1382 星暦559年 藤の月 26日 魔力認証結界(10)
「警報が鳴る時間を延ばす修正が終わったら、それのテストの後に探知結界か防御結界の魔術回路を小屋の中から壊せるか、壊したら防御結界とか警報がどうなるか、確認してみようぜ」
部屋の中に入ってアレクが警報の鳴る部分を設定する部分の魔術回路を修正するのを見ながら提案した。
防御結界の内にあるから魔具を壊せないところが今回の新商品の売りなのだが、探知結界との連動性を持たせるために、小屋とつないで今回は工房の扉の横に設置してある。内側なので直接触ることは出来ないから普通の盗賊に弄って騙すことは難しいが、壁をぶち抜く形で物理的もしくは魔術で攻撃すると壊せるかもしれない。
「防御結界があるから、大丈夫だろう?」
アレクがちょっと驚いたように魔術回路から顔を上げて言った。
「長細い針みたいのを通せたりしないか確認してみた方が良いし、結界が凹む瞬間とか再展開する瞬間に壊せないことも確認しておく必要があると思う」
結界が変形する時にどの程度強度が下がるかなんて今まで確認したことがないから、下手をしたらその瞬間にだったら長細い針みたいのを刺せるかもしれないし、再起動の瞬間はもしかしたら一瞬結界が無くなっている可能性だってある。
タイミングを計ったら物理的に壊せるんだったら困るし、もしも凹ませたことで防御結界そのものに強度が低い場所が出来ていたりしたら、あっさり魔術攻撃を通されるなんてことだってあり得なくないかも知れない。
「確かに、結界を凹ませるなんてことをした瞬間に結界の強度が弱まっていたら困るね~。
心眼で視て、そんな兆候があるの?」
シャルロが聞いてきた。
「ちょっと結界が揺れる感じにはなるんだよなぁ。
それで結界自体が弱まるかどうかは不明だが、どういう効果があるか、確認した方がいいだろ」
普通の時に結界が揺れるのって、攻撃を喰らいすぎて結界が崩壊する兆候なのだ。
自発的にそんな揺るぎが出るような仕組みを魔術回路に組み込んだ場合、結界の強度がどうなっているのかは分からないから、確かめないとヤバいだろう。
「ふむ。
それは良いが……流石に工房の外壁を腕力で貫ける針はどんな素材で作ってもないだろう。
攻撃魔術で壊すならまだしも。
扉に穴を開けても困るし、魔力で吹き飛ばしても後が面倒だから、工房じゃなくてウィルの鍛冶小屋を使ってやろう」
アレクが提案してきた。
「いや、鍛冶小屋は防音対策で色々と強化しているから、物置でやろうぜ」
元々は外で使う道具とかは厩の隅に物を適当においていたのだが、奇麗好きなラフェーンが適当に物を転がしていると嫌がったので、ちゃんと毎回整理整頓するよりは物置小屋を作ろうという事で村の大工に頼んで作って貰ったんだよな。
どうせ敷地自体に防犯結界が展開されているので適当な作りで良いと言って作らせたので、強度はあまりない。
今回は貴族の館とは言え、室内の部屋に適当に付け足す風除室っぽいスペースの壁の話なので、強度的には多分ほぼ同程度になって丁度いいだろう。
という事で、工房の扉の横に設置してあった試作品を取り外し、試作用の小屋と一緒に物置の入り口の前へ持って行って設置しなおした。
先に物置小屋の扉の横の壁を俺が以前作ってみた鎧通しもどきでガンっと力を込めて刺してみたら、ちゃんと穴が開いた。
意外とこういう壁の板って弱いんだなぁ。
「後で雨水がしみ込まないように、その穴も塞いでおいてくれよ?」
アレクが後ろから声を掛けてきた。
確かにね。
適当に穴を塞いで、上から板を打ち付けて補強しておこう。
ちゃんと壊せることも確認できたので、実験用の小屋を物置の入り口の前に持ってきて、試作品を設置。
ちゃんと風除室モドキな小屋の中から物置の中にある魔具を叩けるように、少し小屋の位置をずらして設置した。
「じゃあ、取り敢えず中に入るのに問題がないのと、ウィルがいると警報が鳴るのを一回確認するね~」
シャルロが言いながら風除室モドキな小屋の外に立つ。
「ほいほ~い」
物置の中はちょっと狭いので、アレクもコートを着て庭に立って一緒に見ている。
シャルロが探知結界のパネルに手を当て、小屋の扉を開けて中に入る。
うん、今回もちゃんと防御結界が凹んだな。
結界のマーカーの位置の関係で、よく視ると防御結界が物置小屋の外の空間も一部カバーしているが、まあ特に問題はないだろう。
場合によっては掃除がしにくくなるかもだが……考えてみたら美術品があるような部屋って掃除のメイドなら自由に入れるようにするのかね?
埃だらけになったら困るだろうが、メイドなんぞに入れる魔力登録したら裏切られるか、脅迫されるかの可能性が高そうだ。
まあ、それはさておき。
シャルロが小屋の中に入って扉を閉め、物置の扉を開けたら防御結界が元の位置に再展開してシャルロが中に入っていった。
防御結界が再展開される際に一瞬結界が消えているなぁ。だが、本当に一呼吸も無いぐらいな短い瞬間だから、あれの隙をついて壁越しに魔具をぶち抜ける凄腕はそうそう居ないだろう。
それは良いとして。
次は俺が入る際の警報だな。
一瞬の隙を突くには繰り返し試行錯誤する必要がありそう。
益々内部犯罪しか不可能になりますね。




