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六属性を持つ最強転生者は、感情という魔法を知らない  作者: 猫眼鏡博士
第二章

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第41話 ギルドでの初依頼

 街に着いたのは昼前だった。


 王都からの街道沿いにある、中規模の街だった。城壁に囲まれていて、正門を入ると市場と宿と商店が並んでいた。人の往来があった。行商人らしい人間と、装備を持った冒険者らしい人間が混在していた。


 ゼノは街の構造を把握しながら歩いた。市場の位置、宿の場所、ギルドの方向。事前に得ていた情報と照合し、ほぼ一致していた。


「大きいな。王都より小さいけど、活気がある」

「商業路の中継地点だ。行商が多い」

「詳しいな」

「事前に調べた」

「どこで調べるんだよ」

「図書室に街道沿いの街の情報が載っていた」

「......準備がいいな」

「当然だ」


 冒険者ギルドは市場の近くにあった。

 入口の扉を開けると、受付カウンターと壁に貼られた依頼書が目に入った。奥にテーブルが並んでいて、冒険者らしい人間が何人か座っていた。視線が来た。新人か、という種類の視線だった。

 受付に向かった。


「パーティとして活動を開始したい。登録の確認と依頼の受け取りを」


 受付の担当者が「学園の卒業証明書と、ギルドの仮登録証を見せてください」と言った。ゼノが書類を出し、確認が終わった。


「本登録が完了しました。現在の依頼書はあちらです。難易度順に並んでいます。初回は低難度から始めることをお勧めします」

「分かりました」


 依頼書の前に五人が集まった。

 壁に複数の依頼書が貼られていた。魔物の駆除、行方不明者の捜索、荷物の護衛、薬草の採取。難易度の表示がそれぞれについていた。


「これはどうですか。」エリナが一枚を指した。


 『内容:街の近くの森で魔物の目撃情報が増加している。種類の確認と必要であれば間引きを依頼したい。報酬は標準的。期限は五日以内』


 ゼノは依頼書を受け取った。

 報酬と難易度のバランスを確認した。初回の依頼としては適切な報酬水準だった。移動時間を計算した。街から森の入口まで徒歩で一時間程度。往復二時間と調査時間を合わせると、日帰りで十分可能だ。リスクを評価した。目撃情報が増えているという状況は注意が必要だが、難易度の表示は低め。戦力的に対応できる範囲だった。


「最適な初期依頼だ」

「そうなんですか?」

「報酬と難易度のバランスが適切。移動時間が短く、日帰りが可能。リスクが現時点の戦力で対処できる範囲内に収まっている。初回の実戦経験として、情報収集と戦闘の両方を試せる」

「なんかものすごく分析されてる」

「依頼を選ぶことも判断だ。判断には根拠が必要だ」

「ごもっとも。じゃあ、これを受けるか」


 依頼を受け取って、準備を整えた。

 宿に荷物を置いて、必要な装備を持って街を出た。街道から外れた道を進むと、森の入口が見えてきた。木が密になっていく手前で、ゼノが「一度確認する」と言って全員を止めた。


 森の入口に五人が並んだ。


「役割分担を決める。エリナは後方回復。前線から距離を取って、全員の状態を把握しながら必要なタイミングで回復を入れてくれ。セレンは中距離支援。水属性で敵の動きを制限して、味方の攻撃を通しやすくする。ライナスは速度を活かした撹乱。前衛と後衛の間を動いて、敵の注意を分散させる。レオンは中距離攻撃。火属性で確実にダメージを入れる。俺は前衛と全体判断。状況を把握しながら最前列で対応する」


 五人が聞いていた。


「ゼノさん、なんか隊長みたいですね」


 エリナが言った。からかっているわけでも、反対しているわけでもなかった。ただ、そう見えたという声だった


「効率的な構成を述べた。問題があれば修正するが」

「いや、問題ないけど。もうちょっと相談しようぜ、みたいな? 俺はこの役割がいいとか、そういう話を」

「意見があれば述べてくれ。修正する」

「いやそういうことじゃ......」


 レオンが何か言おうとして、止まった。考えていた。それから「まあいいか」と言った。


「問題があった場合は言う。ただ、なんか一緒に決めた感がほしかっただけで。内容には文句ない」


 一緒に決めた感。内容への不満ではなく、プロセスへの要望だった。


「次回からは、方針を述べた後に各自の意見を聞く時間を設ける。今回は初回だったので省いた」

「それで十分だ!」

「今日はこの構成で進める。気になることがあれば動きながら言ってくれ」

「分かった」

「ライナスは今の役割で問題ないか。」

「撹乱、ですか......やったことないですが、速度を使うならそうなりますよね。試してみます」

「困ったら言え。修正する」

「はい」

「セレン、水属性での動き制限は得意か」

「広範囲に展開するならできます」

「頼む」

「分かりました」

「エリナ、回復のタイミングは任せる。ただ、自分の魔力管理を優先してくれ。回復役が倒れると全体に影響する」

「分かってます。無理はしません」

「それだけ聞けばいい」


 森の中に入った。

 木の間から光が差し込んで、地面に枯れ葉が積もっていた。遠くで鳥が鳴いている。

 ゼノは歩きながら周囲の気配を確認し続けた。魔法を使うほどではないが、感覚を広げて変化を拾う。これは学園の演習でも練習していた動作だった。


 後方でレオンが小声で「緊張するな」と言った。

 ライナスが「してますよ、普通に」と答えた。

 エリナが「でも楽しみでもあります」と言った。

「三つ全部あっていい。」ゼノは前を向いたまま言った。


「え?」

「緊張と楽しみと不安は矛盾しない。同時に存在できる」

「......なんかそれ、いいこと言ってる気がするな」

「事実を述べた」

「そういうところが面白いんだよな、ゼノ」


 森の中を進んだが、しばらくは何もなかった。

 ゼノは気配を確認し続けながら、全員の動きを把握していた。エリナが後方で距離を保っている。セレンが左斜め後方にいる。ライナスが少し前方右側に出ていた。レオンが前方に近い位置にいる。


「ライナス、少し下がってくれ。前に出すぎている」

「あ、すみません」

「気をつけながら動いている。いい傾向だ。ただ無意識に前に出る癖があるから意識してくれ」

「分かりました」


 最初の依頼の森の探索は、まだ始まったばかりだ。

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!

次の更新をお楽しみに!


ではまた。

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