1424 星暦559年 紫の月 2日 探索依頼(6)
「これかな?」
昨晩は明け方まで粘ったが結局階段一段分にぎっしり詰まっていた保身用書類の中からダクラウン商会関連の書類を見つけられなかった。
書類が多すぎて、半分も目を通せなかったのだ。
どこの商会や貴族も、ヤバい仕事を頼みすぎ!!!
ここを軍が捜査してこのヤバい書類を見つけたとしても。
はっきり言って、ここに関与している商会や貴族を全部罰していたらアファル王国の経済が滅茶苦茶になりかねない。
名前が出てこない手紙の方が多かったが、商会なり貴族の一門なり事にまとめて封筒に入れてあるようなので、そこから類推して分かっている人間が調べれば、各依頼主が全て判読できてどの様な不法行為を依頼したかもバレる可能性が高い。
しかも名前が書いてある依頼関係の書類だけでも、俺が知っているそこそこ大物な名前がポンポン出てきているのだ。
幸いにも、国防や王家への謀反と取られかねないような連座確定な依頼書は露骨に名前を署名している書類の中には無かったが、それでも一家の主が処刑されるなり投獄されるなりしたら家門の勢いは落ちるだろうし、巨額の罰金で資産が激減したら今まで通りの活動も難しい。
そして多数の貴族や豪商が一気に活動を縮小したら、アファル王国の経済がどうなるか……想像したくもない。
そう考えると。
この書類の山の場所をウォレン爺に教えた場合、特にヤバい奴らは処分されるにしても、残りの中身は面倒な奴らを抑えつけるのに使う為に予備として取っておかれそうだ。
ある意味、アレクに先に読ませておいて、シェフィート商会がヤバい相手と大きな事業提携とかをしないように警告させるべきか?
だが……流石にこれの中身を全部持ち出したらバレそうだし、アレクをここに連れ込むのも難しそうだからなぁ。
シェフィート商会の暗部担当的なセビウス氏に確認を頼むべきかね?
多分彼の方が忍び込んだりするのに慣れてそうな気がする。
とは言え、彼だと有能過ぎてウォレン爺が求める結果とぶつかりかねない方向に物事を動かしかねない気もするからなぁ。
国と商家が求める方向と言うのは必ずしも一致しない。
たとえ商家が比較的良心的なシェフィート商会だとしても、それは言えることだ。
それこそ、面倒な規制とか税金関係なんかは明らかに利害が一致しないだろう。
規制関係だったらそれに反対する根回しが上手い貴族や豪商がこの書類の中に居て、ヤバい証拠を種に規制強化に反対するなと脅されるなんて使い道も国側だったら考えそうだが、セビウス氏だったら、死ぬ気で赤字になろうが規制強化を止めろと脅す方向に動きそうだし。
どうすっかなぁ。
一応今回の依頼に関してはウォレン爺が金を出しているのだが、依頼そのものはダクラウン商会をきっちり絞める為の証拠探しだ。
フルワース自体の情報に関しては国に出さないという条件で経費が安かったんだし。
そんなことを考えながら、たっぷり日中に睡眠をとって2日目の家探し(というか書類確認)をやっていたら、やっとダクラウン商会の指示を出す手紙が出てきた。
散々火を付けまくったんだから書類の数はもっとある筈……と思って見つかった書類が入っていた封筒の中身を全部出して調べてみたら、名前が入っているのと入っていないとあったが、署名があるのは全てダクラウン商会の人間だったし、標的にされているのもダルム商会が大多数だった。
それ以外にも他の商会や役人も時折襲わせているが。
と言うか、セビウス氏を襲ってくれという依頼書もあったが、下に『却下』というメモ書きがされてた。
うわ~。
セビウス氏ってやっぱ競合商会から危険視されているんだなぁ。
というか、ヤバいことを請け負う仲介人から敵対するのを断られるってどれだけヤバいことをやっているんだ、あの人???
取り敢えず。
この封筒の中身半分ぐらいを貰って行ってウォレン爺に渡すかな?
後は場所を教えて、ここを捜査の初期段階で抑えれば破棄されない可能性も高いだろう。
明け方までの時間をかけて、各封筒に出てくる名前をメモしていって、アレクに渡すか。
セビウス氏が殺しの対象として依頼に出てきていることを考えると、やっぱこれを全部彼に見せるのはちょっと危険すぎる気がする。
折角良識(か生存本能)に従ってセビウス氏に手を出さなかったのに、襲うよう依頼されたってことでフルワースやその依頼人が『事故』に遭って死ぬ何てことがあったらちょっと微妙な心境になるからな。
アレクに、国からヤバい証拠を押さえられているかも知れない不味い相手として名前を渡しておけば、それでいいだろう。
悪を根だやすつもりで国を破滅に追い込まない様、気をつけましょう




