1420 星暦559年 紫の月 1日 探索依頼(2)
アレクと色々と交渉して、ウォレン爺は報酬プラス下町の火事警報用魔具の導入に関して助力し、どの程度実現性がありそうかを3か月以内に報告するという事で手を打った。
流石に根回しの準備すら始める前の段階で是か非かを言えるほどの情報も影響力もないらしい。
まあ、考えてみたら下町一帯のすべての家に火事警報用魔具を導入させようとしたらかなりの金額になる。
一部だけ払う補助金にして、それこそ娼婦ギルドその他の裏ギルドにも多かれ少なかれ負担させるにせよ、全ての家に魔具を設置するのに必要な金額は簡単に予算がつくような規模には収まらない可能性が高い。
そんなのをあっさり調べもせずに了承できるほどの権限が名目上は引退した筈の騎士団の副団長にあったら、それはそれでちょっと国として間違っているのだろう。
下手をしたら、国王陛下ですら予算をつけられるかどうかは王宮の官僚たちとの折衝次第になる筈だとアレクも言っていた。
戦争の開戦や、戦争が始まった後の軍事費なんかは『非常事態』という事で普段の流れを無視して予算を毟り取れるらしいが、平時の予算というのはかなり色々な規則が煩く融通が利かないらしい。
ある意味、今回の依頼でその老舗の商会から罰金を毟り取りまくれたらそれを横流しするという形で予算を確保できるかも?とウォレン爺が匂わせていたが。
確かに違法行為を犯した商人や貴族から没収する資産っていうのは予め決まった予算の一部にはなっていないだろうから(なっていたら冤罪一直線だろう)、それの使い方に関してはある程度関与した人間が上手く制御できる可能性もありそうだ。
そうなると、その老舗の商会の隠し財産とかを見つける為にアレクにも協力してもらうべきなのかも?
まあ、それはさておき。
「で?
裏帳簿が見つかればいいのか、それともどこかへ放火や口封じの依頼をした証拠が必要なのか。
と言うか、そんな証拠を残すほどアホな可能性は流石に低いのでは?」
話し合いがひと段落したところで、ウォレン爺に何が求められているのか尋ねる。
ヤバい脅迫の材料にされた書類を取り返してこいとか、裏帳簿を見つけろっていうのならまだやり易いのだが、今回は脱税が問題になっている訳じゃあない筈。
と言うか、後ろ暗いことをして甘い汁を吸っていたんだったら、絶対にそれを報告せずに脱税している筈ではあるが。でも、それが主たる目的ではないよな?
「口封じや放火の手配をしている連絡の証拠なり指示書があったら是非とも確保しておいて欲しいが、そういうのをやる連中に裏の資金から払っている可能性が高いから、裏帳簿を見つけて確保しておくのが第一歩というところかの。
商会内で正規に雇っている連中の中でそんな違法行為をやらせる部署があったら、それは調査が入った段階で調べれば分かるから前もって情報を確保しておく必要は無いじゃろう」
ウォレン爺が答えた。
確かに、外部委託されたらそいつらと繋がるのは金の支払い記録だけって可能性は高いから、裏帳簿は必須だろうな。
とは言え、裏帳簿にヤバい連中の連絡先をメモしているとも思えないが。
やっぱ誰か、そういうのを担当している人間が内部にいるんじゃないかね?
まあ、二段階ぐらい間に仲介の人間を入れて繋がりにくくしている可能性は高そうだが。
そう考えると、目立たないが微妙に怪しい仲介者とのやり取りとかがあったらそれを確保しておく方が良いかな?
とは言え、そういう仲介者の最近の詳細は俺も知らないんだよなぁ。
「ちなみに最近王都で頑張っている裏との繋がりを担当する仲介業者の名前のリストを購入するのはありだろうか?
経費で出してくれるんじゃない限り、俺が自腹を切るつもりはないが」
情報の購入って言うのは応じてくれるかそれなりに微妙なところだが、商業ギルド内でのやり合いに関与した連中の名前、しかも放火なんて手段を使うアホだったら裏ギルド側としても特に守りたいとは思っていないだろうから、金を出せばリストを買えると思う。
ウォレン爺がにっかりと笑った。
「こちらに寄越すなら金貨20枚まで、払ってもいいぞ?
お主の参考にするだけで寄越さないなら金貨5枚じゃの」
「じゃあまあ、金貨5枚で貰える程度の情報を確認してみる」
流石に国の代わりに仲介者のリストを入手する代行業をするつもりはないぜ?
ここ代行業を始めたら更に利用価値が高まって食い付かれて離れないでしょうねぇ




