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六属性を持つ最強転生者は、感情という魔法を知らない  作者: 猫眼鏡博士
第二章

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第48話 上位魔物との遭遇

 中層に入ってしばらく経った。


 これまでの探索で、中型捕食型の個体と数回の戦闘を経験していた。連携も安定してきて、各自が自分の役割を理解して指示なしで動ける場面が増えていた。


 今日は少し奥まで進む予定だ。

 ゼノが周囲の気配を確認しながら先頭を歩いていた。昨日までと同じ手順だった。ただ、今日は何かが違う気がしていた。


「前方、何かいる」

「いつもの魔物ですか?」

「いや、魔力の質が違う」


 木の間から現れたものは、これまで見てきた中型個体の倍近い体格があった。四足で、背中に鱗のような甲羅がある。捕食型だったが、今まで見た個体より明らかに密度の高い魔力を持っていた。

 動きが止まり、こちらを見ていた。


「上位魔物だ。これまでの個体とは別の格だ。全員、位置についてくれ」


 いつもの配置にパーティが動いた。


「レオン、先に一発試してくれ。威力の確認がしたい」

「分かった」


 レオンが火魔法を放った。

 甲羅の部分に直撃したが、魔物はほとんど動じなかった。


「......通りが悪い。あの甲羅、相当固いな」

「確認した。甲羅のない部分を狙う必要がある」


 戦闘が始まった。

 ライナスが速度を活かして翻弄しようとした。右から、左から、速度を変えて回り込んだ。魔物が対応し、速さに追いつけていないわけではなかった。何かで位置を把握していた。


「視覚以外で俺の位置がわかってる!?」

「振動か嗅覚だ。速度で翻弄するより、間欠的に動いてくれ。常に動き続けると振動で位置が分かる」

「分かりました!」


 セレンが水魔法を展開した。足元に水を流して動きを制限しようとした。

 魔物が地面を踏み込んだ。力で押し通し、水の制限が崩れた。


「セレン、突破された」

「分かっています。あの重さには対応できなかったです。別の方法を探します」


 ゼノが前に出た。

 複数属性を組み合わせて対応した。土属性で足元を固め、動きが一瞬鈍った。その瞬間に風属性で速度を上げ、側面に回り、火属性で甲羅のない腹部を狙った。

 魔法が当たり、魔物がわずかに反応した。ダメージが入ったが小さい。


「腹部に通るが、接近しないと届かない。リスクが高い」


 魔物が尻尾を振った。ゼノが跳んで回避した。着地と同時に土属性で足元を固定し直した。

 レオンが側面から攻撃を続けていた。甲羅に当たるたびに弾かれていた。


「くそ、固い」

「甲羅の継ぎ目を狙えるか」

「どこだ」

「背中の中央部、鱗の重なりが薄い部分がある。俺が正面で注意を引く間に試してくれ」

「ああ、分かった」


 三十分の戦闘が続いた。

 有効打は入っていたが決め手がない。魔物は傷を受けながらも動き続けていた。

 ライナスが牽制の途中で足を取られた。転びかけた。エリナがすぐに回復魔法を当てた。


「ゼノさん、何か策は!」


 エリナが後方から言った。余裕のある声ではなかった。全員の回復を維持しながら、それでも限界が近づいている声だった。


 ゼノは状況を整理した。

 甲羅が防御として機能している。腹部は脆弱だが接近が困難。背中の継ぎ目にはレオンの火魔法が部分的に通っているが、仕留めるには出力が足りない。セレンの水属性は重量に対して制限が弱い。


 水属性と風属性。

 水属性は制限として使うのではなく、別の方法がある。


「水と風を同時に使うことで、この魔物の弱点部位を狙える」

「どういうことだ?」

「甲羅の継ぎ目に水を流し込んで、その部分を風属性で高速の打撃にする。水が継ぎ目の隙間に入ることで、風が内側から力を加えられる。外側から当てるより浸透する」

「できるのか? そんな技」

「理論上は可能だ。ただ、二人の魔法のタイミングを合わせる必要がある。セレン、俺の動きに合わせてくれ」

「分かりました」


 セレンが即答した。

 迷いのない声だ。どういう動きをすればいいかを確認する前に答えた。ゼノの動きに合わせる、という判断だけを先に出した。


「俺が正面で注意を引く。その間に継ぎ目の位置を水で濡らしてくれ。タイミングは俺が合図する」

「はい」

「レオン、俺とセレンが動く間は離れてくれ。巻き込む可能性がある」

「分かった」

「ライナス、魔物の後方に回ってくれ。逃げ道を塞ぐだけでいい」

「はい!」


 ゼノが土属性と風属性を組み合わせて動きを制限しながら、正面から圧力をかけた。魔物の注意が集中した。

 セレンが魔物の背後に回り込んだ。水属性を細く絞った。継ぎ目の位置を正確に濡らした。水が隙間に入っていく。継ぎ目が一本、線のように湿った。


「ゼノさん、合図を待っています」


 ゼノが魔物の動きを確認した。土属性で足元を固定した。動きが止まった一瞬。


「今!」


 セレンが水属性を維持したまま、ゼノが風属性を放った。

 水の濡れた継ぎ目に風が集中した。水が媒体になって、風の力が継ぎ目の内側に入り込んだ。

 甲羅の継ぎ目が一箇所、広がった。

 レオンが「今だ!」と言って火魔法を継ぎ目に直撃させた。

 魔物が大きく動いた。後退した。ライナスがいた方向に向きを変えようとしたが、ライナスが間欠的な動きで撹乱した。

 もう一度、同じ手順で。二度目の連携で、魔物が地面に伏した。


 戦闘が終わった。

 全員が止まった。レオンが大きく息を吐いた。ライナスが膝に手をついた。エリナが全員に回復魔法をかけ始めた。セレンが展開を収めた。

 ゼノは倒れた魔物を確認したが動いていなかった。


「......これが上位魔物か」


 声に出ていた。

 全員がゼノを見た。


「奥に進むほど強度が上がる。情報の修正が必要だ」

「情報の修正って、どういう意味ですか?」

「これまでの判断では、この規模の個体を想定に入れていなかった。今後の行動方針を見直す必要がある」

「つまり、もっと強いのが来るかもしれないってことか?」

「ああ」

「......それを冷静に言えるのか、お前は」

「感情的に言うより、冷静に述べた方が対処できる」

「連携がうまくいきました。ゼノさんの合図に合わせられました」

「タイミングが正確だった。継ぎ目への水の誘導が的確だった。即答してくれたのが助かった。」

「ゼノさんが言うなら、合わせれると思ったので」

「......合わせられるかどうかを確認したかったか?」

「確認する時間がなかったですし。合わせればいいと思ったので」


 確認なしに合わせると判断した。それはゼノへの信頼から来ている。根拠がある信頼か、根拠がない信頼か、今のセレンの返答だけでは判断できなかった。


「なぜ合わせられると判断したんだ」

「ゼノさんが言う時は、できる時だから。今まで見ていてそう思いました」


 観察から来た信頼だった。

 レオンが「飯にしよう。今日は戦いすぎた。」と言った。


「同意する。休息と情報の整理が必要だ」

「珍しく俺の意見に同意したな」

「合理的な提案には同意する」

「そういうことにしとこう」

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!

次の更新をお楽しみに!


ではまた。

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