1425 星暦559年 紫の月 2日 探索依頼(7)
「アレク。
これ、シェフィート商会に対してヤバい仲介人に怪しげな依頼をしようとしたらしき書類が目についた商会とか貴族の名前」
夜明け前に家に帰り、一眠りしてから昼に何か食べようと台所に行ったらアレクに会ったので、一晩掛けて調べた際についでにメモしておいた名前を渡した。
「どんな依頼があったんだ?」
アレクが眉を顰めながら列挙された名前に目を通した。
「さあ。
ばっと捲りながらシェフィート商会の名前が出てきていたらその依頼を出したと思われる相手の名前だけメモしたから、内容までは読んでない」
ああいうのって暗語を使っていても流石に馬鹿正直に『シェフィート商会の店舗を焼け』とは書かないから、何を求めているのか読み解くのにそれなりに時間が掛るのだ。
それを一枚一枚やっていたら一晩じゃ終わらんから、取り敢えず名前だけ見ておいたのだ。
流石にセビウス氏個人の名前が明記されていた時は何枚か読み解き……暗殺依頼じゃねぇかと驚いたわけだ。
下の余白に断ったことが書いてあったので最初の数枚を見た後は、ちゃんと読んでいないが。
ダクラウン商会の依頼書類は、封筒そのものを持ちだしたら万が一ウォレン爺の手の人間がフルワースの捜査に立ち入る前に更にダクラウン商会から依頼の手紙が来ていたらバレるかも知れないので、封筒は残して中の依頼書類のうち露骨な物を数枚抜き取っておいた。
「ふむ。
記憶を映像化する魔具で、ちゃんと読んでいない記憶を読める形にだせるか、試してみるか?」
アレクが提案してきた。
「無理だろ。
人の表情とかですら思い込みで変わるんだ。
実際にちゃんと読んでいない手紙の記憶なんて、読めない文字になるか、勝手に創作しちゃった内容になるぞ」
確かにそんな実験はしなかったが。
どう考えても無理だろう。
「まあ、そうだな。
しかし意外とシェフィート商会も目の敵にされていたんだな」
アレクが肩を竦めた後にリストを見ながらちょっと溜息を吐いた。
「上手くやっていたら、そりゃあやっかまれるだろう。
とは言え、いざと言う時の保険用の書類だけで普通に幅のある階段の一段分丸々ぎっしり詰まるほど色々とヤバい依頼はあるようだから、世の中そんな物なんじゃないか?」
要は、自衛は必須なのだ。
……考えてみたら、俺が下町で現役だった時の依頼の書類なんてどうなっていたんだろう?
勝手に自分で仕事をした分はまだしも、依頼で何かを盗む場合は盗賊ギルドから口頭で案件が回ってきていたが、ギルド側には何らかの書類が送られただろに。
それともギルドは保険用の書類なんぞ保管してないのか。
でも、報復用にそれなりに表の有力者の弱みは焼き捨てずに取っておくのが裏の人間の常識だからなぁ。
どこかにある可能性は高い。
探す気はないが。
「近い将来にその仲介人が軍から捜査されるだろうから、ヤバい依頼の書類も当局に見つかる可能性が高い。ただ、多分ヤバい依頼を出した商会と貴族を全部罰していたら王都が機能停止状態になっちまうから、弱みを握るだけで終わらせるところも多いと思う。
ただなぁ。
マジで沢山あったから、ちょっと途中で名前を書くのを諦めちまった。
半分ぐらいまで書いたのがこれだが、参考までにいるか?」
マジで数が多すぎて、全部の依頼主の名前を書き出すのは時間がかかり過ぎると諦めたのだ。
シェフィート商会だけは一応ぱらっと捲って名前が出ていたらメモしておいたが。
「ちなみに、名前はアルファベットの順に並んでいたか?」
アレクが確認してきた。
「かも?
時々なんか変な順番になっているのがあったから絶対ではないと思うが」
どうも話をつけてくる相手が婚姻とか養子縁組で名前が変わった場合でも、元の名前で並べていたんじゃないかと言う気がするんだよな。
だが絶対の確信がある訳じゃあない。
「ふむ。
出てくる名前だけでもリストを貰えないか、ちょっとウォレン氏と交渉してみるか」
頑張れよ~。
俺はこの後イデオッタの方に出向いて暗くなるまでちょっと見張って、どんな風にあそこの書類作業がされているか確認しておくつもりだ。
ウォレン爺から情報を貰おうとしたら高くつくぞ〜?




