなと一緒にいたいから行くけどな」

「感情的な理由だ」

「感情的でいいんだよ、そういうのは」


 宿に戻った。

 皆が寝静まったあと、円卓でウェントスに今日のことを話した。


「ギルドマスターと話した。魔王が動き始めている可能性がある。引き受けることにした」

「そっか。全員で決めたの?」

「全員に確認した。全員が行くと言った」

「それがよかった。一人じゃないから」

「一人ではない」

「ゼノ、一つだけ」

「何だ」

「引き受けると決めた時、どんな気持ちだった?」


 ゼノは少し考えた。


「......やることが明確になった、という感覚があった」

「それでいい。ゼノが感じることが増えてきてる。それが大事だよ」


 円卓が静かだった。

 三つの椅子に三人が座っていたが、残りの席はまだ空いていた。


 これからのことが、少し具体的な形を持ち始めていた。

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!

次の更新をお楽しみに!


ではまた。

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