1415 星暦559年 赤の月 26日 消火用魔具(17)
小屋を使っての実験では、まずは時間節約及び放火犯の執念を考えて、小屋の周囲に何ヶ所か着火用の素材を入れた箱を置いて火をつけてみた。
その結果。
熱感知と冷却用魔具の真下に着火用の素材を置いた場合は小屋の壁に火が移る前に熱が感知されて、結局着火用の箱そのものの火が立ち消えた。
魔具と魔具の間に着火用の素材を置いた場合は壁にも火がついたのだが、高さ0.5メタぐらいまで壁板が焦げ始めたところで熱感知の魔具が反応して冷却用の魔具が起動することでそこから以上は火が燃え広がらず、最終的にはそのまま立ち消えた。
どうやら、1メタ間隔で魔具を設置したら外側からの放火は大分と難しくなるらしい。
とは言え。
「これって考えてみたら、防火結界を魔術師に掛けさせても効果はほぼ同じじゃないか?」
直接掛けた術だと2~3年で術を掛けなおさないと魔力が抜けて効果が落ちるが、代わりに魔具の様に盗まれる危険性は無い。
「まあ外側はそうかもですが、中に関しては物の入れ替えが多いと結界の劣化が早くなるんですよ。
しかも掛けられた術だとある時点でどの程度の効果が残っている状態かは魔術師にしか分かりませんが、魔具だったら魔石の残量を確認すればそれで大体済みますから。
そう考えると、魔具で全部出来るならその方が良いかもという考え方もありましてね」
ダビタール・ダルムが俺の言葉に答えた。
おっと。俺としてはシャルロとアレクに言った感想なんだが。
でも、そういう考え方もあるのか。
魔具だって誰かが壊そうとしたら壊せるんだけどな。
何といっても一度使ったら熱感知の方は再利用は錫合金の部分をつけなおさなきゃいけないから、製造時に不具合があっても確認のしようがないのだ。
煙探知の魔具ならば試運転して設置出来るのだが、鈴合金が熱で溶ける反応を使う熱感知の魔具は試運転が出来ないんだよなぁ。
まあ、それを言うなら防火結界だって張った魔術師が無能で条件付けに失敗していたとしても、実際に火をつけられなきゃ殆どの人間には結界の不備は分からないから、問題があった場合は倉庫が燃えて初めて分かるというのはどっちでも似たり寄ったりか。
「まあ、取り敢えず外側は大丈夫と分かったから、今度は内側の確認だ。
外側の試作品も取り換えなくちゃだな。
それとも防火結界で試してみたいですか?」
試作品を取り換えようとして、アレクがダビタールに尋ねた。
ある意味、全部の試作品を取り換えるよりも防火結界で小屋の外側を覆っちまう方が楽だが、実際にそういう使い方をするつもりがないんだったらちょっと結果が違ってしまってダメじゃないか?
「いや、外壁にある魔具が内部での発火にどのくらい効果があるかも見たいから、試作品を使って欲しい。
最終的には防火結界での実験もしてみたいが」
おっさんが答えた。
よく見たら、もう一つ小屋が運び込まれていた。他にも色々と試してみるつもりらしい。
ダルム商会のやる気が凄すぎる。
まあ、チェルナ子爵みたいに自分の美術品がある部屋だけ確実絶対に守られれば良いって言うのと違って、ダルム商会は国中どころか世界各国に(多分)無数にある倉庫を守る為に使うことを考えているのだ。色々なケースを試してどれが一番費用対効果が良いかを確認したいんだろうな。
という事で、もう一度試作品を外壁に付け直し、今度は小屋の中に入る。
「取り敢えず、何ヶ所か棚の柱に1メタの高さで設置して、後は柱からずれた場所の天井の梁にも一応設置しておくか」
縄で天井から吊るすんじゃあ縄が燃えたら落ちちまうからな。
そんでもって棚の上よりも柱の方が多分炎が伝わり上がる可能性が高いから、そっちの方がいいよな?
「そうだな。
棚を蹴り倒された場合にどうなるかも後で試した方が良いかも知れないが」
アレクが頷きながら言った。
う~ん。
と言うか、棚を蹴り倒されて入れてあった商品が床に落ちたんだったら、既に販売価値はがっつり下がっているんじゃないか?
しかももしも水を撒いて火を消した場合は更に劣化しているだろうし。
ああ、それを考えると冷却用の魔具で火が広まるのを止めて運が良ければ消火する魔具っていうのは美術品だけでなく消火の倉庫でも重要なのか。
取り敢えず、試して倉庫の内側の放火も対処できるか、実験だな。
さて。
火をつけるぞ!
焚き火みたいに物を燃やすにって楽しいですよね〜w




