1413 星暦559年 赤の月 24日 消火用魔具(15)
「どこかに燃やしてもいい、中身がそれなりに入った古い倉庫があったらいいんだけどなぁ」
底が抜けた木箱を探して、3つほど繋いでちょっとした部屋っぽい感じに作りながら思わず愚痴が口を出た。
「仕入れに失敗して破綻した商会の倉庫も探せばそれなりにあるだろうが、それを燃やしても良いと許可を得られるかはかなり怪しいな。
幾ら我々が完璧に火を管理できると言ったところで、倉庫街にあるとしたら周囲の警戒が大き過ぎて却下となりそうだ」
アレクが俺の願いの問題点を指摘した。
そうなんだよなぁ。
倉庫街の古い破綻したっぽい商会の持ち主ほぼ不明な倉庫って実は裏社会の人間が使っていることも多いし。
勝手に燃やしたら報復を受けかねない。そうじゃなくて正真正銘に誰も使っていない倉庫にしたって、倉庫街にあるのだったら周囲の倉庫の持ち主が飛び火を警戒して、燃え上がったら即座に消火に押しかけてくるだろう。
「それこそ土砂崩れとかで川の流れが変わって、生活できなくなって人が離散しちゃった廃村とかだったらそういう倉庫……じゃなくても家はあるだろうけど、どこにあるかなんてそう簡単には分からないからねぇ」
シャルロも溜息を吐きながら応じる。
「取り敢えずまあ、これで煙探知がどの程度の距離でも機能するかの確認だな」
箱を繋ぎ終えて、奥に着火用の小箱を置いてその箱から少し離れた場所から各木箱の端に煙探知の魔具と錫合金・冷却の魔具を設置してから小箱に着火し、木箱の『部屋』から出てくる。
俺が出た時点で防風結界をシャルロが張った。
今回は正面だけでなく、繋いだ木箱の『部屋』全体を換気用の穴を除いて全部覆い、建物の中の部屋の一部っぽい感じにしている。
昨日までの実験で、一応どのタイプの魔術回路が煙探知と熱探知、及び冷却で炎の燃え広がるのを止めるのにどう役に立つかの単純な確認は出来た。
今度は、どう設置したらいいかの実験だ。
俺が言ったように、実際に倉庫に火を点けて実験出来れば一番良いのだが。流石にそれは難しいので木箱を繋げて部屋っぽくしているのだ。
そして実際に炎がすぐそばに来なくても警報が鳴るように出来るのか、また火が広まるのを止めるのにどの程度の間隔で警報器と冷却用魔具を設置しなければならないのかの確認をしていく予定だ。
とは言え、『天井』の高さが1.5メタしかないので、これが2メタなり2.5メタなりあったらどうなるかは不明なんだよなぁ。
暫く待っていたら、最初の木箱の錫合金の警報器が鳴り始めた。
『錫合金テスト1、錫合金テスト1』
冷却用魔具も起動し始めたことで、天井まで燃え広がっていた炎が前進を止めて横と後ろに広がっていく。
「あ」
見ている間に、後ろ側の『壁』の一部が燃え尽きて崩れ始めた。
が、シャルロの防風結界で大体の空気の流れが止まっているので一気に燃え広がる訳ではなく、床部分に落ちた破片から別の部分の床も燃え始め、正面の冷却用魔具を避ける感じに横から隣の箱へ火が移っていった。
冷却用魔具の有効範囲を抜けたあたりでまた側面や天井部分が燃え始め、やがて2番目の箱に設置した錫合金の警報器が鳴り始める。
『錫合金テスト2、錫合金テスト2』
と思ったら、手前の3番目の箱と2番目の箱の上に設置した煙探知の魔具がほぼ同時に鳴り始めた。
『煙探知テスト2、煙探知テスト2』
『煙探知テスト3、煙探知テスト3』
「あれ?
最初の木箱の煙探知のが鳴らなかったね?
濃度がたまる前に天井に穴が開いて煙が逃げちゃったのかな?
それとも熱でこわれちゃった?」
シャルロが少し首を傾げながら言った。
そんなことを言いながら見ていたら、結局炎が3番目の箱まで広がる前に2番目の箱が崩壊して、床に落ちた冷却の魔具のお陰でそのまま3番目の箱まで炎が広がらずに1番目と2番目の箱だけ燃え、3番目は取り残される形になった。
「床に冷却用の魔具があると火事が燃え広がるのを止められる可能性もあるかもだが、あれは箱の側面が燃えて潰れたせいなのかも?」
アレクが微妙に首を傾げながら言った。
「次は3つ繋いだ木箱の側面沿いに錫合金の警報器と冷却用魔具を設置したら炎が広がらないか確認してみようぜ。
部屋のど真ん中に一定間隔で設置してもあまり効果が無いだろ、あれ」
壁沿いに炎が広がるので、天井の真ん中に設置してもあまり意味ないな。
まあ、最終的には天井も燃えるんだろうが。
これはフィクションです。
実際の炎の広がり方は不明なので想像で書いてますw




