1384 星暦559年 藤の月 26日 魔力認証結界(12)
「考えてみたらさ、壁の内側に防御結界と探知結界の魔具を設置する訳じゃない?
だったら壁との間に鋼の板を一枚入れてその上に魔術回路を設置すれば良くない?」
工房に戻って、穴が開いて壊れた魔術回路を見ながらシャルロが提案した。
「……だな?
と言うか、部屋の中に招かれた人間が勝手に魔力認証用に登録しちゃえないように、この魔具自体を鍵付きの鉄箱にでも入れて壁際に設置する形にすればいいかも?
目につく場所にあったらちょっと目立つかもだから、床付近に箱が置いてあるみたいな感じにすればいいよな」
鉄板をぶち抜くのはそう簡単には出来ない。
ちゃんと呼び鈴に連動させて使用人に警報が届くようにしておけば、鉄板をぶち抜ける前に誰かが確認に来るだろう。
「使用人が確認に来た際に外から扉を開けなくても中を確認できるように、廊下側の扉の一部はガラス張りにでもした方が良いかもだね~」
シャルロが付け足す。
「そうだな。
そう考えると、廊下側のドアを閉めたら防御結界が再展開されるんじゃなくて、防御結界が再展開されたら廊下側のドアが閉まる形にするか?
一々中に入った人間が廊下のドアを閉めるのも面倒だろうし」
外開きにしないと中に複数の人間が入る場合に扉を閉めにくい。
そうなるとうっかり外開きの廊下側のドアを閉めようと身を乗り出していた人間が防御結界の外に締め出される可能性がある。
「そういえば、防御結界って再展開するときにその境界線に人がいた場合ってはじき出しちゃうんだっけ?
ドアを閉めようと身を乗り出した人が締め出されちゃったらまた開けて入れる流れを繰り返さなきゃ出し、面倒だよね」
シャルロが頷く。
「取り敢えずじゃあ、廊下側の扉を開けて中に入った瞬間から探知結界が風除室もどきな空間で展開されて登録されていない人間がいたら呼び鈴の鈴を鳴らす紐を引っ張る形に動く形にして、それとは別に内側の扉を開いて防御結界が再展開する際に廊下側の扉が閉まるように蝶番が回転するように設定するか」
「だが。
考えてみたら、どうせ一旦認証して廊下側の扉を開けられたら、防御結界の再展開は実質自動だろう?
ナイフを突きつけて風除室の入ったら一瞬待てばメインの部屋にも入れるだから、魔具を壊す意味は無くないか?
警報を止める為っていうのは犯人側が期待しているにしても、音を小さくするなら消音の魔具で出来るんだし。たとえそれが無駄だとしても」
アレクが指摘した。
確かに?
「と言うか、防御結界のお陰で扉を壊しても部屋に入れないのは良い。
防御結界を探知結界と合わせて凹ませて認証出来た人が決まった場所に入り、そこに認証されていない人がいたら警報が鳴る仕組みも悪くない。
でもこのまま防御結界が再展開されて中に入れちまうのは問題だよな?
だけど、ここで再認証しなきゃ開かないようにしたって、ナイフを突き付けられてるなら認証しちまうだろうからなぁ」
絶対に認証されていない人を入れない仕組みにするって言うならそれはそれで良いんだが、良い美術品を手に入れた人間ってそれを自慢したがる奴も多い。
だから絶対に、高級な美術品であればあるほど、登録がない人間も入れるようにする必要が出てくるだろう。
「そう考えると、風除室ってあまり意味がない?」
シャルロがちょっと首を傾げた。
「ない、かも?
いや、風除室内にいる人数を確認して、事前に登録していた人数と一致していたら警備室の方から防御結界を再起動させる形にするか?
当主が『そっちに連絡し忘れたけど、通してくれ』って言おうが、絶対に毎回警備の人間が実際にナイフで脅されていないか目で見て確認するまで開けない様にしないと、意味がないが」
警備の人間だって当主に雇われているのだ。
当主に命じられたらその指示に従ってしまう可能性が高いだろうなぁ。
ガンとして規則通りにしか動かない人間ってそのうち面倒臭がりやな当主に疎まれてクビになるかどうでも良い部署へ移動させられるだろう。
で、いつの日か当主が口頭で出した指示に警備の人間が従うことで美術品が盗まれて、皆が後悔することになる。
今からそれが想像できる。
そんでもって、そんな弱みを残したままな防犯用魔具を売るなんて欠陥品だ!とこっちに苦情が来るのまで予想できちまうぜ。
「なんかこう、絶対に登録した人以外には見せないって言うなら大丈夫だけど、他人も見られる様にすると覿面に防犯の仕組みに穴ができてくるねぇ」
シャルロが溜め息を吐いた。
「考えてみたら、登録していない人間も中に入れる様にしなきゃ、新しい人間の登録も出来ないから難しいな」
アレクも溜め息を吐いた。
防犯用の仕組みを作るのって、色々と難しいなぁ。
なら。
「魔力認証で防御結界を凹ませる、風除室もどきに入る、そこで探知結界で誰か登録していない人がいたら警告を込めたベルを鳴らす。
で、内側の扉を開ける時に、例えば取っ手を上に回したら普通に防御結界が再展開して中に入れる、下に回したら捕縛結界が展開されて風除室にいる人間全員が動けなくなる上で警備の方への呼び鈴が鳴らされるってしたらどうだ?」
何度か自分で自分を捕縛したら、普段は間違えなくなるだろう。そしてナイフで脅されてたら捕縛結界の事を思い出すんじゃないか?
思い出さずにあっさり盗まれたらそれはもう、知らんな。
自分ごと捕まえる事になるけど、捕縛結界で動けなくなっていれば安全な筈。
多分w




