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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後8年目

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1418/1421

1418 星暦559年 赤の月 30日 消火用魔具(20)

「スラムの破落戸集団ならまだしも、まともな筈な商会が競争相手の倉庫に火をつけるなんて嫌がらせ、普通にあることなのか?」

 幾つか小屋を燃やしまくって熱感知や煙感知の魔具の設置場所や冷却用の魔具に最適と思われる魔石のサイズとかを色々と確認し、最後に古い倉庫でも実証実験もして俺たちの消火用魔具の開発に関する実験は大体終わった。


 後は購入者がどの程度金を掛けるつもりがあるかと、警報が鳴った後にどのくらいの早さで消火用の人員が集まれるか次第かな。油を撒いたり燃焼促進剤とかを使いまくれば、何だっていつかは燃える。着火までにかかる時間と警報音の煩さで火事を早期に止められるか否かが変わるだけだ。


 という事で今日はシェイラの所に遊びに来たのだが……ダルム商会のことがちょっと気になったので、完全に離れた立場であるシェイラに聞いてみた。


「放火は他の倉庫や店舗への飛び火の危険があるから、滅多にやらないわよ?

 普通の商会だったら競合商会内部の色々と損害を及ぼせる立場にいる人間を買収したり女性や薬で誘惑して協力する様に陥れる方がよくある手段ね」

 シェイラが足を止めて散策中の森の中の大木についた傷をじっくり観察しながら教えてくれた。


 シェイラの所に遊びに来ると街中を散歩する場合と、森の中を散策する場合と、適当な場所でノンビリする場合と何通りか時間の過ごし方があるのだが、今日は森の中をちょっと散策して少し開けた泉の傍でピクニックをすることになっている。


 ヴァルージャに来るときは常に虫除け用魔具も持ってきているので、森の中のピクニックでも問題はない。

 時折鳥が寄って来るが、シェイラはそれも喜ぶようなので排除していない。

 それとなく防御結界を頭上に展開して、鳥の落とし物が俺たちを直撃しないようにはしているが。


「なんかダルム商会が最近頑張って業績が上がったせいで『元』業界1番になりそうな老舗の商会から嫌がらせをやられまくって、火事探知とか消火用の魔具の作成にめっちゃ協力的だったんだが。

 あれって被害妄想なのか?」

 ぼろい小屋なんてそれ程高くはないとは思うが、それを見つけて持ってくるのだってそれなりな出費だろうし、アレクのご機嫌具合を見るに、シェフィート商会からかなりの数の火事対処用新商品を注文したようだった。


「あ~あそこね。

 元々、ちょっと後ろ暗いことをやっているって噂が流れていた商会なのよ~。

 業界一位だと、ギルドの役職の席を幾つか左右できるから、色々と都合が悪いことも握りつぶしていたんだけど、ダルム商会に取って代わられたらそういうのが一気に露呈しちゃうでしょ?

 どうせそうなったら身の破滅だからってことで、なりふり構わずダルム商会の邪魔をしているって話だわね」

 どうやらシェイラが調べていた大木の傷は遺跡の一部ではなく単なる傷だったようで、再び散策を続けながらシェイラが言った。


「……それって業界の人間ならそれなりに知っている話なのか??

 だったらなんだって国や軍に報告して取り締まらせないんだ?」

 悪事を見て見ぬフリをしていると、そのうち自分も被害者になるんだぞ?


「書類上の違法行為っていうのは当局が摘発する手続きにも決まりがあって、ギルドの幾つか鍵になる役職を握っていると情報を握りつぶしたり、前もって警告を発して都合が悪い証拠を消しておいたり、誰が告発したかの情報が漏れたり、色々と難しくなるのよ。

 下手に首を突っ込むと自分だけでなく自分の家族の命にかかわりかねないから、よほど酷いことをやっていない限り、見て見ぬふりをする方が賢いって考えるようになっちゃうのよねぇ。

 一つ一つは小さな違法行為で、利益誘導をちょっと露骨にやっていて、それを邪魔する人間を排除する程度のことだから。

 あそこはそれなりにあちこちに見返りをばら撒いていたし」

 シェイラが肩を竦めながら言った。


 邪魔をしなければそれなりに業界の人間に利益を齎し、他の集団との交渉なんかで上手に利益誘導してくれる老舗だってことで、見て見ぬふりをされてきたのかな?


 通常時の害はそれ程大きくなく、うっかり手を出した際の被害の方が割に合わなかったんだろう。

 それがダルム商会が頑張って業界一位になりそうになったせいで、突然戦争状態になったのかな?

 ダルム商会が意図して業界一位を取ろうと決めたのか、頑張ったらうっかりなっちまったのかは知らんが。


 まあ、東大陸との新しい航路が発見されて、アファル王国自体の経済が大きくなったのだ。

 商会の事業だってそれに合わせて大きくならなきゃ業界一位で居続けるのは無理だよな。


 それに思い至らなかった老舗のうっかりってところか。

 まあ、折角経済が拡大しているのに足を引っ張って自分より大きくなる商会を潰そうとするようなギルドのトップなんぞ要らん。

 ダルム商会が頑張ってくれるよう、期待しておこう。


 シェフィート商会だってそれなりに頑張って規模が大きくなってきているのだ。

 ある日突然そんな老舗に睨まれるようになったら色々と面倒だ。


 ……だから今回の消火の魔具に関してもダルム商会と協力することになったのかな?

 まあ、俺の知ったこっちゃないが。

最後は何事も、予算ですね!

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― 新着の感想 ―
これは世界線が違えば、ウィル君が火盗改の密偵ルートになってた未来もありますね。 一瞬「鬼平かな?」と思ったけど、どちらかと言うと破れ奉行?<いやいや まあ、ウォレン翁という軍への伝があるし、学院長も居…
盗賊ギルドに依頼すれば悪事の証拠を集めてくれるのでは? 凄く有能な盗賊が所属してるらしいですし
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