1383 星暦559年 藤の月 26日 魔力認証結界(11)
一旦出てきたシャルロの後ろに張り付き、シャルロが再度探知結界のパネルに手を添えて中に入るのに合わせて今度は一緒に前へ進む。
小屋の扉を閉めた瞬間に警報が鳴り始めた。
シャルロが直ぐに物置側の扉を開けて中に入るのに俺も続くが、物置の扉を閉めても警報の音が止まらなかった。
「意外と長い感じがするねぇ」
「警報音じゃなくってベルの音にでもすればまだマシなんだろうが、ちょっと煩いな。
ついでだから、これで俺達が小屋から出たらどうなるかも確認しようぜ」
内側からは特に認証は必要ないのでそのまま物置と小屋の扉を開けて外に出る。
両方の扉を閉めて俺たちが庭に出ても、まだ警報は鳴り続けていた。
「……これ、ベルの音に変えたらこれだけ長い間なっていても気にならないか、確認しよう。
確かに気のせいかもって思わせないだけの長さが必要だけど、ちょっと煩すぎ~」
シャルロが顔をしかめながら言った。
「だなぁ。
これだったら面倒でも警備室に直接警報を鳴らす形にして、扉の所で鳴るベルの音はもっと短くした方が良いかもだね」
アレクが溜息を吐きながら頷いた。
「魔具にしなくても、紐を引いたら下の使用人部屋で鈴が鳴るような仕組みってあるんだろ?
それに割り込む感じで音が鳴る様に出来ないかね?」
通信機を付けるとなると高額になるし面倒だが、美術品を置いてある部屋だったらお茶を淹れさせるためにメイドを呼出鈴があるんじゃないか?
「確かにそうかも?
まあ、それは後で確認だね。
それよりも、さっさと壊せないかの確認を終わらせて工房に戻ろう」
ちょっと肌寒くなってきたのか、シャルロがパンと手を叩いて話を進めた。
そうだな。
という事で、ちょっと近所迷惑になるかもと心配になったので先に警報部分に消音の術を掛けてから、シャルロがもう一度小屋の前に立つ。
「考えてみたら、消音の術で警報を静かに出来ちゃうんじゃあ、あまり警報の意味がなくないか?」
下手をしたら煩いからってそれこそ当主が警報の傍に夜の間だけでもと消音の魔具を置いたりしたら、目も当てられない。
「そうだな。無難なベルっぽい音にしたうえで、呼出鈴に連動させる形にしよう」
溜め息を吐きながらアレクが同意した。
という事で、シャルロが小屋の探知結界に手を当てて、中に入る。
俺もその後に続いて入り、即座に物置側の壁に鎧通しもどきを叩きつけたが、防御結界に阻止されて今回は壁を貫けなかった。
うん、結界が凹む瞬間ならまだしも、凹んでから入ってその後に攻撃する程度なら、防御結界を貫けないな。
「次は魔力を流してみるな」
結界を一時的に飽和させて中の魔術回路を焼き切ろうと、魔力を練って結界の一点に流し込み、魔術回路に叩き込もうとした。
防御結界が明るく光ってきたが、直ぐには破れない。
ギリギリと結界に穴を開けるような感じにそのまま魔力を注ぎ込んでいたらやがて小さな穴が結界に空いたので、そこへ鎧通しもどきを叩きつけたら物置の壁に穴が開いて突然結界と警報が解除された。純粋に魔力で壊そうと思ったらもっと時間と魔力が掛かりそうだが、魔力と物理の合わせ技ならそこそこの時間で突破出来るな。
「ありゃりゃ、壊しちゃった」
シャルロがちょっとおどけた感じで言う。
「う~ん、2ミルぐらいかかったか?
警報が鳴り続けている中でやるにはちょっと長すぎる……かな?
警報を消音していて、警備室から誰かが駆けつけるのには足りない位かも知れないが」
夜中に最初から時間をかけるつもりで侵入した盗賊だったら粘る可能性はあるな。
魔力をしっかり練って結界を貫通できるだけの人間はそれ程いないだろうが。
「取り敢えず、壊した魔術回路を回収して工房に戻ろうか」
シャルロが物置の扉を開けて中に入りながら言った。
「だな」
俺は先に小屋から庭に出た。
別に魔術回路の回収に二人は必要ない。
「壊せたな」
アレクが渋い顔をしながら言った。
「だが、盗賊にとってはかなり長い時間が掛った。
しかも『ちょっと魔力を使える』程度じゃあ難しいと思うから、魔術師崩れじゃなきゃ無理だろう。
そう考えると、焦って諦める可能性が高いかも?」
魔術院に入る前でも、俺は多少ならば魔力に干渉して出来の悪い探知結界とかだったらすり抜けられた。
だけどあの頃の俺でもこの防御結界をぶち破るだけ魔力を練るのは無理だったと思う。
しっかりとした術して完成した防御結界を力技で破るだけの濃度で魔力を練るのは、流石にちゃんと専門の教育を受けてなきゃ無理だ。
「態々高額な魔具を買って部屋の改装までして防犯設備を拡充するような美術品だったら、魔術師崩れな裏社会の人間が来る可能性もあるんじゃないか?」
アレクが指摘する。
「……何かもう少し対抗策を考えておくか」
どこまで深掘りするか、悩ましいw




