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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後8年目

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1417/1420

1417 星暦559年 赤の月 26日 消火用魔具(19)

 地面から0.5メタ(メートル)の高さで1メタ間隔に熱感知と冷却用の魔具を設置した小屋の周りに油を撒き、小屋の中にも同じく魔具を設置し終わった俺たちは油を浸した布を入れた小箱にも油を掛けて火をつけてみた。


「う~ん、流石に広がるのが早いな」

 箱の中身があっという間に大きく燃え上がり、小箱の中身だけでなく小屋全体を囲むように撒いた油も燃え始めた。


『錫合金テスト1、錫合金テスト1』

『錫合金テスト3、錫合金テスト3』

『錫合金テスト4、錫合金テスト4』

『錫合金テスト2、錫合金テスト2』

『錫合金テスト5、錫合金テスト5』


 最初に火をつけた場所の傍だった試作品1号の後はバラバラな順番で次々と熱感知の警報が鳴り始める。

 それと一緒に冷却用の魔具が起動し始めた為、魔具周辺では油から燃え上がる炎が少し弱くなっているのが見て取れる。

 とは言え、魔具から離れたところではまだ油からの炎が元気に燃え上がり、壁を焦がして着火し始めている。


「勢いよく燃えてるね〜。この調子だと、油が燃え尽きる前に壁に設置した冷却用の魔具の魔石が枯渇しちゃうんじゃない?」

 シャルロが小屋を取り巻く炎を見ながら言った。


「あ~。

 確かに。

 最初に起動し始めた1番の魔石がほぼ空になってきた」

 心眼サイトで各魔具の魔石の様子を確認したら、どれもかなりの勢いで魔力を使い果たしかけている。

 油を撒いていないと外壁の板が本格的に燃え始める前に冷却用魔具で冷やされて炎が下火になるせいで何とかなるようなのだが、油を撒いてあると小屋の周辺の板が満遍なく着火するせいで魔力消費量がずっと大きく、板の炎が下火になる前に冷却用の魔具の魔石が切れそうだ。


「あ。

 切れた」

 着火した角の傍の魔具の魔石が切れたせいで、最初に着火した部分で下火になりかけていた炎が再び元気よく燃え上がり始めた。

 見ている間に、他の魔具の魔石も次々と枯渇していき、外壁が勢いよく燃え始めた。


 見ている間に目の前の壁が内側に崩れ、小屋の中に落ちていく。

 床や棚の上に飛び散った破片から炎が燃え広がるのと同時に、小屋の中に設置した熱感知の魔具が起動し始めた。

『錫合金テスト8、錫合金テスト8』

 一緒に冷却用の魔具も起動したお陰で、その付近の炎が下火になる。


 が。

「外壁が崩れて中に飛び火する場合は必ずしも床の方から火が広まる訳じゃないんだな」

 小屋の中も中心部を通る梁に付けた試作品以外は全て床から0.5メタの場所に設置してあったので、それより上に飛び火して燃え始めた場合には、上手く消火機能が起動していない。


『煙探知テスト1、煙探知テスト1』

 梁に設置してあった煙探知の魔具も起動した。


「煙探知はあまり意味がないかな?

 熱探知の警報で周囲に人が居たら既に寄って来ていただろうし」

 アレクが指摘する。

 外壁の上の方に設置しておいたのは結局反応なしだったしなぁ。煙に反応する前に熱で壊れたのかな?


 小屋一つだとあまり煙探知の警報は役に立たないな。扉付近に一つ付けて置いたら中で放火された時に音が響いていいかもだが。

 棚に設置した熱感知の魔具に連動した警報を外で鳴らさせるのはちょっと面倒そうだからなぁ。


「そういえば、随分とダルム商会が熱心に協力してくれているが、どこかヤバいところに喧嘩でも売ったのか、あそこ?」

 取り敢えず今回は油を撒かれたら小屋の中までどんな感じに燃えるのか見てみたいと商会の副会長ダビタール・ダルムが言っていたので、燃え尽きるのを待っている間にそっと声を低めてアレクに尋ねる。


「アドリアーナ号を引き上げて、安定性を改善した後はガンガン交易に使う用になって、業界一位だった老舗を追い抜いて突き放しそうな勢いらしいんだ。

 どうもそこが自分のところで船に投資して争うよりも、ダルム商会の船や倉庫を燃やして損失を出させて業績を悪化させる方向で頑張っているらしいという噂だ」

 アレクがそっと教えてくれた。


 うぇぇ。

 交易で頑張って輸入品を安く大量にアファル王国に持ってきて俺たちの生活をより良くするのではなく、それをやろうとしている商会の足を引っ張って自分たちの業界一位の地位を守ろうとしているなんて、最低だな。


「そういうのって商業ギルドとか国が止めないのか?」

 火事で倉庫の中身を燃やされるよりも、ガンガン交易船で物を運び込んで売る方が国にとっても税収が増えて良いだろうに。ギルドだって会員が利益を出すとそれに比例した会費が入る筈だが。


「そうそう放火の証拠なんて出てこないからな。

 尻尾を捕まえようと頑張っているようだが、現存の倉庫や船を守るのにも人手が必要で、中々手が回っていないらしいな。

 下手に商業ギルドから人手を借りようとしても老舗の方に通じている人間も含まれかねないし」

 アレクが指摘する。


 シェフィート商会は助けないんかね?

 まあ、他の商会同士の戦いって言うのはあまり手を出さないものなのかな?


 ある意味、放火に対応する魔具を優先的に売りつけるのが『手助け』なのかも。


外からの敵にはギルドで一致して対処しますは、商業ギルド内での戦いの場合、他は見守るだけ

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― 新着の感想 ―
内部を守るだけなら、入らないことを前提に内部の酸素を二酸化炭素に変換したほうが早そう。 まあ、そんな事すると中毒症状が出るので起動後の換気が必須になるわけですが。 ……ある意味殺傷系防犯装置にもなるか…
放火対策は、悪意を持って近づいて来る人間を 捕縛もしくは気絶させる魔具の方が 向いているかも知れませんね
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