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六属性を持つ最強転生者は、感情という魔法を知らない  作者: 猫眼鏡博士
第二章

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第40話 最初の野営

 学園を出て最初の街を過ぎると、街道の景色が変わった。


 建物が減り、人の声がなくなった。代わりに風の音と草の音と、遠くの鳥の声がした。王都の外れを抜けると、道の両側に木が増えてきた。


 五人が街道を歩いていた。

 先頭はレオンだった。次にライナスとセレン、エリナが並んで歩いていた。ゼノは最後尾を歩いていた。


「冒険って感じがしてきた!」


 レオンが言った。

 声が大きかった。朝からはしゃいでいた声が、街を離れてさらに出てきていた。周囲の景色が変わるたびに反応している。


「もう少し静かにしてください。魔物に気づかれます。」

「まだ魔物の出る範囲じゃないだろ」

「でも、習慣にしておいた方がいいと思って」

「ライナスの言う通りだ。警戒の習慣は早い段階で作る方がいい。街道沿いの魔物の出現率は低いが、ゼロではない」

「分かった、分かった。でも気持ちは冒険だから」

「気持ちは制限しない。音量だけ調整してくれ」

「お前って、そういうとこが面白いんだよな」


 ゼノは最後尾を歩きながら、全員を観察していた。

 体力の消耗度。レオンが最も活発に動いているが、体力的な消耗は見えない。ライナスは慎重な歩き方をしている。長距離移動に慣れていない可能性がある。エリナとセレンが並んで地図を確認しながら歩いていた。エリナが読んで、セレンが確認する分担になっているらしかった。


 警戒範囲の確認。レオンは前方への注意が強い。ライナスは周囲を見ている。セレンが時々後方を確認していた。エリナは地図に集中している分、周囲への注意が薄い。


 連携の確認。まだ実戦がないため、現時点では想定だけだ。各自の動き方の癖が観察できている。レオンは前に出る傾向がある。ライナスは状況確認を優先する。

 現時点での戦力把握が必要だ。


「エリナ、地図の確認は歩きながら継続できるか」

「できます。なんでですか?」

「地図に集中している時、周囲への注意が薄くなっている。セレンに地図の担当を任せて、エリナは周囲の確認を並行して担当できるか」

「あ......そうですね。分かりました」


 エリナがセレンに地図を渡した。


「セレン、方向の確認を頼む」

「分かりました」


 淡々とした声だったが、すぐに対応した。


 日が傾いてきた頃、適野営地を見つけた。

 街道から少し外れた場所に、木に囲まれた平地があった。風が遮られている。水源が近くにある。魔物の痕跡がない。野営地として条件が揃っていた。


「ここにする」


 ゼノが言うと、全員が動き始めた。荷物を降ろして、各自の作業に入った。

 レオンが「焚き火は俺がやる」と言って、火魔法で焚き火を起こした。学園の演習より実用的な使い方だった。木に火を付ける角度と出力の調整が正確だった。


「上手い」

「褒め言葉は素直に受け取るぞ?」


 焚き火の周りに五人が座った。

 炎が安定して燃えていた。周囲が暗くなっていく中で、焚き火の光が顔に当たった。

 エリナが「ゼノさん、野営って慣れてますか?」と聞いてきた。


「経験はある。ただ五人分の安全確保は初めてだ。一人の場合と構造が違う」

「五人分、って考えてるんですね」

「当然だ。全員の状態が変数になる」

「変数って言い方が、ゼノさんらしいですね」

「なんか責任者みたいだな。まあ、そうなのかもしれないけど」

「俺が最も合理的な判断を下せる。事実だ」

「......反論できないのが腹立つ」

「反論できないなら受け入れてくれ」

「分かったよ!!」


 食事の準備をした。

 保存食と、道中で確認した食材を組み合わせた。セレンが水源から水を確保した。水属性で水質を確認してから飲料水にした。ライナスが食器を並べた。エリナが食材の量を確認した。


 分担が自然に決まっていた。

 誰かが指示したわけではない。それぞれが必要なことを判断して動いた。


 ゼノはその様子を観察した。

 連携として機能し始めている。指示なしで分担ができた。各自が全体を見ながら動けている。想定より早い段階で基礎的な連携が成立した。


「連携の形成が速い」

「そうですか?」


 ライナスが聞いた。


「各自が全体を把握した上で動いている。これは実戦でも有効になる」

「学園で一年間一緒にいたからじゃないですか?」とエリナが言った。

「それが要因として大きいと思われる」

「ゼノさんって、そういう時も分析するんですね」とセレンが静かに言った。


「観察は基本だ」

「でも、褒めてますよね。連携が速いって、良いことを言ってる」

「......そうだ」

「ありがとうございます」


 食事が終わった。

 見張りの当番を決めた。二時間交代で、ゼノが最初の番を担当した。他の四人は眠りについた。

 焚き火が静かに燃えていた。

 周囲の暗闇を確認した。魔物の気配はなかった。風の方向が安定していた。天気は崩れない見込みだった。

 一人の見張りの時間に、意識を内側に向けた。


 円卓に入ると、ウェントスがそわそわしていた。


「旅、楽しそう!」

「楽しいかどうかはまだ判断中だ」

「判断中でも、楽しそうに見えるよ!」

「そうか」


 イグニスが「レオンがはしゃぎすぎだ。」と言った。


「敵の目が増える。ライナスが正しい」

「指摘した。音量を調整してもらった」

「まあ、それでいい。でも、レオンが元気なのは悪くない。あいつの火属性は感情が燃料だから、落ち込んでるより動いてる方がいい」

「それは俺も判断していた。」


 テラが「でも楽しむことも大切ですよ。」と言った。


「旅って、楽しい時間があるから続けられる部分もあります」

「イグニスの言う注意と、テラの言う楽しむことは矛盾しないな」

「矛盾しませんよ。両方あっていいんです」

「......参考にする」


「いつもそれだね」とウェントスが笑った。


「でも、ちゃんと聞いてるんでしょ?」

「聞いている」


 円卓から意識を戻すと、焚き火がまだ燃えていた。

 四人の寝息が聞こえた。それぞれ少し違う音だった。レオンが一番大きかった。ライナスが小さく、規則正しかった。エリナとセレンはほとんど音がなかった。


 ゼノは周囲を確認したが変化はなかった。

 五人で旅を始めた最初の夜だった。

 データとして記録しようとして、少し止まった。


 テラが言っていた。楽しむことも大切だ、と。

 今が楽しいのかどうかは、まだ分からない。ただ今夜の野営に、悪くないという評価が来ていることは確認できた。


 焚き火が静かに揺れていた。

 二時間、レオンを起こす時間までゼノは一人で夜を見ていた。

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!

次の更新をお楽しみに!


ではまた。

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